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2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 

 石田 亨 (京都大学大学院 情報学研究科 教授)



2.採択者氏名


 代表者

 上野 和風 (早稲田大学大学院 理工学研究科 コンピュータネットワーク工学科 修士課程)

共同開発者

 社本 基宏 (早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 国際経営学専攻 修士課程)



3.プロジェクト管理組織


 株式会社 早稲田情報技術研究所



4.委託金支払額

 

 5,797,756円



5.テーマ名

 

 マルチエージェント環境としての仮想証券市場とロボットの開発



6.関連Webサイト


  http://www.kaburobo.jp



7.テーマ概要


 担当者は, 2005年2月に株価予想ソフトウェアエージェントのコンテストを行っている. 経済産業省をはじめIBM, 野村総合研究所など多数の企業の協賛があり, プログラミングコンテストとしては過去最多の2405チームの参加があった. この過程で, エンドユーザプログラミング環境と仮想証券市場の構築というアイデアを見出している.

 (1)エンドユーザプログラミング環境
 上記のコンテストでは, プログラミングのできない参加者のために, パラメータ変更でカスタマイズできる株価予想エージェントを提供した. しかし, パラメータ変更だけではエージェントのふるまいを自由にデザインできない. そこで, 本プロジェクトでは, 専門的なプログラミングのできない参加者でもソフトウェアエージェントが開発できるエンドユーザプログラミング環境を開発する.

 (2)仮想証券市場
 上記のコンテストではエージェントどうしの相互作用が存在しない. エージェント数が数千の規模で, それぞれに参加者の考えが反映されている環境に相互作用を加えれば, 過去最大規模のマルチエージェントシミュレーションが実現できる. また, 大規模なコンペティションも行える. そのためのスケーラブルな仮想証券市場を開発する.



8.採択理由

 

 最近良く宣伝されている「カブロボ」開発チームの応募である.現在のカブロボは, 過去の証券取引の実データを用いて, 株式売買のコンペティションを行うものであったが, 本申請では, ソフボット同士で取り引きを行う仮想証券市場の構築へと発展している. 明らかに現在のカブロボの先を行く提案で, 単純な連続な拡張ではない. ロボカップシミュレーションリーグやTACの証券市場版で, 世界的なマルチエージェントシミュレーションへと発展する可能性を秘めている. 現状をはるかに上回る大きな飛躍を期待して採択とした.




9.開発目標


 本プロジェクトの開発目標は以下の通りである.

 (1)エンドユーザプログラミング環境
 目標としては, エクセル程度を使える能力がある参加者が使えること, 既存のテキスト言語(Java C#など)へのエクスポートとインポートを可能にすることなどがあげられる. 環境要件としては, クロスプラットフォーム(Windows Mac Linuxで動作する)であること, インストールフリーであることを目標とする.

 (2) 仮想証券市場
 現実の市場と乖離しないこと, スケーラブルであることがあげられる.



10.進捗概要


 進捗はスムーズで, 当初目標としていたシステムを構築できた. 中間発表では, エンドユーザプログラミング環境のユーザインターフェイスのデモと, 仮想証券市場の仕組みについて説明した. 最終報告会では, エンドユーザプログラミング環境を動作させ, 実際に初心者でも使えることを示した.

 プログラマの採用が遅れたが, メンバー同士のミーティングを多く行い, 役割分担と情報の共有を進めるなどの工夫により, プロジェクトの進捗に大幅な影響は生じなかった.



11.成果


 エンドユーザプログラミング環境は, 自然言語で記述した命令文をドラッグアンドドロップすることでプログラミングを可能とするものである. できあがったソースコードは自然言語で読むことができる. 従って, コメントをつける手間がなくソースコードの可読性が劇的に向上した. さらに, 命令文を追加する際に, 特殊な構文規則を習得しなくてもよいようJavaDocにより追加できるようにした.

 この方式では関数名等を手入力しないので, スペルミス等は発生せず構文エラーになるような操作は生じない. これによって, 構文を意識せずソフトウェアが開発できるようになった. また, UI中にインストラクションをつけ, 画面から使用方法が推定できるようにした(図1参照). 開発成果はhttp://kaburobo.jp/で順次公開されている.

 


図1 エンドユーザプログラミング環境

 

 一方, 仮想証券市場の仕様はオークション方式とした. 現実の市場の売買取引はマーケットメイク方式だが, 一般的に認知度が低く参加者の混乱を招くので採用しなかった. オークション方式で参加者の注文を突き合わせて売買を成立させた. 実際の市場はリアルタイム処理だが, 本コンテストでは一定時間毎に注文処理時間を区切るバッチ処理を採用した. 試みに第一回目に参加した株価予想エージェントを使い, 仮想証券市場シミュレーションを行った. 実証券市場では, 1.0%の株価上昇であったにも関わらず, 仮想証券市場では15.9%の大幅な株価上昇を記録した. 実証券市場はほぼ動きのない相場であったが, 仮想証券市場は中盤で調整をした以外はほぼ上昇相場であった. 一定の水準で利益確定を行うエージェントが多かったため10%や15%の成長局面で売り圧力が掛かった. 今後もこうした実験を続け, 経験と知見を蓄積していく予定である.




12.プロジェクト評価


 実際のカブロボコンテストと平行したソフト開発であるため, 開発者のモティベーションが高く, フィールドからのフィードバックも大きい. このような, 理想に近い開発環境を自ら作り出してきたことは高く評価できる.

 また, 十分に開発目標を実現するシステムを構築することができている. エンドユーザプログラミング環境は当初実現が危ぶまれたが, ユーザにとって使いやすく分かりやすい機能に落ち着いた. 内部のソフト構成は言語処理ソフトとしてしっかり開発されていて汎用性もある. このため, カブロボ以外の領域依存言語を低コストで作成できるシステムとなっている.

 仮想証券市場については, 株価予想コンテストのルールとの兼ね合いが問題となった. コンテストとしての面白さにとって重要なのは, 現実の市場と近いことか, それともゲーム性かなど, 延々と議論がおこなわれた結果, 一応の結論が得られ実験が始まっている.



13.今後の課題


 今後, エンドユーザプログラミング環境を積極的に活用していくことが必要である. コンテストで仮想証券市場をつくり, 株取引に関する社会の啓発に役立てていくことが期待される. また, 他分野へも積極的に応用していくとよい. 例えば, Web検索エージェント作成ツール, 表計算マクロ作成ツール, ユビキタス環境でのサービス連携ツールなどが考えられる.



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