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2005年度下期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   長尾 確 (名古屋大学 情報メディア教育センター 教授)


2.採択者氏名

開発代表者

 後藤 孝行 (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程1年)

共同開発者

 なし


3.プロジェクト管理組織


  株式会社 リオ


4.委託金支払額


 4,431 ,877


5.テーマ名


  環境情報を記録し、多面的にメタデータを利用するデスクトップ

 


6.関連Webサイト


  なし


7.テーマ概要


 ファイルの内容だけでなく、情報の周辺に存在する環境スキーム(PCの内部環境と実世界の外部環境のさまざまなメタデータを組織化したもの)を利用することで、記憶を連想的にたどることができるシステムを提案する。
本システムを利用することで、ユーザは既存のキーワード検索や階層管理から開放され、もっと環境に応じて関連付けられた情報を自由に選択して、より柔軟なファイル管理を行うことができるようになる。これを以下の機能により実現する。

@ 記録:環境メタデータの記録
 本システムは環境スキームとして、ファイルに関係する人、操作していた時間、場所、デスクトップ、同時に利用していたプロセスのメタデータを組織化して記録し、ファイル間の関係性や類似性を算出することができるデータベースシステムを構築する。
A 検索:ビジュアル検索
 記録した環境メタデータを用いて、新たな視覚検索インタフェースを実装する。検索結果として属性を視覚的に表示する。検索条件を設定し、情報の多面的な検索が動的かつ視覚的に行える。
B 活用:タブ型デスクトップ
 環境情報をひとまとめでメタデータとして管理し、タブによる簡単な切り替え操作で、デスクトップに表示されるデータやアプリケーションをまるごときり変えるタスク管理を開発する。また、デスクトップを簡単に切り替える専用デバイスも開発する。

 本プロジェクトは、多面的な情報管理システムにより、既存のPCのデスクトップ環境に代わる次世代のファイル管理、タスク管理の標準インタフェースとして普及させることを目指す。


8.採択理由


 ウィジェットのようなアクセサリソフトの利用が、人間の作業内容と強く関連しており、アクセサリの状態の組み合わせがトリガーとなって、そのときの作業内容を想起する助けとなる、という発想は面白い。これによって、デスクトップの状態を丸ごと保存して、日付と時間をキーとしてそのときの状態を再現する、という従来の単純な手法を越えた、新しい記憶支援システムが構築できると思われる。ただし、これを新規に一から開発するのは得策ではなく、すでに普及しているDashboardと呼ばれるアクセサリアプリの開発利用環境を用いるのがよいであろう。そのため、計画を縮小し、Dashborad上でウィジェットの状態と依存関係、さらにメインタスクとの関連性を保存し、検索可能とする仕組みを開発することに限定することを条件に採択とする。

 




9.開発目標


ファイルに関する様々なメタデータ利用することで、膨大なファイルから、より検索結果を絞り込むことができたり、文字列だけではなく、様々な視点からそのファイルを探し当てることができる。そのような、検索システムの一つに Apple Computer, Inc. Spotlightがある。Spotlight では100以上のメタデータ属性が定義されており、また自分でも追加可能である。しかし、様々なメタデータを利用するには、リストから選択し、条件を入力する必要がある。このようなインタフェースでは、利用するのに手間がかかり、直感的に利用できるものではないと考える。実際、このインタフェースは、検索したいときに条件を指定するためのものでなく、事前に検索条件し、該当ファイルをフォルダにあつめるという使い方を前提にしている。また、クエリに

よって検索もできるが、簡単にメタデータを利用できる仕組みとは言い難い。

以上のような問題は、スポットライトだけではなく、他の検索システムにも当てはまる問題である。

このように、ユーザーが検索を行いたいと思ったときに、すぐに、そして簡単に利用できる様々なメタデータを駆使した検索方法はあまり存在しない。しかし、それができれば、より情報を簡単に絞り込むことができ、今まで以上に有効に情報を活用できることができると考えられる。

そこで、本プロジェクトでは、ユーザーがすぐに複数のメタデータを駆使して簡単に情報を絞り込めるシステムを構築することを目指す。


10.進捗概要


ファイルに関する様々なメタデータを記録し、これを利用すると、検索結果をより絞り込むことができたり、様々な視点からファイルを検索することができたりする。しかし、検索したいときに、すぐに、そして簡単に様々なメタデータを駆使してファイルを検索する方法はあまり存在しない。そこで、本プロジェクトは、簡単に、そして直感的にメタデータを利用することができるDashSearchを開発した。これは、簡易アプリケーションであるウィジェット(Widget)に着目し、これを視覚化されたメタデータと考え、Widget同士を連携させることにより、クエリを生成する。また、Widgetを離すことで、クエリからメタデータを取り除くこともできる。これにより、複数のメタデータを駆使した検索において、試行錯誤的な利用方法が可能になった。


