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2005年度下期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

 竹林 洋一 (静岡大学 情報学部 情報科学科 教授


2.採択者氏名

開発代表者

 稗方 和夫 ( 東京大学大学院 工学系研究科 環境海洋工学専攻 助手 )

共同開発者

 中澤 崇   (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 修士2年)

 湊谷 洋平 (東京大学 工学部 システム創成学科 4年)

 安藤 英幸 (株式会社MTI  技術戦略グループ)


3.プロジェクト管理組織


  ポトス株式会社


4.委託金支払額


  7,993,358


5.テーマ名


  業務プロセスに基づく文書管理システムShareFastの開発

 


6.関連Webサイト


  http://www.sharefast.org/


7.テーマ概要


 製造業における設計作業のような、業務プロセスの定型化が難しく、かつ多種のデータ・文書を大量に扱う業務を支援する文書管理システムShareFastを開発している。 ShareFastはクライアント・サーバ型の文書管理システムであり、クライアントは、UMLアクティビティダイアグラム的な業務プロセスの記述機能と、データ・文書の管理インターフェースを提供する。サーバは、RDF形式のメタデータを用いた業務プロセス、ファイルや電子データの管理機能(セマンティックウェブ技術によるデータ管理機能)、自然言語処理による自動メタデータ付加機能、全文検索機能を提供する。本プロジェクトではプロトタイプシステムの開発を進めており、サーバはすでにオープンソース化(http://sourceforge.net/projects/sharefast)され、着実に成果をあげている。クライアントはコードの品質の問題、使用している商用コンポーネントの問題などから未公開である。
 本提案は、サーバのさらなる品質向上・機能強化、クライアントの開発・拡張とオープンソース化、ShareFastの普及を促進するためのドキュメント整備(英語・日本語)を目的する。


8.採択理由


 本提案は,多種・大量のデータや文書を扱い、複雑な業務を柔軟に支援する文書管理システムの実用化を目指している。既にクライアント・サーバ型のシステムをオープンソース化しており、実世界での応用で評価改良を行うことにより、本格的システムが開発可能である。社会的に重要なテーマであり、提案者の意欲と資質という面でも未踏に相応しいので、採択と判定した。

 





9.開発目標

 ワークフローを切り口とした新しいタイプの文書管理システムを企業内での実用に耐えうるレベルまで開発し、オープンソース・ソフトウェアとして公開する。また、システムの実用性を検証するため製造業の設計部門の協力により実証実験を行う。実証実験を通じてシステム開発の技術的な困難性だけでなく、本システムを組織に導入し実用化する際の問題点を明確にすることを目的とする。また、ワークフローにもとづく文書管理のアプローチの有効性を製造業以外の業種において評価し、提案プロジェクトの社会的な意義重要性を検討する。


10.進捗概要

 未踏プロジェクトとして採択後、開発者とPMで協議し、実際の応用場面での有効性を重要視することで合意した。プロジェクト期間の前半には、(1)未踏プロジェクト以前のプロトタイプシステムによる製造業の現場でのワークフロー記述実験、未踏プロジェクトでの目的であるオープンソース版の要求定義・設計を行い、新システムの開発を開始した。次いでプロジェクトの中期には(2)オープンソース版の公開を行い、(3)CAD演習ナビゲータを実装し、大学内での実験を行った。後半は(4)システムの安定版をリリースし、(5)協力企業内でのサーバ構築、運用実験を行った。これらの実世界での実証評価実験を通じてシステムの問題点を明らかにした。また、(6)設計情報管理システムの検証を大学内で行った。

開発後半にリリースした安定版システムは堅牢なシステムに仕上がっており、協力企業である住友重機械マリンエンジニアリング内で試用されており、また、企業内での試用や実用化の引き合いが複数機関より来ている。(住友重機械マリンエンジニアリング、テクノソリューション、他大手造船会社:11月に社名公開可能)


