IPA


開発成果一覧へ





2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 坂村 健 (東京大学大学院 情報学環 教授)



1.プロジェクト全体の概要


 組み込み分野におけるソフトウェア開発において,異なるプラットフォーム間で開発資産を流用することは,今日切望されている課題の一つである。本プロジェクトでは,そのような組み込みシステムに対するミドルウェアを創作し,それを流通・普及・実用化させることを目的とする。これを実現するため,我々は本プロジェクトを,応募者は最高のプログラミングスキルを持ち,それによって最高品質のソフトウェアを創作する責務を担い,プロジェクトマネージャ(PM)は応募者が創作したソフトウェアに対する普及・実用化に対する責務を担うという,PMと応募者との間の共同プロジェクトと考えている。
 我々は,本プロジェクトで発掘・支援するスーパークリエータ・天才プログラマを次のように定義してプロジェクトの運営を行った。まず,優れた発想をする人と,優れたコードを書き実益のあるソフトウェアを作る人が一致していればよいが,実際にはそのような例は希である。次に,優れた発想をする人を支援する機会は多いが実益のあるソフトウェアを作りあげる人を支援する機会は少ない。さらに,組み込みコミュニティを支えているのは実益のあるソフトウェアを作りあげている人である。これらのことから,我々はスーパークリエータ・天才プログラマを着実で実益のあるソフトウェアを作成できる人と定義し,本プロジェクトではこのような人を発掘し支援することを目的とした。
 このため,本プロジェクトで応募対象としたソフトウェアはアイデアの新規性や創造性を求めたものでなく,むしろ地道で有用性の高い機能を扱うもの,できるだけ多くのユーザが予想される一般的かつ基礎的なものとした。また,組み込みシステムでの利用を目的とし,様々な組み込み用ハードウェア上で動作する高い移植性を有することを求めている。さらに,本プロジェクトは組み込みシステムに対するミドルウェアを創作・流通・普及・実用化を目的としているため,成果物はオープンソース化し無償で提供することを求めている。
 本プロジェクトには12件の応募があった。これらの応募者に対し書類審査と面接を行い,本プロジェクトではそのうちの4件を採用した。採用に関して,組み込みソフトウェアとしてのテーマとの適合性と実施計画の妥当性を基準とした。
 本プロジェクトで採択したプロジェクトのすべてが,実働を伴う成果を出した。8月24日に開催された最終報告会には全プロジェクトが参加し,プロジェクトマネージャの前でプレゼンテーションと実機上でのデモンストレーションを行った。何件かのプロジェクトでは,現在成果をwebに公開している。また利用者からのフィードバックを得ているものもあり,いくつかの実用的なソフトウェアが開発され,全体として満足の行くものであったといえる。10月にはYRPユビキタス・ネットワーキング研究所にて成果発表会を開催する予定である。



2.プロジェクト採択時の評価(全体)


 本プロジェクトには,12件の応募があった。その内訳は,開発支援関連が3件,ミドルウェア関連が4件,またネットワーク関連やセキュリティ関連など,多岐にわたっていた。本プロジェクトでは,応募者に対し書類審査および面接を行った。採用に際して,まず組み込みソフトウェアとしてのテーマとの適合性・一般性,および実施計画の妥当性を基準として提案されたテーマを書類審査し「情報家電プロトコルスタックの開発」「物理環境のシングル・サインオン用ミドルウェアの開発」「高い汎用性・移植性を有した分散コンポーネントシステムの開発」「組み込みシステム向けフレームワークによる列車案内システムの開発」「組み込みソフトウェアのためのテスティングツールの開発」の5件を選択した。これら5件の応募者に対して面接を行い,最終的に以下の4件を採用した。
 ・今野 賢:情報家電プロトコルスタックの開発
 ・上野 真路:高い汎用性・移植性を有した分散コンポーネントシステムの開発
 ・河之邊 浩: 組み込みシステム向けフレームワークによる列車案内システムの開発
 ・永藤 直行: 組み込みソフトウェアのためのテスティングツールの開発



3.プロジェクト終了時の評価


 本プロジェクトでは,誰もが使いうる最高品質のソフトウェアが創出されることを期待している。このため,本プロジェクトでは,創作されたソフトウェアの実用性・完成度・波及効果などを評価項目とした。
 本プロジェクトでは,実際の開発に着手する前に設計仕様書を提出させ,プロジェクトマネージャとともにその仕様書を検討する過程を設けた。これは,開発対象およびその範囲を明確化させることを目的としていた。5月までに全プロジェクトがこの仕様書をプロジェクトマネージャに提出し,検討を行った。その後,各プロジェクトは実装作業に入った。
 また本プロジェクトでは,全プロジェクトが実動を伴う最終成果物を提出できた。8月24日に開催した最終報告会には全プロジェクトが参加し,プレゼンテーションと実機上でのデモンストレーションを行った。10月には公開発表会を開催する予定である。
 採択したプロジェクトのうち「情報家電プロトコルスタックの開発」では,webに公開した後利用したユーザからのフィードバックがあり,そのフィードバックによって対応するOSが1つ増えたという動きが現れた。このように,本プロジェクトでは実用性をもついくつかの実用的なソフトウェアが開発され,全体として満足の行くものであったといえる。


ページトップへ






Copyright(c) Information-technology Promotion Agency, Japan. All rights reserved 2004 <