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2004年度第2回未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM

 

 長尾 確  (名古屋大学 情報メディア教育センター 教授)



2.採択者氏名


 代表者

 須子 善彦 (慶應義塾大学 政策メディア・研究科 博士課程)

共同開発者

 佐藤 毅 (有限会社エヌジィ・マット・コーポレーション 代表取締役社長)



3.プロジェクト管理組織


 株式会社リオ



4.委託金支払額

 

 7,800,000円



5.テーマ名

 

 ユーザ間の主観的センス共感度を用いたWeblog検索システムの開発



6.関連Webサイト


 なし



7.テーマ概要


 このプロジェクトは、ユーザー間のセンスの共感度、つまり同一の情報に対して類似した評価を行う度合いを用い、ユーザーが行える情報処理量の限界によって起こされる情報のミスマッチング等の問題を解消し、ユーザー毎に最適な情報を自動的に提供するシステムを開発した。開発したシステムは、WebアプリケーションベースのRSSリーダーとして実装された。既にテスト版を一般公開し、公開1ヶ月後時点で100人超のテストユーザーによって利用されている。




8.採択理由

 

 情報の価値がそれをやり取りする個人の価値観や共感度で局所的に決まっていく仕組みは重要だろう。今後は、大域的な情報検索と組み合わせて、ローカルとグローバルのバランスをとりつつ最適な検索ができる仕組みに発展させるのがよいと思われる。将来性を評価して採択とするが、今回は確実に実現可能な部分に焦点を当てて欲しい。




9.開発目標


 インターネットの登場によって、個人は、容易に世界中に情報を発信すること、および、世界中の情報に容易にアクセスすることが可能となり、世界中の多様な個人間の自由なコミュニケーションを実現するといわれていた。
 しかし実際には、ユーザーが処理できる情報の量には限りがあり、今日の状況は、ユーザーにとって情報過多になっている。そのため、ユーザーが情報処理能力の範囲内で、ユーザーが自身のニーズにあう情報を容易に発見しアクセスできる仕組みの提供が必要である。
 このプロジェクトでは、その仕組みとして、知人関係をベーストしたユーザー間のセンスの共感度を用いるモデルを考案し、実現をすることで、インターネットの創造期の理想の実現を担う。

 ユーザーは普段の情報収集において、取得した情報が自分のニーズにとって役に立つものであるかどうかという価値判断を、自分自身で行う場合もあるが、口コミ等、知人等の他の人間の価値判断を利用することもある。つまり、ある人の過去の価値判断の結果が、自分自身で判断した場合の結果と近いとき、ある人の価値判断を自分の価値判断とする、あるいは、自分の価値判断の材料とする、といった形で、情報への価値判断を他人に移譲することがある。この仕組みをセンス共感度と呼ばれるモデルを構築・実装し、それに基づく情報流通の新しい手段を開発する。



10.進捗概要


 前述の目標の実現のために、ソーシャルネットワーキングを活用したWebアプリケーションベースのRSSリーダーを開発した。このシステムはユーザー間の知人関係を管理するいわゆるソーシャルネットワーキングサービスの一連の機能を有し、その情報を活用して、RSSリーダー機能をユーザーに提供する。
 ユーザーは、知人関係ネットワーク経由で自分の知人が書いたブログや普段読んでいるRSSフィード等を読み、情報に対する主観的な価値判断を個々に行う。
 その結果をアルゴリズム処理し、ユーザー間にマルチホップに伝播させることで、個々のユーザーにとって重要だと思う情報が、情報のほうから磁石に吸い寄せられてくるかのように個々のユーザーに近づいていくような情報検索・情報流通の仕組みを開発した。

 このプロジェクトでは、設計、実装、テスト、テストユーザーによる試験運用とモデル・設計の評価を行い、必要に応じたリファクタリングにより、実運用が可能な製品レベルの品質、性能を実現した。




11.成果


 このプロジェクトでは、以下の機能を持つシステムを開発した。
 1.ユーザー情報の管理、知人関係の管理およびメッセージング機能
  ユーザー登録、ユーザーのプロフィールの登録と管理。ユーザーの顔写真の登録と管理。ユーザーの知人関係の構築、管理。ユーザー間のメッセージ交換。その他、一連のソーシャルネットワーキングサービス機能。
 2.ユーザーのRSS登録機能
  ユーザー自身が書いているブログや、ユーザーが自分の読みたいRSSフィードを登録する機能。RSS Auto-Discoveryによる登録も可能。RSSフィードのURI等をリレーショナルデータベースに保存する。また、ユーザーは、他のユーザーが登録しているRSSフィードを優先的に読む「お気に入りブログ作者登録機能」。
 3.ユーザーの登録したRSSフィードを取得しRDBに保存するクローラ
  2の機能でシステムのリレーショナルデータベースに登録されたフィードURIを元に、定期的にRSSのチャンネル、エントリー記事の情報をHTTPで取得し、その内容をリレーショナルデータベースに保存するRSSクローラ。
 4.ユーザー間のセンス共感度の大きさを手動設定・管理する機能
  ユーザーが自分の知人や、2の「お気に入りブログ作者登録機能」で登録した対象ユーザーに対して、自分とのセンス共感度の大きさを手動で設定するインタフェースと、その設定情報をリレーショナルデータベースに保存する機能。
 5.センス共感度の大きさを処理して、ユーザーに最適なRSSエントリー記事を表示する機能
  4による手動設定や、後述する6の結果を元に7のアルゴリズムで計算されたランキング結果に基づき、ユーザーに最適なRSSエントリー記事を順番に表示してゆく機能。
 6.RSSエントリー記事をユーザーに評価させる機能
  5の機能と連携し、ユーザーに5の機能で提示されたRSSエントリー記事に対し、ユーザーが自分にとって有意義な情報であったか否かを、はい(○)、いいえ(×)、どちらでもない(△)、で評価させる機能と、その情報をリレーショナルデータベースに保存する機能。
 7.ユーザーからの記事評価とセンス共感度の手動設定値を元に、5のエントリー記事を選出するランキングを計算するアルゴリズム
  機能6の評価の累計を元に、ユーザー間のセンス共感度を自動的に算出・更新するアルゴリズム。また、前述のセンス共感度の自動算出の結果と、機能4の設定値、さらにエントリー記事の最終更新時刻に基づいて、ユーザー毎の最適なRSSエントリー記事のランキングを算出するアルゴリズム。

