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平成15年度未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 



1.担当PM


 坂村 健  (東京大学 大学院情報学環 教授)



2.採択者氏名


 代表者

平林 俊一(富士通株式会社 ソフトウェア事業本部ミドルウェアプラットフォーム事業部第一開発部)

共同開発者

なし



3.プロジェクト管理組織


 社団法人トロン協会



4.委託金支払額


 19,949,179円



5.テーマ名


 WideStudio for T-Engine の開発



6.関連Webサイト


 http://www.widestudio.org/



7.プロジェクト概要


 WideStudioは,このプロジェクトの応募者が中心となって開発した,FreeBSD,Linux,Solaris,Windows上で動作する,純国産のオープンソースデスクトップアプリケーション開発環境(IDE)である。WideStudio で作成したアプリケーションは,OS依存のAPIを使用しない限り,リコンパイルするだけで他のプラットフォームへソース変更なしに対応させることができる。
 このプロジェクトは,このWideStudioに組み込み開発環境の1つであるT-Engineに対応させるための機能を追加し,T-Engine におけるデスクトップアプリケーションを開発するためのWideStudio (WideStudio for T-Engine) を開発することにある。これにより,既存プラットフォーム上のアプリケーションが,これから組み込み系で幅広く利用が期待されるT-Engine の上で動作するようになる。
 WideStudio for T-Engine では,既存プラットフォーム上のアプリケーションを T-Engine 用にビルド(クロスコンパイル)すること,または,T-Engine 上でビルドすることによって,T-Engine 用のアプリケーションの作成ができることを目的としている。既存プラットフォーム上のアプリケーションの流用や開発手順の共通化でT-Engine 対応アプリケーションの開発効率向上が期待される。
 こうした複数の異なるプラットフォーム上で同一のプログラムを動作させる環境として,現在ではJavaなどの処理系の移植性が高いインタプリタ言語環境が普及しつつある。こうした方式の問題点は,高級言語のインタプリタや仮想マシンを必要とするため,実行時メモリなど計算機資源を多く利用することと,実行負荷が大きいことがあげられる。エンタープライズ型のサーバシステムや,高性能のMPUを搭載したハイエンドのパーソナルコンピュータであれば,こうした資源利用や付加は現在あまり問題にならなくなってきた。これが,Javaのような言語が普及した一因となっているわけである。一方,組み込みシステムの場合はそうはいえない。組み込みシステムは,サーバシステムやパーソナルコンピュータシステムに比べ,計算機資源の量やCPU性能において劣るものである。また,省電力の観点やコストの観点から,できるだけ実行負荷や利用資源が小さいことが強く要求されている。
 このような考察から,WideStudioのような開発環境においてプラットフォームの違いを吸収し,ネイティブコードを生成する方式は,今後組み込みシステムにおいてこそ活躍するものである。従って,WideStudioがリアルタイム・組み込みシステム環境上で利用可能になることに期待している。





8.採択理由


移植対象のソフトウェアと、開発者ご自身に、高い実績があるため。また、組込みソフトウェアのよい開発環境というテーマも、組み込みコミュニティにおけるニーズが現在高いものであり、このソフトウェアが完成することによって、組み込みコミュニティに大きく寄与できると考えられるため。




9.開発目標


 このプロジェクトの開発目標は,以下に掲げる機能を有するソフトウェアを開発することである。
 1. WideStudioをT-Engine上で動作させるための,T-Engineブリッジ機能。
 2. WideStudioでのアプリケーション開発を効率化するデバッガフロントエンド,専用エディタ。
 3. WideStudio標準ライブラリの品質向上。
 4. 多国語対応,マニュアル整備。
 5. ビルドオプション機能。




10.進捗概要


 概ね当初の計画通り遂行し,開発項目に掲げた機能を有する統合開発環境を実装し,完動させた。作成した統合環境は,主に以下のような機能を提供する。
 1. プラットフォームに依存しない統一された操作体系のデスクトップアプリケーション開発環境
 2. マルチプラットフォームクラスライブラリMPFC
 3. ウィンドウ編集が簡単にできるビジュアルウィンドウエディタ
 4. アプリケーションビルダの自動ソースコードジェネレート機能。既述すべきソースコードはイベント駆動方式による必要最小限のものである。
 5. アプリケーションの構築作業を容易にするプロジェクトマネージメント機能




11.成果


 進捗概要で述べた開発成果は http://www.widestudio.org/ で公開されている。
 また開発成果を関西オープンソース+フリーウェア2003およびTRONSHOW2004に出展し,TRONWARE vol.84誌に執筆している。




12.プロジェクト評価


 組み込みシステムは,サーバシステムやパーソナルコンピュータシステムに比べ,計算機資源の量やCPU性能において劣るものである。また,省電力の観点やコストの観点から,できるだけ実行負荷や利用資源が小さいことが強く要求されている。このため,開発環境においてプラットフォームの違いを吸収し,ネイティブコードを生成するアプリケーションの開発方式は,今後組み込みシステムにおいてこそ活躍するものである。スタートが8月であり実施期間が短かったにもかかわらず,目標に掲げた開発環境を開発,完動させ,その成果をwebに公開できるレベルにまで達することに成功したことは評価に値する。発表会の席上でも好評であった。



13.今後の課題


 書籍化や保守サービスなどによる市場への浸透を目指している。また製品化の動きも現れている。組み込みシステムにおける WideStudio for T-Engine のような開発環境は非常に少ない。今後は開発したアプリケーションの普及に努めたい。

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