ベンチャー企業の創業や特許出願のプロジェクトも
2013年4月30日
独立行政法人情報処理推進機構
IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:藤江 一正)は、2012年度に採択した未踏クリエータ31人の中から卓越した成果を挙げた12名を「スーパークリエータ」として認定しました。
3月28日に公表した「IT人材白書2013」によれば、ユーザー企業のIT部門において新事業や新サービスの創出を主導できる人材が「大幅に不足している」と答えた企業が約5割を占め、「やや不足している」を含めると9割にも達しています(*1)。
IPAの未踏事業は、IT関連分野においてイノベーションを創出することのできる独創的なアイディアと技術を有するとともに、これらを活用していく高い能力を有する若い突出した人材を発掘・育成する事業で、2000年度から行っています。また未踏事業で採択されたクリエータの中から、特に卓越した能力を持つと認められた人材を「スーパークリエータ」として認定し、認定証を授与してきました。
スーパークリエータは、天才の定義として①アイディアや発想などの「新規性」、②企画力や設計力、プログラミング能力といった「開発能力」、③末恐ろしさを秘めた「将来の可能性」、の3つを基準に選考、認定されています。また未踏事業では過去12年間で244名のスーパークリエータを輩出しています。
今年の認定者は12名(9プロジェクト)で、実施したプロジェクトは、衣服や頭髪の揺れを効果的に生成する3Dアニメーションソフトの開発や、意外性と多様性を考慮したリコメンドエンジンの開発、型を使用せずに木材で曲げ形状を実現する造形システムなど、直ぐにでも実用化できそうなテーマのほか、すでにベンチャービジネスとして立ち上がっているものや、特許が出願されているものもあります。
統括プロジェクトマネージャー(*2)として選定にあたった慶応義塾大学客員教授の夏野剛氏は「実社会ですぐ役立つものが多く、完成度の高さには驚く」と評価しています。また同じく統括PMの早稲田大学教授の竹内郁雄氏は「若い才能にわくわくさせられた」と感想を語っています。
過去の認定者によれば、スーパークリエータの認定を受けたことで「開発の成果が大手企業に採用された」、「ビジネスの提案を聞いてもらいやすくなった」、「会社の中でやりたいことができるようになった」など、活躍の場が広がったという声があがっています。
また、IPAでは、2012年度のスーパークリエータたちの活動成果の紹介と、「スーパークリエータ認定証」を授与する「スーパークリエータ認定証授与式」を5月29日に開催します。このイベントへの参加費は無料で、誰でも参加できます。
「スーパークリエータ認定証授与式」については、以下のWEBページをご覧ください。
第19回未踏事業「スーパークリエータ認定証授与式」開催のご案内
スーパークリエータの実施プロジェクト概要(詳細は別紙1参照)
1)悲しいときでも幸せになれる鏡
画像処理により、表情を違和感なくリアルタイムに変化させる鏡のようなシステムを開発した。悲しい気分で鏡を見た時に、顔の表情を笑顔に変形させ、気持ちをプラスの方向に誘導することを可能にした。
2)2.5次元動画を簡単に操作できる編集ソフトウェア
誰でも簡単に2.5次元(*3)動画の撮影、編集ができるソフトウェアを開発した。動画内のオブジェクトをドラッグ&ドロップでコピー、移動、削除でき、配置の際にオブジェクトの大きさや前後関係を考慮する必要もない。
3)平均曲という音楽を自動生成するソフトウェア
複数の楽曲を元にして新しい曲を創りだす、「平均曲」というアイディアを提唱し、その生成手法とソフトウェアを開発した。作曲や演奏の技術を持たない人でも自由に音楽を作り出し、楽しむ可能性を広げた。
4)コンピュータのハードウェアの構造を理解できる学習用システム
ゲーム機の「エミュレータ」を用いて、コンピュータの基本動作を実感できる教育用コンテンツを開発した。高校でワークショップを行い、教育効果を検証した。
5)3次元のアニメーションキャラクターの表現のこだわりを生成する物理エンジン
キャラクターアーティストのこだわりを3次元で実現できる物理エンジンを開発した。どの方向から見てもアホ毛(*4)が常に横向きに見えるなど、これまで実現困難な表現を可能にした。
6)Webで画像を集約する図鑑作成プラットフォーム
誰もがあらゆるトピックの図鑑をボタン1つで作成でき、図鑑への画像の投稿、投稿画像の分類・同定が行えるWebサービスを開発した。有効性の確認とシステムの改善を目的として「Web魚図鑑」を一般公開した。
7)画像を使用して視覚に訴えるバケットリスト(やりたい事のリスト)サービス
バケットリストを視覚的に管理、共有、発見するためのウェブサービスを開発した。夢や目標を簡単に保存・管理し、実現するためのモチベーションを回復・向上させることを可能にした。
8)型を必要としない木材加工の局面造形システム
コンピュータ上で設計した局面造形を木の曲げで実現するソフトウェアを開発した。これまでの手法と比べ低コストかつ簡単に、曲げをもった多様な形状の設計・製作を可能にした。
9)推薦記事配信システムに実装するアルゴリズムの開発
興味の一致だけでは既視的になりがちなWEB上の推薦記事配信に関して、意外性と多様性を考慮したリコメンドエンジンを開発した。ニュースレコメンドサービス「Gunosy」に適用し、有効性を実証した。
今後彼らの成果や活動を通して、私たちの生活様式に革新がもたらされ、社会の大きな発展につながることを期待しています。
脚注
(*1) 大幅に不足していると回答した割合:①49.0%、②39.8%、③50.7% やや不足していると回答した割合:①41.7%、②49.6%、③40.3% (従業員数:①300名以下の企業、②301-1000名の企業、③1001名以上の企業)
「IT人材白書2013」別紙資料(378KB)
(*2) プロジェクトマネージャー:産官学の第一線で活躍している方を委嘱し、未踏採択者のアイディア実現のため、能力に応じたプロジェクトの実施目標策定、進捗報告を踏まえた課題解決や技術等に関する指導・助言を行っている。
2012年度のプロジェクトマネージャーのプロフィール:
2012年度 未踏IT人材発掘・育成事業 プロジェクトマネージャー(PM)一覧
(*3) 物体の3次元的な形状を1つの方向から見える範囲で表したもの。2次元と3次元の中間という意味で使われる。
(*4) アニメーションキャラクターで、髪の毛の表面から寝癖のように跳ねている短い毛のこと。
プレスリリースのダウンロード
本件に関するお問い合わせ先
IPA IT人材育成本部 産学連携推進センター 未踏人材グループ 神島/中尾
Tel: 03-5978-7504 Fax: 03-5978-7516 E-mail:
報道関係からのお問い合わせ先
IPA 戦略企画部 広報グループ 横山/白石
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