 また、以下に関しては、モデルの考案、基本的な設計、一部機能のプロトタイプの実装を終えた。
 8.複数テーマを統一的なインタフェースとアルゴリズム計算する複数テーマ検索機能
  複数のテーマ毎に機能7のランキングアルゴリズムを動作させ、情報検索を可能とする機能。

 また、以下に関しては、テストユーザーによる試験運用とモデル・設計の評価のために必要な機能として、設計、実装した。
 9.ユーザーの利用状況を把握するため管理者用分析ツール
  主にユーザーの利用状況と、本システムのランキングアルゴリズム(機能7)のチューニングのために必要な情報を収集し、分析するシステム管理者用の分析ツール。

 これらについて、以下にシステムの画面例を示して述べる。
 

 1 ユーザー情報の管理、知人関係の管理およびメッセージング機能

 ユーザーが登録本システムを利用するために必要なユーザー登録をする機能。また、ユーザー登録後に、ユーザー自身が自分のプロフィール等を表示、更新する機能。これらのプロフィールは、一般的なソーシャルネットワーキングサービスと同様に、他のユーザーから参照される。
 

図1.プロフィールの編集画面 

 

 

 また、ソーシャルネットワーキングサービスの一般的な機能であるユーザー自身が自分の顔写真を登録する機能も存在する。

 また、ユーザーが自分の知人を本システムに招待する機能、また、既存ユーザーとの間で、「友達関係」を構築する機能がある。また、その際に相手ユーザーに承認を求めるために、その旨をユーザーに伝えるメール送信機能がある。

図2.知人を本システムに誘う機能

 

 その他、自分や他ユーザーのプロフィールを表示する機能、知人関係のリストである「友達リスト」を表示するといった一連のソーシャルネットワーキングサービス機能がある。

図3.知人関係のリスト「友達リスト」

 

 2 ユーザーのRSS登録機能

 ユーザー自身が書いているブログや、ユーザーが自分の読みたいRSSフィードを登録する機能。RSS Auto-Discoveryによって、ブログ等のURLから、RSSフィードのURIを自動的に取得する機能を実装した。登録したRSSフィードのURI等は、リレーショナルデータベースに保存される。

図4.ユーザーのRSS登録画面

 

 また、ユーザーは、他のユーザーの書いているブログやお気に入りのRSSフィードが、自分にとっても読みたいと思った際に、そのユーザーを自分のお気に入りとして登録する「お気に入りブログ作者登録機能」がある。お気に入りとして登録すると、システム的には知人関係と同様に扱われ、センス共感度のネットワークリンクとしてシステムに登録される。直接リンクの関係の方が、後述するランキングアルゴリズム的に優先されるため、お気に入りのユーザーのブログやお気に入りRSSは優先して読まれることになる。また、そのユーザーとのセンス共感度を手動設定することが可能になる。

図5.お気に入りブログ作者登録機能




12.プロジェクト評価


 まず、このプロジェクトの着想が非常によいと思われる。単なる検索に代わる新しい情報流通の仕組みとして情報推薦があるが、情報推薦のための十分に説得力のあるモデルは、これまでほとんど存在しなかった。ソーシャルネットワーキングサービスがあたりまえに運用されるようになって、このプロジェクトの提案するモデルが高い実現性を持ち、RSSリーダーのようなソフトウェアとの統合によって一般に利用可能になった。本プロジェクトの長所は開発者自身が以前から社会的関係に基づく情報流通のモデルに精通していたことである。そのため、実現すべき機能や開発すべきシステムのイメージが明確になっていたことがプロジェクトの成果を着実なものにしたといえるだろう。この成果は開発者のセンスのよさによってバランスよくまとめられていると思われる。

 



13.今後の課題


 今後の課題の一つは、現在進めているテスト運用システムの機能、性能やユーザビリティを向上し、ユーザー数を増やしてゆくことである。これは、プロジェクトの最終目的を実現する上で必要となる機能である「複数テーマを統一的なインタフェースとアルゴリズム計算する複数テーマ検索機能」のモデルの検証に必要である。また、ユーザー数の増加によって、さらに可能となるチューニングも存在する。

 課題の二つ目は、プロジェクト成果の事業化である。そのために、提携プレイヤーの開拓が必要である。ユーザー数の獲得そのものが、提携プレイヤーの獲得において有効であると考えられる。
 事業化としては様々なプランが考えられるが、他のコミュニティサイト等にユーザー認証機能、ユーザー間の知人関係管理機能、およびユーザー間の情報センス共感度の提供をする際に課金をする方法が考えられる。例えば、オークションサイトやECサイトなどが提携先として考えられる。


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