11.成果


1 システム構成

 

図2−1:システム構成図

 

 

2 Widget Sever

 Widget Severでは、起動しているWidgetを管理しており、Widget同士の接触判定や、Widget間のデータの中継を行っている。また、検索Widgetから送られてくるクエリをもとに、Spotlight用のクエリを生成し、検索を行う。またその検索結果をWidgetで利用できる形に変換し、それを検索Widgetに送る。

Clientとのやりとりは、プロセス間通信を用いて行っている。

開発には、Objective-Cを利用している。

 

3 Client

 ClientWidgetのプラグインとして利用する。Clientは、Widget本体と、Widget Severとのデータのやりとりを中継する。そのために、Widgetから送られてくるデータをServerで利用しやすい形に変換している。また、Widgetの座標や、大きさなどの状態を保持している。

開発には、Objective-Cを利用。

 

4 Widget

4.1 検索Widget

 SpotlightDashboard上から利用するWidget。このWidgetにメタデータを表すWidgetを重ねると、重ねたWidgetのメタデータ属性をクエリに追加する。検索結果は、Dashboard上に、リスト表示で出現する。結果をマウスでドラッグするとアイコンが拡大表示され、Dashboard上に自由に配置することができる(図2−2参照)。アイコンをダブルクリックすると、Dashboardの背後で、ファイルが開かれる。

開発言語にJavaScriptと、Objective-Cを利用した。

図2−2:検索Widget

 

4.2 カレンダーWidget

 検索によく利用するメタデータの一つとして、日付がある。カレンダーWidgetは通常、現在の日付を表示する。過去の日付を指定して検索に利用する場合、パネルを開いて日付を選択し、検索Widgetに重ねる(図4.2参照)。月をまたがった日付選択ができるように、カレンダーを月ごとに表示するのではなく、月の表示が連なっているロール式カレンダーになっている。

 また、検索Widgetの検索結果のアイコンを接触させると、そのファイルが作成された日付が表示される。

開発には、JavaScriptを用いて開発した。

図2−3:カレンダーWidget

 

4.3 Widget の連携

 既存のWidgetを連携できるように拡張した。これにより、Widgetにおいて選択された文字列を、他のWidgetへコピーすることができる。またWidgetの連携をより便利にするため、SafariCopyWidgetを作成した(図4.3参照)。このWidgetは、SafariWebブラウザ)で選択した、文字列を表示するWidgetで、これ単体では、あまり意味をなさない。しかし、このWidgetと、辞書Widget(英辞郎、Wikipedia Widgetなど)を接触させたままにしておくと、ブラウザ上の文字列を選択し、Dashboardを利用すると同時に、その意味を表示する。つまり、知りたい単語、言葉を選択するだけで、すぐに意味を知ることができる。

開発には、JavaScriptObjective-CAppleScriptを用いている。

図2−4:SafariCopyWidget

 


12.プロジェクト評価


本プロジェクトでは、ウィジェットと呼ばれるカレンダーや辞書などのアクセサリソフトの利用が、PC上の人間の作業内容と強く関連しており、ウィジェットの状態の組み合わせによって、過去の作業内容の想起を支援する仕組みが構築できる、という発想に基づいて、ウィジェットとメタデータを組み合わせて、単純で直感的な操作で作業内容(どのデータに関してどのような作業をしていたか)を想起するシステムを開発した。また、このシステムでは、ウィジェットはメインタスクの作業内容の一部を参照でき、任意のキーワードを選択すると、複数のウィジェットを連携させて複数の辞書を同時に検索することもできる。このシステムは、デスクトップ検索において非常に有効で面白いアイディアを提示しており、今後の発展が大いに期待される。


13.今後の課題


 本システムが有効に活用されるには、さらにクエリとして利用できるウィジェットを増やす必要がある。まずは、時計、天気、起動アプリケーションの表示ウィジェットを開発する必要がある。そして、検索結果のグループ化など、結果の表示をさらに工夫する必要がある。

 また、ウィジェットの連携においても、連携を事前に考慮した、新しいウィジェットを多く作成する必要がある。

 以上のようなウィジェットを多く開発することで、ウィジェットによる検索の有効性と、ウィジェットの連携による新しい可能性をより示すことができ、これからの検索のあり方、またウィジェットというアプリケーションのあり方を大きく変えることになると考えられる。



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