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2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 

 伊知地 宏 (ラムダ数学教育研究所 代表)



2.採択者氏名


 代表者

 望月 茂徳 (筑波大学 システム情報工学研究科 博士課程)

共同開発者

 なし



3.プロジェクト管理組織


 日本エンジェルズインベストメント株式会社



4.委託金支払額

 

 4,996,834円



5.テーマ名

 

 デジタル万華鏡-ビジュアルエンターテイメントソフトウエア-



6.関連Webサイト


 http://mochi.jpn.org/



7.テーマ概要


 本プロジェクトは,画像をフラクタル画像符号化手法で解析し,それを再構成して,画像内の形状をカラーパレット画像で色に変換した上で,芸術的な画像を描画するシステムを開発することが目標である.本システムを使うと,カメラで撮った画像に対して芸術的な画像特殊効果を得ることができる.見慣れた世界を芸術および数学の立場から見直すことによって,新たな世界を構築することを目指している.
 本システムの画像変換効果によって,画像の特徴的な形状が色として置き換わり,多様性のある画像が生成されるようになった.しかし,カラーパレットの影響が大きいため,生成された画像が必ずしも芸術的であるとはいえないことも多々あるという課題も明確になった.それを逆手にとって,カラーマップを当てるというゲームも開発し,フラクタル変換を体感できるようになった.



8.採択理由

 

 画像をフラクタル画像符号化して,それにカラーステーリングアルゴリズムを適用して他の画像の模様に代えて画像を復元するというソフトウェアの提案である.まさにテーマ名の「デジタル万華鏡」というのが,何をしているかを良く表していて,万華鏡を回すと画像が一気に変わるように,元の画像の雰囲気を一変させた画像を生成するものである.それを映画やアニメなどのエンタテイメントの領域に適用しようという非常に意欲的なプロジェクトである.技術的な基盤は非常にしっかりしているので,芸術面が課題かもしれない.コンピュータグラフィックスと芸術娯楽を融合させて楽しむことが出来るものを作ろうというもので,未踏性,芸術性,そして実用性ともに非常に高い.提案者は博士課程の大学院生であるが,この開発テーマは博士論文とは関係のないもので,これまでの研究の成果を基盤として,芸術の世界にも乗り出したいという意気込みを非常に気に入った.開発終了時には是非とも何らかの芸術作品を作り上げ見せてもらいたいものである.



9.開発目標


 カメラで撮った静止画像を,フラクタル画像符号化を用いて解析,再構成し,反復関数系の理論を用いて任意のカラーパレット画像をリンクさせることにより,形状を色で置き換えて画像特殊効果を持たせ,それをディスプレイ上に描画するようなシステムを開発することが第1の目標である.このシステムで芸術的な画像を生成することが第2の目標である.




10.進捗概要


 第1の目標である上記の理論を適用したソフトウェアの開発はかなり順調に進んだが,第2の目標である芸術的な画像を描画するのには大変苦しんだ.これは芸術に対する開発者の理解度が低く,芸術作品を自動的には作れず,何らかの人の関与が必要なことを理解するために時間がかかったためである.
 芸術とは何かを理解させるために,7月に公立はこだて未来大学の芸術家達に会わせて議論を行ったり,情報処理学会ヒューマンインタフェース研究会主催のモバイルユーザインタフェースに関する合宿形式のワークショップで発表させたりした.これで芸術や娯楽に対する理解が深まり,そして色の重要性を理解するようになり,システムが生成した画像のカラーマップを当てるゲームの開発を通して,徐々に芸術的な画像を生成できるようになってきている.



11.成果


 カメラで撮った静止画像を,フラクタル画像符号化を用いて解析,再構成し,反復関数系の理論を用いて任意のカラーパレット画像をリンクさせることにより,形状を色で置き換えて画像特殊効果を持たせ,それをディスプレイ上に描画するようなシステムを開発できた.
 その構造とメカニズムは下図のようなものである.

 

 

 

 実際に生成される画像は下に示すようなものとなる.各画像の右上に示されているのが元画像であり,右下に示されているのがカラーマップで,ユーザーがカラーマップを選択できる.ゲームモードのときにはどのカラーマップを使っているのかを当てる選択肢となる.
 カラーマップが違うと画像の印象が大きく変わるのが分かるであろう.日常的に見ている世界が全く違う世界として表現される.






12.プロジェクト評価


 5月頃に基本的メカニズムを持つソフトウェアは出来たが,その後,芸術に関することで迷走した.7月に公立はこだて未来大学の芸術家達と議論したこと,情報処理学会ヒューマンインタフェース研究会で刺激を受けたこと,PMのアドバイスなどを受けて,8月になって上記のような質の高いソフトウェアが完成した.それ以上に,望月さんが芸術について理解できるようになってきたことが,本プロジェクトの価値を大きいものにしている.

 ・未踏性: A
  芸術そして感性の領域に踏み込むあまり類のない怪しげなソフトウェアであることを評価する.
 ・先進性: A
  しっかりした理論背景とそれを応用できる技術,そして割りと芸術的な作品を作成できるようになってきたことを評価する.
 ・実用性: A
  実際にいじってみると,世界がこう変わるのかという驚きがあり,ゲームとしても面白い.玩具として実用性は高いと感じる.子供の方がこういうものに興味を持つように思う.
 ・社会への影響: B+
  なかなか判断しづらいが,ある程度影響があると感じる.
  (A: 高い,B: 並,C: 低い)

 最後2ヶ月の成長を見るにつけ,さらなる活躍の期待も込めて,スーパークリエータと認定する.



13.今後の課題


 高い確率で芸術的な画像を生成できるようになることが最大の課題である.そのためには色についてもっと知識を付け,芸術作品を高い確率で生成できるようなカラーマップを見付け出すことが必要である.また芸術作品の作成支援を行えるように,画像に対してもユーザーが直接操作を出来る機能を加える必要もあるだろう.
 また,さらにもっと面白い玩具にできるように,ユーザーがもっと楽しめるインタラクティブな機能を考えてもらいたい.小学生くらいの子供に使わせて,そのフィードバックを得ることも重要であろう.小さな子供に使わせると,大人が予想もしていなかった使い方をすることがあり,新しい展望が開ける可能性も大きい.


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