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2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 

 伊知地 宏 (ラムダ数学教育研究所 代表)



2.採択者氏名


 代表者

 美崎 薫 (office ZeRO 代表)

共同開発者

 なし



3.プロジェクト管理組織


 株式会社 オフィスエム



4.委託金支払額

 

 6,992,070円



5.テーマ名

 

 SmartWrite&SmartCalender



6.関連Webサイト


 http://smartproject.hp.infoseek.co.jp/



7.テーマ概要


 本プロジェクトは,アイデアをメモし,メモを見て活用するという作業を支援する手書きメモソフトウェアSmartWriteと,壁掛けカレンダーのような形状で情報を提示したり保存したりすることの出来るソフトウェアSmartCalendarを開発することを目標としている.
 この2つのソフトウェアは,開発者の記者経験から必要性を感じたもので,開発者自身が使うために必要な機能を徹底的に絞込み,独自の哲学に基づいて設計が行われている.開発者はプログラミングを全く出来ないため,ちゃんとした設計書を作成し,プログラミングはアルバイトを雇って行うという方式で開発が行われた.本プロジェクトでは,どこまでちゃんと仕様が書かれたかと,仕様でかかれた物が本当に実現できる物であったのかということで開発成果の評価がされる.仕様については,かなり厳密な物が書かれたが,量が多すぎてプログラマーがちゃんと読んでいなかったという問題も発生した.開発されたソフトウェアは,基本的な部分で仕様の多くを満たした物が出来上がっている.



8.採択理由

 

 提案者は記者・著述家などとしては有名であるが,ソフトウェアの開発はもしかしたら実質的には始めての経験かもしれない.開発するソフトウェアは記者としての経験から生まれたものであり,ペンコンピュータを紙のように使えるようにするユーザインタフェースに関するもので,アイデアはこれまでの経験に裏打ちされており,非常に良く考えられていて,実用的な価値は非常に高い.その反面,未踏性では若干弱い面もあるが,それでも新規性は十分にある.提案者はプログラミングがほとんど出来ないので,詳細な仕様書を書いた後に,アルバイトのプログラマがソフトウェアを作成して,さらに改良を加えていく方法で開発が進められる予定である.提案者の期待に答えられるだけの技量を持ったプログラマが必要であり,聞いたところではすでに候補者が決まっているようだが,中間のチェックの時期でまともなソフトウェアが出来ていないときには,プログラマを交換することを条件に採択する.



9.開発目標


 SmartWrite,SmartCalendarともにメニューを持たず,紙に対するように直接操作が簡単に行えることが基本となる.

(1) SmartWrite

 アイデアをメモし,メモを見て活用するという作業を支援する手書きメモソフトウェアで,できる限り紙に近い感じの操作性にするために,手書き文字認識をせず,文字のテキスト化も行わない.コンピュータの1画面または1ウィンドウを1ページ=1ファイルとして扱い,その1ページをデジタルカメラなどでも使われる標準的な画像ファイルExif (JPEG) の1ファイルとして,日付/時刻順にフォルダを作りながら保存する機能を持つ.

(2) SmartCalendar

 壁掛けカレンダーのような形状で情報を提示したり保存したりすることの出来るソフトウェアで,壁掛けカレンダーのように,それを目にするまでは受動的な存在でありながら,目にした瞬間には今日が何曜日であるかというような情報を一瞬で提示することが可能であったり,必要に応じてメモや予定を書き込んだり,あるいは気軽に写真を貼りつけたりすることもできる.
 全く操作をしなくても,コンピュータで作成した写真や文字 (テキストファイル)を月単位で表示することができ,表示は時間を経るにしたがって順次切り替わって,見る度に新しい発見があるようにする.ユーザーが能動的にかかわる場合には,月単位で見ていた写真を1日単位で見たり,1日に撮影した写真をぜんぶ一度に見たり出来る.写真は単に見るだけでなく評価することも可能とする.例えば,「好き」と評価した写真は大きく表示され,「そうでもない」と評価した写真は小さく表示されるようにする.



