デジタル人材の育成
夏野 剛(慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授)
チーフクリエータ
木ノ村 護(株式会社シミュレート 代表取締役)
コクリエータ
なし
モノをつくるときに形状をどのようにするかは、長い間、人のセンスや経験、そして工学的な視点にゆだねられてきた。しかし、これからの時代は、生物の成長や発生をヒントに生まれた新しい道具に任せてみてもよいのではないだろうか。本件で目指すソフトウェアはそのような道具のアイデアのひとつである。
もし、生物の発生過程をモノづくりに活かすことができれば、非常に合理的な形状の作成が行えるようになり、これまでとは異なった発想を開発設計者やデザイナーに提供できるようになるだろう。それとともに成果として生まれた製品は省エネや省資源化を推進するうえで一役買うことが期待できる。
本プロジェクトでは、形づくりにおける生物のつくってはこわし、こわしてはつくるという特徴に注目し、セル・オートマトンと有限要素法を組み合わせて上記の実現に向けて開発を行う。
システムは、セル(要素)の増減処理が行える機能を実装し、セル・オートマトンの処理と有限要素解析の間でフィードバックが継続して働くようにする。フィードバックによりセルが生存可能な状態量に落ち着くまで、セルが必要と判断されたところでは新しいセルが誕生し、不要と判断された場所では死滅する。解析が進行するにつれ形状が刻々と更新され、与えた環境に応じて形状が変化適応していく。これにより結果として全体的に無駄の少ない合理的な形状をつくることが可能となる。
複雑系的アプローチから構造物の設計をしようという新規性の高い提案で、かつ成果目標が具体的であり高く評価できる。構造計算の概念を転換させる可能性があり、社会的インパクトも高いと評価する。是非とも採択したいと考える。