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2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 鵜飼 文敏 (日本ヒューレット・パッカード株式会社 ヒューレットパッカード研究所 主幹研究員)



1.プロジェクト全体の概要


 オープンソースソフトウェアという言葉が広く使われるようになってもう7〜8年たつ。この間に多くの人・会社がオープンソースソフトウェアのコミュニティに参加してきて、オープンソースソフトウェアは全体として質・量ともに向上してきた。多くの開発者がオープンソースソフトウェアをリリースするようになり、プロジェクトに協力してソフトウェアは改良・改善が加えられており、利用者が増えることでオープンソースソフトウェアが実用に耐えうるという実績を重ねている。もちろんこの間にも個々のソフトウェアではいろいろな問題があらわれているが、開発者がちゃんとメンテナンスし続けていて必要性が高いソフトウェアはそのような問題は修正されていく。そうでないあまり重要ではないソフトウェアは問題が直されないがそのような場合は利用する人はいなくなっていく。このようなソフトウェアの淘汰により、オープンソースソフトウェア全体としては実用に使えるものが生き残ってきていると言えるだろう。
 未踏ソフトウェア創造事業においてこれまでに2回ともオープンソースソフトウェアを開発するプロジェクトを実施してきた。1回目は開発・導入・運用・管理をサポートするシステムを中心に、2回目はデスクトップを中心に募集した。昨年度から年2回の公募になりさらにもう一度機会を与えてもらうことができたので、今回は最期のプロジェクトということで、オープンソースソフトウェアをより広めていくことになるようなソフトウェアを開発することを目的とした。本プロジェクトの成果はオープンソースソフトウェアとしてリリースされており、自由に利用することができる。これが刺激になってオープンソースソフトウェアの開発にもっと活力がみちてくれることを期待している。
 ソフトウェアは、特にオープンソースソフトウェアは作れば終わりというものはほとんどない。生きもののようなものであって、地道に継続して開発をすすめて改良・改善をくわえていく必要がある。ソフトウェアの動く環境は変化しつづけるものであり、開発者がメンテナンスできないようなソフトウェアは問題が修正されることはなく、利用者も減っていき、そのうち供養するということになってしまう。本事業で採択したプロジェクトも未踏の期間だけにとどまらずこれからも開発を継続していって多くの人に長く使われるようなソフトウェアとして育てていって欲しい。
 私の未踏でのプロジェクトはこれが最期になるが、このような事業はオープンソースソフトウェアの開発者を支援する方法としては、ある程度有効な方法だと思う。これ以外にもいろいろな支援というのがあってもいいと思うが、このように個人を対象にして開発を支援する事業は続けていってもらいたい。



2.プロジェクト採択時の評価(全体)


 これまでオープンソースソフトウェアを対象に2回プロジェクトを実施してきたが、今回も同じくオープンソースソフトウェアを対象にして募集した。今回は始めての年2回公募であり、これが最期ということもあって、今までほどに対象分野を狭めないで、オープンソースソフトウェアを広めていくことになるようなソフトウェアということで幅広く募集してみることにした。このようにあまり分野を狭くしないことで、これまでとは違うおもしろい応募があることを期待していた。
 このような公募に対し全部で13件の応募があった。審査の対象として多くはなかったので基本的にプロジェクトマネジャー一人で、応募書類やメール等で採否を判断した。ただ、あまり時間がとれなかったために直接面接するというのはおこなわず、メールやIRC等でインタビューをおこなうことにした。応募は前回よりも多く、内容的にもおもしろいものはいくつかあったが、予算の都合上あきらめてしまったものもある。年2回というのは、はじめての試みで予算配分をどれくらいにするのかがよくわからなかったが、後から考えてみると、後半にもう少し予算を残しておけばよかったのかもしれない。
 3回通しての感想だが、オープンソースソフトウェアの開発の場合、支援がなくても熱意さえあればある程度はじめることは可能なのだから、ある程度の開発・リリースをしてから応募してくれたほうがいいように思う。そして未踏の支援をうけることで得られるリソースとまとまった時間を有効に使って困難な部分の開発等に集中して、支援なしではなかなか突破できないようなことをやるようにしたほうがいいのではないだろうか。オープンソースソフトウェアを開発してリリースすることは、この事業のような支援はなくてもできないことはないのだから、まず自分だけでやってみてほしい。そのようなことをしている人のほうが、採択する側としても応募書類以上のことが理解できるし判断のたすけになる。その上で困難なところを解決するための支援が必要だということを主張したほうがいいと思う。また支援を得らなかったからといってあきらめずに続けていって欲しい。
 今回は分野を特にしぼらなかったのでいろいろなプロポーザルがあったが、結局残ったのはWeb系のものになってしまった。結果として採択したのは以下の3件のプロジェクトである。
 ・共同体的P2P全文検索システムの開発
 ・分散型コンテンツマネージメントシステムの開発
 ・メール・Web・会議を垂直統合するグループウェア



3.プロジェクト終了時の評価


 3つともある程度近いアプリケーション分野であり、それぞれ他のプロジェクトを利用するようにできないかと思ったが、時間の都合上そこまで一体となったものにすることはできなかった。しかし、個々のプロジェクトは想定外の事情にみまわれた1件をのぞき成功したといえるだろう。
 共同体的P2P全文検索システムに関しては、高性能・高機能な検索エンジンが開発、リリースできた。共同体的P2Pという点については、有効な運用方法についてはまだ不明だが、これから実際に広く使われるようになっていくことで有効性がわかってくるだろう。アプリケーションだけでなくライブラリとしてもリリースしていることで、既にこのライブラリを利用した他のソフトウェアも開発されるようになってきている。
 分散型コンテンツマネージメントシステムについては、ある程度設計をすませ、これから開発に集中しようという時になって家庭事情により後半あまり開発に専念できなかったために、当初の目的を達成することはできなかった。
 メール・Web・会議を垂直統合するグループウェアについては、既に開発しリリース・運用されているqwik.jpへの新たな機能を追加するということで、おもしろいプラグインがいくつか開発できた。
 未踏事業の期間は実質半年という短い期間ではあったが、共同体的P2P全文検索システムとメール・Web・会議を垂直統合するグループウェアはある程度集中的に開発に力をそそいで、重要な機能を実現できたのではないだろうか。また実用的に使えるものを既にリリースできており、利用されはじめてきている。これからは普及をめざしての活動とさらなる改良をしていってもらいたい。今後も開発が継続されていくことを期待している。
 3回、2年半の未踏事業を通していくつかのプロジェクトをみてきたが、これらのプロジェクトの今後の開発の継続、発展を望んでいる。また採択したプロジェクトのみならず、これらを越えるような新しいプロジェクトがうまれてきたりしてもいいと思う。そのようにしてよりよい、時代に即した開発が続いていくようになることが、オープンソースソフトウェアを発展させていくことと言える。微力ではあったが本未踏事業の活動がオープンソースソフトウェアにいくばくか貢献することができたのではないかと思う。


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