10.進捗概要


 開発は比較的順調に進んだプロジェクトであるが,当初には仕様の記述がポンチ絵のようなものだけで,プログラマーに正確に意図が伝わらず,プログラマーが勝手にソフトウェアを開発するという問題が発生したので,PMが関与して仕様をちゃんと文章で書くように指示した.当初のこの問題は最後まで尾を引き,仕様と実装が一致せず,仕様の方の変更をするはめになったものもある.
 7月には開発者が病気を患い開発を出来ない状況にもなったが,この時点では仕様が確定していたのでソフトウェアの開発には大きな支障が生じなかった.しかし,作成されたソフトウェアがどこまで仕様を満たしているかの検証作業を期間内に完全に行うことは出来なかった.



11.成果


 (1) SmartWrite,SmartCalendarの仕様

 SmartWriteとSmartCalendarの仕様は,
  http://smartproject.hp.infoseek.co.jp/
 から見ることが出来る.

 (2) SmartWrite

 ペンコンピュータ自体を電子化した紙と感じられるように,画面全体を書き込みが出来る領域 (メモ紙) としたが,ウィンドウでの表示も可能にしている.画面もしくはウィンドウが紙であることを誘発するために,標準で解像度の異なる80種類以上の背景を提供している他に,任意の画像を背景に貼れるようにもなっている.
 メモはペンのストロークが紙の上に残るイメージで動作する.鉛筆ではなくペンと紙を模倣するため,削除や訂正などの機能はない.コンピュータでのメモ作成では,他のアプリケーションの出力情報を見ながらのメモを行いたいことがあるが,この場合に対応するため,画面に表示されている情報をメモとして取り込むことができるキャプチャ機能を提供している.過去に撮影した写真にメモを書き込む作業をしたいこともあるので,写真を背景として取り込むことを可能としている.
 SmartWriteの画面イメージは以下の通りである.

 

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 (3) SmartCalendar

 日付型に構成されたフォルダを編集可能なブラウザ型のファイルエディタ (GUIシェル/ファイラー) である.ファイルエディタとは,ファイル自体の編集機能ではなく,ファイルの保存フォルダや保存データなどを編集する機能をもつエディタを意味する.SmartCalendarでは、通常のGUIシェルと同様にファイルの移動,削除などの機能の他に,Exif/JPEG写真を評価して,その評価をExif/JPEGファイル内に書き込む機能を持つ.評価に従って,画像が表示される大きさが変わったり,表示されなくなったりする.
 表示モードは1ヶ月モードと1日全部モードがある.1ヶ月表示モードでは壁掛けカレンダーのような表示が行われ,それぞれの日にはその日の場所に保存されている代表的な画像が表示される.1日全部モードではその日に保存されている画像などが時間の経過にしたがって次々と表示され,必要な情報を探し出すことが可能となっている.
 SmartCalendarの画像イメージは以下の通りである.

 

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12.プロジェクト評価


 当初,仕様と実装との乖離が心配されたが,仕様がちゃんと書かれたことで,その差が少なくなり,実用性のある良いソフトウェアが開発された.しかし,仕様の記述が長すぎてかつ複雑であるために,アルバイトのプログラマーが仕様をちゃんと読んでいないという問題も発生した.仕様記述については,簡潔にポイントを抑えて書くなど,まだまだいろいろな課題を残しているが,初めてソフトウェアの仕様を書いたことを考えると良く出来ていると言えよう.

 ・未踏性: A-
  ペンコンピュータのアプリケーションとして,紙のような使い心地のソフトウェアはすでにいくつかのPDAで存在したが,SmartCalendarでのファイル名を全く意識させないファイル管理,提示方法には未踏性があった.
 ・先進性: B+
  技術的な面での先進性はほとんどないが,ペンコンピュータのアプリケーションに対する哲学に関して先進性はあったと感じる.
 ・実用性: B+
  美崎さんにとっての実用性は非常に高い.その一方で,一般の人が実用的であると感じるかどうかは意見が分かれると思う.
 ・社会への影響: A-
  ペンコンピュータのキラーアプリケーションとして,社会への影響力は比較的高い.
  (A: 高い,B: 並,C: 低い)



13.今後の課題


 まずは早急に仕様と実際に作られたソフトウェアとの相違点を明らかにして欲しい.その上でもう一度機能の検討を行い,仕様を簡潔に記述するようにしてもらいたい.また宣伝を行って多くの人に使ってもらい,美崎さん以外のユーザーの評価を得て,さらに良いソフトウェアになるようにしてもらいたい.


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