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2006年度「自治体におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証」成果

実証実験の目的

 IPAは、2004年度に学校教育現場において、2005年度に自治体においてOSSデスクトップの導入実証を実施し、普及を促進するために解決すべき課題の抽出を行ってきました。その結果、学校教育現場や自治体においてOSSデスクトップは一定の可用性を持ち、コストの面でも既存のIT環境に比べて優位な点を持つことを実証しました。
しかし、自治体のIT基盤全体にわたって一層のOSS活用を達成するためには、次のような課題があることが明らかになりました。

  1. ユーザ認証基盤、文書管理基盤等の基盤的システムに相互運用性が乏しく、OSSデスクトップを既存システムに共存させながら導入し、移行することが困難となっている。
  2. オープンな標準を活用することで、地元中小ITベンダの参入を促進できるシステム構築手法が求められる。
  3. OSSの運用において突発的に発生する問題解決等のための、継続的で低コストなサポート手法が求められる。

そこで、2006年度は、オープンな標準の活用によりプラットフォーム非依存なIT環境の普及を図り、ひいてはデスクトップを含む情報システムのTCO削減を図ることを狙いとし、自治体におけるOSSの普及の阻害要因を抽出して、その問題点の解決につながる知見を得るため、システム構築手法、ユーザサポート手法、広域的運用手法等を対象として実施しました。

概要

今回実施した、4自治体の実証内容は以下の通りです。

  1. 山形県「山形県庁文書管理システム導入実証実験」
      山形県庁では、文書管理業務は紙ベースで行われていましたが、従来の紙ベースの業務をそのまま電子化するシンプルな文書管理システムを開発し、山形県庁に導入、職員の業務に適用しました。システムの構築に当たっては、OSSで構成されたSOA(Service Oriented Architecture)基盤を使用し、SOAによるシステム設計・構築を実践しました。その中で、基盤として使用したOSSの実用性の検証とともに、自治体のシステム構築においてSOAの適用が有効であることを検証しました。
      開発にあたっては県庁職員が要求仕様の策定にかかわり、使い勝手がよく、県庁職員の評判も良いシステムになりました。また、今後は、保守・サポートをサービスごとに切り分けて地方のITベンダーに委託できるなど、県としてもSOAを採用した効果を見込んでいます。本事業により、SOAを用いたシステム設計・構築の実践例、システム構築手順の各種データが公開されることで、SOAの導入を検討している自治体、企業の参考となることが期待されます。
  2. 栃木県二宮町「栃木県二宮町および周辺市町におけるOSSデスクトップの導入と広域連携基盤の整備」
      栃木県二宮町は、2005年度事業に続き2度目でした。2005年度事業では町役場全体へのOSSデスクトップの導入が可能であることを実証しました。しかし、OSSデスクトップのさらなる普及のためには、他の自治体から不安をもたれるような問題点に対して、二宮町において具体的な対応策を示すことが重要です。
      そこで、2006年度は、OSSデスクトップを運用する上での様々な問題点を解決する取り組みを実施しました。具体的には、 OpenOffice.org での VBマクロ互換機能の適用、文書データコンバート機能の運用、既存文書をODF化する手順のマニュアル化、OSSの研修を継続的に改善していくための手法の適用を行いました。これらの検証は、町役場で使われている文書ファイルの収集・分析を通じて行ったもので、自治体の実情に即しており、他の自治体においてもOSSへの移行を検討する上で重要な指針となります。
      さらに、OSSを活用した広域業務連携を構築して、周辺市町からも利用できる広域向けサービスを構築、運用することを通じ、 OpenOffice.org などのOSSを自治体に普及させていく取り組みを実践しました。
  3. 千葉県市川市「公共施設予約システムによるOSS導入実証」
      千葉県市川市では、公共施設予約システムおよび職員認証基盤をOSSを用いて構築し、システムの構築費用の経済性を検証しました。公共施設予約システムは、市民側のクライアントはWebブラウザ機能のみで利用可能とし、パソコン、KIOSK端末、携帯電話から同一インターフェイスで利用できるようにしました。自治体職員側の管理端末は、LinuxのPCにICカードリーダライタを接続し、現在市川市で使用している職員証ICカードで操作者認証が行える様、認証用Javaアプレットを開発しました。職員認証基盤の構築にあたっては、現在の市川市の組織体系にそった権限管理が実装可能かどうか、構築に用いたOSSの機能検証を行いました。
      OSSを活用したことによって、ミドルウェアのライセンス料を気にせず複数の試験環境を構築でき、柔軟なスケジュールを組むことが出来たことなどから、生産性の向上をもたらすことが実証出来ました。
  4. 大分県「大分県庁基盤システムでのオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証」
      大分県では、(1)オープンな標準に基づきOSSにて自治体向けの基盤システムを構築すれば、それらが自治体のシステム全体最適化に有効であること、A自治体職員がシステム設計することで、発注単位を細分化(分割発注)でき、地場の企業による受注が可能であること、(3)工夫次第で、地場ならではのきめ細かい、低コストで安心できるサポートが可能であること、の三つの仮説を立て、その実証を行いました。
      (1)全体最適化へのOSSへの適用では、オープンな標準とOSSで構築したシステムは全体最適化の中で適用可能であることが実証され、県としても全庁的な本番稼動に向けて検討・作業を開始することになりました。(2)地場企業への分割発注では、システムを機能ごとに分割し開発工程に引き渡すステップ、分割されたそれぞれの受入・検収・連携テスト、運用後の保守、の作業をひとまとめにしたもの、の3つの工程を設定し、その部分は一社で実施することで、円滑な作業の進行と品質維持を果たしました。(3)地場企業によるサポートでは、実証期間中ヘルプディスクが受け付けた事例の39件中38件は、地場のIT企業で対応できました。また、55項目の回答を用意したFAQに、のべ645回アクセスがあり、サポートにかかる工数の圧縮に大きな効果がありました。

今後の展開

本事業の結果、自治体等の住民情報や医療、教育等に係る重要な情報を扱う公的組織のIT基盤全体にわたって、一層のOSS活用を達成するためには、さらに次のような課題への取り組みが重要であることが明らかになりました。

  1. 人名漢字等を扱うための外字を含む文字コードへの対応、セキュリティの確保、レガシーソフトウェアの代替等、既存システムとの安全な連携あるいは置換えをOSSの活用により実現できることを示す必要がある。
  2. 2007年3月に総務省より公表され、7月に施行される「情報システムに係る政府調達の基本指針」を満たすようなシステム構築の実践を、OSSを活用して示す必要がある。具体的にはオープンな標準を活用したシステムの構築と運用、分割調達へ向けた仕様策定への自治体等職員を交えた取り組み等がある。
  3. OSSおよびオープンな標準を活用したシステムへの移行コスト、運用コストを明らかにする必要がある。

そこで、上記の課題の解決を図り、その上で自治体等におけるOSSおよびオープンな標準の普及の阻害要因を抽出し、その問題点の解決につながる知見が得らえるような、システム構築・運用手法、ユーザサポート手法等を具体的な対象として、2007年度も自治体での導入実証を実施します。