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2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 

 坂村 健  (東京大学大学院 情報学環 教授)



2.採択者氏名


 代表者

 河之邊 浩 (SETソフトウェア株式会社)

共同開発者

 なし



3.プロジェクト管理組織


 SETソフトウェア株式会社



4.委託金支払額


 9,219,915円



5.テーマ名

 

 組込みシステム向けフレームワークによる列車案内システムの開発



6.関連Webサイト


 http://www.st.rim.or.jp/~kawanobe/esp/



7.テーマ概要


 CPU性能の大幅な向上や大容量メモリの低廉化及び集積化など,ハードウェア技術の進展の恩恵を受け,組込みシステムであっても汎用的なOSやソフトウェアプラットフォームを備えアプリケーション開発を効率良く行うことができるようになってきた。しかしながら,組込みシステム向けのプラットフォームでは,リアルタイム性能の追求,ハードウェアコスト低減化のためのメモリ容量制限、ROMの使用やバイナリ実行時のメモリ初期化に関する制限、まちまちなアーキテクチャなどが原因となり,異なるプラットフォーム間で完全な移植性を持たせるためのアプリケーションソフトウェア開発には相当の努力が必要とされていた。
 このような背景の下,2001年には携帯電話に搭載することを前提としたBREW (Binary Runtime Environment for Wireless) が,2002年には次世代リアルタイムシステムを構成するT-Engineがそれぞれ発表され,組込み分野におけるプラットフォームの標準化への貢献やより一層の普及が見込まれている。
 本プロジェクトはこのような状況の下で,これらの異なるプラットフォームを有効に利用できるアプリケーションソフトウェアを構築するためのグラフィカルユーザインタフェースを備えたフレームワーク (以下,「本フレームワーク」という) を開発することを目的とする。本フレームワークは画面のpush/popを基本とした軽量なフレームワークであり,本フレームワーク上で開発されたアプリケーションプログラムは,ソースコードを修正することなく再コンパイルするだけで動作させることを目標とする。また,そのフレームワークの利用例として,GPSから取得した現在時刻や位置から,駅のホームに備え付けてある列車発車案内LED表示とほぼ同じ情報を提供する,列車案内システムを開発する。
 組み込みシステムは,サーバシステムやパーソナルコンピュータシステムに比べ,計算機資源の量やCPU性能において劣るものである。また,省電力の観点やコストの観点から,できるだけ実行負荷や利用資源が小さいことが強く要求されている。一方で開発期間の制限から,既存の開発資産を共有することもまた要求されている。軽量なグラフィカルユーザインタフェースのフレームワークが組み込みシステム環境下で提供されることは,組み込みシステム開発におけるニーズと一致するものである。従って,このプロジェクトで狙っているシステムへの要望は高いといえる。



8.採択理由

 

 最終成果物の到達目標が明確であったため。GUI部分の単純化・抽象化の実現により,組み込みソフトウェアの開発支援ツールとして組み込みコミュニティに寄与することが見込まれ,また想定するアプリケーションも明確であり,手堅く感じられたため。




9.開発目標


 本プロジェクトの開発目標は,以下の機能を有するグラフィカルユーザインタフェースのフレームワークを開発することにある。
 ・基本機能
  イベント管理機能,リソース管理機能,文字列操作機能,メモリ管理機能,データ管理機能からなる,基本的な機能である。
 ・表示機能
  画面管理機能,画面部品,画面描画機能からなる,画面描画の基本的な機能である。

 本プロジェクトで開発するフレームワークは,その上で開発されたアプリケーションプログラムがソースコードを修正することなく再コンパイルするだけで動作できることを目標とする。
 本プロジェクトの開発ターゲットとして,BREWとT-Engine,およびLinux,FreeBSDなどのホスト環境上での X Window System を対象とする。ただし,BREWを搭載した実機で動作させるにはコンテンツプロバイダとしての有料での登録ならびに審査が必要であるため,ホスト環境で提供されるエミュレータでの動作確認までを開発対象とする。



10.進捗概要


 プロジェクトの開始に当たり,プロジェクトマネージャと協議し,オブジェクトサイズの目標値を100KBくらいと定め,開発を開始した。
 また計画時点では予定していなかったが,プロジェクトマネージャとの議論の結果,当初実施計画になかったXMLパーサ機能の開発も行うこととした。列車案内システムに表示する地図データがXMLで表記されている場合が多いことと,XMLの軽量パーサも組み込みシステムのミドルウェアとして要望の強いものであったからである。  また,列車案内システムに搭載する路線情報についても,デモ効果についてプロジェクトマネージャと議論した結果,路線を3路線から8路線に増加させることにした。
 全体として,9.に記した目標機能はほぼ達成し,T-Engine/SH7760上ならびにホスト環境であるFreeBSD上のX Window System上でフレームワークとその上に構築したサンプルアプリケーションである列車案内システムを完動させた。フレームワーク上でのプログラムは,T-Engine/SH7760上のものとFreeBSD上のX Window System 上のもので,全く同一であった。



11.成果


 上記の10.進捗概要で述べた開発成果は,開発者のサイトhttp://www.st.rim.or.jp/~kawanobe/esp/ で公開されている。
 フレームワーク部分のオブジェクトサイズはT-Engine/SH7760上で約67KB,XMLパーサ部分は同環境上で約43KBである。当初,オブジェクトサイズ100KB以内を目標としていた。従って,フレームワーク部分だけなら目標を達成しており,XMLパーサ部分を含めてもほぼ目標値程度であった。
 9.に記した開発目標に掲げた機能はほぼ達成できた。ただし,フレームワークの画面描画部分やイベント,アクション関連の性能が充分でない。また,追加開発したXMLパーサ部分は今回の列車案内システムでは使用していないDTD関連定義部分が未実装となっている。



12.プロジェクト評価


 組み込みシステムは,サーバシステムやパーソナルコンピュータシステムに比べ,計算機資源の量やCPU性能において劣るものである。また,省電力の観点やコストの観点から,できるだけ実行負荷や利用資源が小さいことが強く要求されている。一方で開発期間の制限から,既存の開発資産を共有することもまた要求されている。軽量なグラフィカルユーザインタフェースのフレームワークが組み込みシステム環境下で提供されることは,組み込みシステム開発におけるニーズと一致するものである。従って,このプロジェクトで狙っているシステムへの要望は高いといえる。
 今後は画面描画部分やイベント,アクション関連の性能改善,XMLパーサのDTD関連定義部分の整備が必要である。また,普及させていくためにはマニュアルやサンプルの提供が不可欠である。今回実装した列車案内システムは,フレームワークの検証やデモとしてはよいがサンプルとしては大きすぎるため,簡単なサンプルを提供する必要がある。今後はこのようなドキュメントやサンプルの提供を進めてもらいたい。



13.今後の課題


 フレームワーク本体部分については,12.プロジェクト評価に述べたような性能改善を行うとともに,マニュアルやサンプルを整備して,本成果物の組み込みシステム開発者への浸透を目指したい。



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