デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(本体):2009年度下期採択プロジェクト概要(藤野PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

加藤 和彦(筑波大学 大学院システム情報工学研究科 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    藤野 真人(フェアリーデバイセズ株式会社 代表取締役)

  • コクリエータ
    古川 浩太郎(東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻博士課程)

  • コクリエータ
    吉澤 智也(東京大学大学院 情報理工学研究科 コンピュータ科学専攻修士課程)

3.未踏プロジェクト管理組織

  • 株式会社オープンテクノロジーズ

4.採択金額

  • 7,000,000円

5.テーマ名

  • センサーデバイスを活用した弦楽器の自動演奏の為の基盤ソフトの開発

6.関連Webサイト

  • http://d.hatena.ne.jp/nagisasaka/

7.申請テーマ概要

ロボットが、工業生産の現場で活躍する、製造機械としての役割だけでなく、人間とのコミュニケーションを指向して久しい。ロボットは、人間生活の場において、人間生活をより快適にする役割を持つようになってきた。これらは、当初は、単純なエンターテイメントロボットとして実用化され、続いて、介護ロボットや、家事ロボットなど、より複雑なタスクをこなす、人間の労働代替手段として顕現しつつある。

また、労働代替手段としてのみならず、近年、ロボットが、人間に似た動き、振る舞い、表情をすることで、人間と、より主体的かつ自然にコミュニケーションを取るという方向性が生まれ、活発に進展している。その一環として、人間の動きを模倣したり、人間の感情を擬似的に「理解」し、擬似的に「表現」するという方向性が指向されている。ロボットが人間社会により広範に進出するためには、少なくとも人間に不快感や不気味感を与えないことが前提であるが、近年の開発の方向性は、不快感を与えない、といった消極的な取り組み方を越えて、人間の感情に、ポジティブな影響を与えようとする積極的な取り組み方へとシフトしつつあると言える。

本提案では、人間の感情にポジティブな影響を与える積極的な取り組みの一環として、ロボットによる弦楽器の自律演奏の仕組みを提案する。本提案では、ロボットと人間は、音楽(もしくは音楽的感性)を媒介として、相互にコミュニケーションを図る。具体的には、ロボットは、演奏時の楽器各部の圧力・速度・出力波形などをモニタリングすることができ、人間は、楽器が出す旋律が、自分の感性にどのように響くのか、という心の動きを感じ取ることができる。これらを適切なコミュニケーション基盤上で統合することにより、ロボットが、人間にとって心地よい演奏を行うための基礎データを蓄積し、ロボットと人間が、より良い演奏を実現するための、良きパートナーとなれるような基盤を構築することをねらいとする。

8.採択理由

本提案は弦楽器、特にヴァイオリンの自動演奏を、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせてによって実現しようとするものである。既にヴァイオリンの鳴る仕組みについて詳細な調査を行い、それに基づきハードウェアとソフトウェアの基本設計を行っている。既にハードウェアは出来つつあり、現在はソフトウェアの詳細設計を進めている段階にある。弦楽器を自動演奏する試みは、キーボード楽器ほどではないにせよ、先行する研究・開発があるが、本開発は、楽譜・奏法・人間の感情表現と、楽器の物理・奏法上の特性を結びつけ、無機質的ではない、表情豊かな自動演奏を可能とすることを目指している点に特徴がある。これまでの実績として、非常に品質の高いソフトウェアを開発し、商品として発売している。提案書内容、および、ヒアリングで聴取した内容から、相当の確度で開発に成功することが期待でき、採択に値するものと判定した。