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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM


 近山 隆  (東京大学 新領域創成科学研究科 基盤情報学専攻 教授)



2.採択者氏名


 代表者

岡部 誠 (東京大学大学院情報理工学系研究科 学生)

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


 日本エンジェルズ・インベストメント株式会社



4.委託金支払額


 5,800,000円



5.テーマ名


 手書きスケッチによる樹木の3Dモデリングとその拡張



6.関連Webサイト


 http://www-ui.is.s.u-tokyo.ac.jp/~makoto21/



7.プロジェクト概要


 手書きスケッチに基づいて樹木の3Dモデルを作成するソフトウェアを開発する。具体的には下掲の左のスケッチ画像の情報を元に、右のCG画像を作成するのに必要な3Dモデルを自動生成するものである。

 

木の手書きスケッチとそこから生成した三次元モデル図1 木の手書きスケッチとそこから生成した三次元モデル図2

 

木の手書きスケッチとそこから生成した三次元モデル

 

 手書きスケッチを用いることで、直感的操作が可能になり、初心者にも使い易く、一方熟練者にとっては思い通りのモデルを作れると同時に開発効率が良いソフトウェアの開発を目指す。
 本プロジェクトでの開発に着手する依然に、提案者が開発したプロトタイプ・システムが存在した。このシステムでも樹木モデルを作成することができたが、商品価値のあるレベルの品質には達しておらず、種々の改良・拡張を通じてこの点を改めようとするものである。
 樹木はコンピュータグラフィクスにおいて頻繁にモデリングが必要となる対象であるが、従来主流であったのは数理的手法によるモデリングであり、初心者には使いにくく、熟練者にとっても意図どおりのモデルを生成するのは容易ではなかった。提案されたソフトウェアはこの点の改善のためにまったく異なるアプローチを取っている独創性を評価した。




8.採択理由


 コンピュータグラフィクスのための実用性の高いツール構築の提案であり、システム構成案も適切と考えられる。実用になりうるツールが成果として得られる可能性が高い。




9.開発目標


 具体的には、既開発のシステムに以下の改良を加え、操作性と生成モデルの品質の向上を目指した。
(1) 樹木モデル生成にあたっての、手書きスケッチ情報の利用拡大
(2) 葉のモデリングのインタフェース
(3) ノンフォト・リアリスティック・レンダリング環境でのモデリング
(4) 作成したモデルと類似した樹木のモデルを、簡単な操作での自動生成
(5) ポリゴン数の少ない簡易3Dモデルの生成機能
(6) モデルに対するアニメーション機能




10.進捗概要


 前期においては上述の諸機能のうち、(1),(2),(4) についての開発を行った。開発者自身による既開発システムのユーザインタフェースを拡張し、こうした機能を利用できるようにしている。後期においてはこれらの機能の熟成をはかると同時に、(3),(5),(6) の機能についての開発を行なったが、(3),(6) については限定的な機能提要に止まっている。また、(4) についても十分といえる機能は実現できていない。しかしながら、全体としては十分完成度の高いシステムを構築した。
 以下にレンダリングの各ステップの進行を示す。

 

 (1) 手書きの線描スケッチの幹や枝に、自動的に太さを設定する

 

レンダリングステップ図1-1 レンダリングステップ図1-2

 

 (2) 枝の予測機能により、細かい枝を自動的に追加する

 

レンダリングステップ図2-1 レンダリングステップ図2-2

 

 (3) 葉のポリゴンを手書きし、予測機能によって自動的に木全体に広げる

 

レンダリングステップ図3-1 レンダリングステップ図3-2

 

 (4) 生成した葉にテキスチャマッピングを施して、現実感を増す

 

レンダリングステップ図4-1レンダリングステップ図4-2

 





11.成果


 樹木の3Dモデリングを手書きスケッチから生成するという提案方式を具体化し、実用的なモデル生成が可能であることを示した。開発者自身による既開発システムで基本部分はできていたが、詳細の詰めが甘く、実用的品質からは遠いものであったが、このプロジェクトでの開発を通じて、方式の有効性を確認している。
 ことに、2Dのスケッチから3Dモデルを生成するアルゴリズムの洗練、部分的なモデリングを全体に適宜拡張する種々のアルゴリズムは、大きな成果といえる。




12.プロジェクト評価


 一部の付加的機能については限定的な仕様にはなったものの、新たに提案した種々のアルゴリズムの実現を含め、全体としてまとまりのよいソフトウェアシステムを完成していることは高く評価できる。本プロジェクトで扱うインタラクティブなモデリングなどのような感性的な評価が重要なシステムのためのアルゴリズムの開発には、アルゴリズムを単独に開発することは非効率あり、本プロジェクトのようなシステム開発と並行して行なうことが必須である。その点、本プロジェクトはアルゴリズムの設計とシステム開発が適切なバランスを取って進められたと評価できる。




13.今後の課題


 実用的なシステムとする上で重要な未実現機能のひとつに、作成したモデルと「同様」の木を生成する機能があげられる。ここでいう「同様」とは、まったく同じものではなく、たとえば「枝ぶり」といった抽象レベルで同じであることをさす。これをアドホックに実現する手法はさまざま考えら、開発者による報告書にも例示されているが、本格的なアルゴリズムの構成のためには、たとえば「枝ぶり」とはどのような概念であるかの数学モデルを構成し、アルゴリズムはそのモデルに基づいて設計していく必要があるだろう。

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