11.成果


 ShareFastは知識共有や技術伝承を効率化するために開発したシステムであり、熟練エンジニアなどがユーザとなるため、使いやすくシンプルなインタフェースの設計を目指した。ワークフローと文書を組み合わせることで豊かな表現力を持つコンテンツを作成できることを実証した。図1〜図3に示すように、開発チームのメンバーは製造業の現場に入り込み、計算機に不慣れな高齢の熟練エンジニアでも操作可能かつ詳細な記述ができるシステムの開発を実現した。

 

図1 クライアントプログラム操作イメージ

図2 船舶設計ワークフローと作業マニュアル

 

  実際に熟練エンジニアの設計に関する知識をヒアリングにより約100ものワークフローを文書ファイルに記述し、本システムが製造業の知識記述に有効であることを示した。また、システムを実業務に耐えうるか実業務のコンテンツを作成することで検証した。

 

図3 船舶設計業務のワークフロー(一部)

 

  専用ソフトウェアで開発したコンテンツを手軽に閲覧するためのウェブ版のクライアント(図4) Flashで開発した。このクライアントにより企業内での運用やコンテンツの外部公開が容易となる。

 

図4 ウェブ版クライアント

 

 

 

  広範なユーザを獲得するために、シンプルなユーザインタフェースを提供するとともに、マニュアルを整備し、きめ細かい機能を提供しシステムの評価改良を繰り返した。クライアントの自動アップデート、障害情報のログ機能など、細かな機能も実装し、オープンソース・ソフトウェアとして公開した。

  本システムによるワークフローの客観化・標準化の有効性を示すため、他業種でのサンプルワークフロー(法律事務所でのパラリーガル業務フロー)の記述を試み、その有効性を確認した(図5)

 

図5 パラリーガル業務支援フロー

 

  本プロジェクトの最大の成果は、ワークフローを切り口とした新しい文書管理システムを開発するとともに、製造業の設計現場の業務で実用に耐えうることを実証したことである。開発チームとしてオープンソース・ソフトウェアとして公開も行い、広範なユーザがシステムを利用して知識をワークフローや文書の形で設計知識コンテンツが記述できるようなユーザインタフェースを設計するなど、柔軟で実用性が高いシステムを総合的に実現した。

 


12.プロジェクト評価


 今回のプロジェクトでは、現場の業務プロセスという切り口で、実用レベルの斬新なシステムを実現した成果は優れている。特にプロジェク期間中に開発チームのメンバーがメーカーの設計部門に駐在して、実証実験とフィードバックにより実用的なソフトウェアの機能追加と評価改良を粘り強く実施した。住友重機械マリンエンジニアリングや東京大学での学生演習での実績は目をみはるものがある。

  オープンソースの開発プロセスを導入することで、製造業以外の分野への展開を促進し、様々な応用分野でも有効との見通しを得た。業務プロセスや文書データの管理にセマンティックウェブ技術を導入することで、カスタマイズが容易であることも確認した。また、当初はチーム内の閉じた環境でのシステムの利用を前提としていたが、Flashのクライアントを開発し、一般ユーザも利用可能なオープンなシステムへと拡張させることができた。

   開発チームは、システム開発とコンテンツ開発チームから構成した。それらが両輪となって、現場でのコンテンツ開発と実証実験を並行して総合的に走らせることに成功したことの意義重要性か高い。

 


13.今後の課題


 稗方氏を中心とする開発チームは有機的に連携し、システムのメンテナンス、機能拡張、普及活動などを精力的に進めてきたが、システムの普及につれて、バグ対応や品質向上を継続的に進めることが必須になってきた。

  製造業の設計部門での本格実用化に向けて、コンテンツを充実させながら、ShareFastをきめ細かく改良することが望まれている。今後は非製造業への応用の拡大も見込まれている。パッケージソフトウェアとしての本格事業化など、今後の多面的な発展に期待したい。

 




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