デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(ユース):2008年度上期採択プロジェクト概要(大谷PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

  • 筧 捷彦(早稲田大学 基幹理工学部 情報理工学科 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ:大谷 暢秀(筑波大学情報学群 情報メディア創成学類 1年生)
    コクリエータ:なし

3.未踏ユースプロジェクト管理組織

  • リトルスタジオインク株式会社

4.採択金額

  • 2,967,000円

5.テーマ名

  • 音楽的表現における技術的問題を解決するエキスパートシステムの開発

6.関連Webサイト

  • http://miskyworks.net/mequencer

7.申請テーマ概要

誰もが作曲、演奏に挑戦できる世界へ。
これはバークリー音楽大学で教えられている"バークリーメソッド"を応用したシーケンサ一体型のエキスパートシステムである。このソフトウェアは、作曲・演奏において音楽理論の知識が必要とされる部分をソフトウェアにアシストしてもらうことで、理論の知識が不要な、極めて直感的な音楽的表現が可能になる。
視覚的なコード進行の入力と、色の濃淡によって次に遷移すべきコードを表すコード進行アシスタントがセットになっている。様々な音楽様式に対応するため、楽曲のジャンルや曲調に応じた"スタイル"を読み込むことでコード進行のアシスト内容も変化する(Jazz スタイルを読み込めばジャジーなコード進行作りをアシスト、Classicスタイルでクラシカルに、それらを複合的に扱うことも可能)
コード進行の入力が完了したら、次はメロディーラインの打ち込みである。"バークリーメソッド"で定義された"アヴェイラブル・ノート・スケール"の概念では、メロディーを考えるにあたって必要となる音階とコードを対応させる。この特性を利用し、シーケンサは曲(コード)が進行するのとともにキーボードに割り当てる音階もマッチしたものに変化させてゆく。これにより、どのキーを叩いても不協和が生じない状態を作り出すことができる。これが"浮動音程キー配列MEQ"である。
音楽ゲームにヒントを得た"ヒューマンシーケンサ"システムによる演奏機能のアシストでは、ホームポジションを維持したまま演奏が可能。キーボードを本格的に楽器化することができる。複数人数で一つの楽曲を同時に演奏するセッションモードもサポート。
他社製のDAWとの連携にも対応。例えばリズムトラックを他のシーケンサで作り上げ、再生/一時停止/巻き戻しといった操作を含め完全に再生位置の同期を取ることもできる。
初心者にはもちろんのこと、コード進行を素早く作成できるこのシステムは、玄人にもコード進行のブレインストーミングツールとして有用である。
シーケンサ一体型のエキスパートシステムmequencerは、ニコニコ動画の登場により今再注目されているDTMをよりホットなものにする。

8.採択理由

Berklee Methodに基づいて、即興演奏を支援するシステムである。もちろん、即興演奏ができるということは、作曲ができるということでもある。典型的なコード進行の候補をシステムが示してくれる中で、適宜選択を行っていくことでコード進行をまず作る。そのコード進行に合わせて適宜メロディーラインを与えていくと、楽に即興演奏ができてしまう。これらのことがらがすべてPCだけで実行できるプロトタイプを持ち込んで、オーディションでプレゼンテーションを行った。もちろん、即興演奏した曲は、すべてPCに記録されているから、それを編集し直したり、再演奏しながら変更を加えていったりすることもできてしまう。
さて、その売りは、なんといっても、PCのキーボードを“新感覚”のシーケンサキーボードとして使うことにある。コード進行に合わせて、その音階に合わせてキーボードのキー配置になる。つまり、キーボードのキーは、いつでもその時点での音階のドレミファソラシに対応している。これが、「誰でも」即興演奏のできる環境を与える、というのである。
提案者は、まだ大学1年生である。諸般の事情から、プロジェクト開発期間中は、実家で過ごす予定であり、その間にピアノでいう、キータッチの違いを扱えるようにもし、多くの人に使ってもらえるよう、ムービーで使い方の解説までを作り上げようという計画である。どんな仕上がりになるか、今から楽しみなプロジェクトである。ついにピアノレッスンを受けることのなかったPMとしては、“私にも演奏ができる”ようになれるのでは、大いに期待している。