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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM


 紀 信邦  (日本エンジェルズ・インベストメント株式会社 取締役 )



2.採択者氏名


 代表者

渡辺 秀行(株式会社アイビス 専務取締役)

共同開発者

光成 滋生(株式会社ピクセラ)
石田 計(有限会社サムス 代表取締役社長)
高島 研也(ユーテン・ネットワークス有限会社 Founder&CEO)



3.プロジェクト管理組織


 日本エンジェルズ・インベストメント株式会社



4.委託金支払額


 12,946,741円



5.テーマ名


 放送型配信における鍵漏洩抑止スキームの拡張



6.関連Webサイト


 http://homepage1.nifty.com/herumi/mtt/index.html



7.プロジェクト概要


 昨年度の開発テーマは高速な楕円曲線上のpairing(Weil pairing and/or Tate pairing)演算プログラムとそれを利用した鍵生成アルゴリズムを開発することだった。昨年度のPMによる評価は「目標が世界標準になることであり、開発者らはそれを実現できる能力と気力がある。開発の内容は驚くほど深い。試行錯誤を伴う開発であるにも関わらず、多くの結果を残すことができた。当年度の開発としては実用化まで目指していなかったために完成度評価はBである」であった。本年度は、昨年度積み残した課題を解決することを予定する。
 昨年度は、解除キーの情報量を人数に応じて増すことなく契約者の人数を十分大きく出来る方式を実装、実験した。運用するに際してプログラム中に埋め込まれたパラメータを一部隠蔽する必要があることが開発中に判ったが、本年度の開発ではこの運用上の問題の解決を目指す。また、実装の整理ができておらずプログラミング上整理すべき状態であったので、構成を整理し低位のライブラリは第三者の使用に耐える状況にする。




8.採択理由


多人数に配信するコンテンツの暗号化を考えるときに配信先ごとに異なる暗号化キーを大量に収集された場合にも新しいキーを推定されにくくする暗号化方式である。これまでに知られている方法では一定数のキーを収集すると新しいキーを見つけることが比較的容易であるとされており、この問題を解決することが前年度のテーマだった。この開発成果を改良し、マルチキャスト配信用の安全な暗号鍵生成アルゴリズムとハードウェア実装例を開発することには意義があるので採択とした。




9.開発目標


 具体的な開発目標として、以下の目標を設定した。
  1. ソース公開時の弱点回避のためパラメータを可変にできるようにすること
  2. 内部性能の改善、特に高速化の対象となる多倍長演算部分及び暗号方式実装部分のソースをシンプルにし、演算途中の無駄なメモリ確保をなくすこと
  3. 使い勝手の向上
  4. 安全性、可利用性を高める機能の追加
  5. ハードウェア上で機能の一部を仮実装して動作可能なハードウェアの提供可能性の評価



10.進捗概要


 パラメータを可変にするための措置として、適合するパラメータを生成するツールを開発した。このことにより、固定パラメータの場合に発生する弱点を、パラメータを利用者が任意に選択して秘匿することにより緩和できる。
 本体の暗号ソフトウェアの構成としては、多倍長演算ライブラリ、有限体の演算、楕円曲線の演算、ペアリングの計算とその上に構成される暗号系からなる。多倍長演算などのソースコードの改良についてはクラス構造の改善とC++templateによる簡略化、メモリ管理の改善が進み、ソースを公開する場合にも第三者が利用できる状態に整備された。また、暗号系としてはAESに採用されたRijindael暗号のコードが秘密鍵暗号として組込まれた。これは、その他の暗号系を秘密鍵暗号として実装しようとしていたところ、より扱いやすいRijindael暗号がAESに採用されたためである。その他、加入者排除機能として特定の鍵を無効にするコードがLagrange補間を用いて実装された。
 その他、実装デモンストレーションのためのプログラミングが行われ、Windows MediaPlayerから利用できるようになっている。
 ハードウェアへの実装は基本的な性能評価実験だけに留まった。




11.成果


 成果の一部は、http://homepage1.nifty.com/herumi/mtt/index.htmlで公開されている。この報告が公開されるころにはドキュメントも整備され、もっとそれらしいURLになっているはずである。
 オープンソース(修正BSDライセンスなど)になったライブラリ部分は、昨年度速度性能を求めて厳しいコーディングを行った部分であるが、これが綺麗に整理された。公開することにより、この領域の研究者の利便性が高まり社会的に価値が高い。
 また、米政府が次期暗号として選定したAES対応の暗号機能を組み込んだことも正しい戦略であり将来の布石として重要である。
 全体として、優れた理論に基づく優れた実装であり将来の実用可能性を含めて高く評価できるものである。




12.プロジェクト評価


A:優れている B:期待した程度 C:もっと頑張れ D:落第
生産性・完成度は予算相対です。
先鋭性:A
生産性:A
完成度:A
波及力:A

理論、プログラミング上の生産性、エンジン部分の完成度、今後の応用の可能性のいずれについても非常に優れていると評価できる。




13.今後の課題


 修正BSDライセンスによりオープンソース化した部分についてはきちんとしたドキュメントを整備し、標準ライブラリとなるよう普及と改良の活動を続けて欲しい。それ以外の部分についてはこのシステムが高速正確な暗号実装であることが適切な評価機関で評価されることを目標とし、将来的に世界標準にすることを目指して積極的な活動を行うことを期待する。
 ハードウェアへの搭載については、事業化可能性の探索を続けながら進行していただきたい。


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