1999年4月9日
情報処理振興事業協会
コンピュータウイルス被害の届出状況について
1.はじめに
(1)1999年3月ウイルス被害届出状況
情報処理振興事業協会(略称IPA・石井賢吾理事長)は、'99年3月のコンピュータ
ウイルス被害の届出状況をまとめた。
(2)今月の特記事項
(a)電子メール機能を悪用したウイルスが急増
W32/Ska、W97M/Melissaのように、感染すると外部にウイルスをメールで送信してしまうウイルスが増加している。発見が遅れると、ユーザーが知らないうちにウイルスに感染したファイルを外部に出してしまう可能性が非常に高いので、日頃から最新のワクチンソフトによるウイルス検査を実行するようにされたい。
また、添付ファイルやダウンロードファイルをウイルス検査をしないで、開いたり実行したりして、感染するケースが増えている。友人、知人、職場の同僚から送られてきた電子メールの添付ファイルや、信頼できそうなサイトからのダウンロードファイルであっても、必ず最新のワクチンソフトでウイルス検査を行ってから、開いたり、実行するようにされたい。
(b)W32/Ska(Happy99)について
本ウイルスの届出件数が、先月の74件から、今月は181件に増大した。
(過去、1種類のウイルスの月間の最多届出件数は、'97年7月、XM/Larouxの140件)
ユーザーからの相談も引き続きよせられており、これからも感染被害が拡がるものと思われる。
IPAのWebサイトに本ウイルスの情報を掲載しているので、参照の上、対策を講じられたい。
(c)W32/CIHについて
4月26日に発病するウイルス、「W32/CIH」の被害届出が、今までで月間最多の34件あった。
発病してからではデータを破壊される等修復が困難となるので、市販のワクチンソフト等を用いて、発病する前に発見・駆除 されたい。
(d)W97M/Melissaについて
海外で、ウイルスに感染したファイルをメールの添付ファイルで送るウイルスによる被害が急増している。
国内では、まだ大きな感染被害は出ていない。(IPAへの3月中の感染被害届出は0件)
しかし、海外から感染したファイルが送られてくることが十分考えられるので、IPAのWebサイトの情報を参照して、対策を講じられたい。
また、Wordに付いているセキュリティ機能(ツール/オプション/全般の「マクロウイルスを自動検出する」)を活用されたい。
(3)ウイルス被害届出制度
コンピュータウイルスの届出制度は、通商産業省のコンピュータウイルス対策基準('90年 4月10日付通商産業省告示第139号、'95年7月7日改訂通商産業省告示第429号、'97年9月24日改訂通商産業省告示第535号)に基づき、'90年4月にスタートした制度であって、コンピュータウイルスを発見したものは被害の拡大と再発を防ぐために必要な情報をIPAに届け出ることとされている。
2.届出の概要
(1)今までの届出状況
届出件数は、'90年4月通商産業省が告示した「コンピュータウイルス対策基準」に基づいて、IPAが被害の届出機関に指定されてから受理した届出の件数である。今までの届出件数は9101件となる。次に示すグラフは、
'97年1月から'99年3月までの被害届出件数の月別推移を表したものである。

注記)'90年(4月〜12月)、'91年、'92年、'93年、'94年、'95年、'96年の届出件数はそれぞれ 14件、57件、253件、897件、1127件、668件、755件である。
(2)'99年3月の届出状況
3月のコンピュータウイルスの被害届出は455件であった。この中で被害台数の多かった届出は、XM/Larouxがパソコン300台、100台に感染していたケースがそれぞれ1件あった。
3月の被害届出の詳細は次の通りである。
(a)今月、届出のあったウイルスは29種類であった。届出件数の多いウイルスは、W32/Skaが181件となっている。
初めて届けられたウイルスは、W97M/Ethan(*印)である。
(マクロウイルス192件、従来型265件、1件で複数のウイルス感染届出があるため、合計は届出件数の455件に合致しない。)
項番 |
ウ イ ル ス 名 |
届出件数 |
感 染 し た 機 種 | |||
'99/3 |
IBM機 |
NEC98機 互換機 |
MAC機 | FDのみ | ||
| 1 | XM/Laroux | 110 | ● | ● | − | ● |
| 2 | W97M/Class | 42 | ● | − | − | ● |
| 3 | WM/Cap | 27 | ● | ● | ● | ● |
| *4 | W97M/Ethan | 8 | ● | − | − | ● |
| 5 | W97M/Groov | 2 | ● | − | − | ● |
| 6 | WM/Concept | 1 | ● | − | − | − |
| 7 | XM/Compat | 1 | ● | − | − | − |
| 8 | XM/VCX.A | 1 | ● | − | − | − |
| 9 | W32/Ska | 181 | ● | ● | − | ● |
| 10 | W32/CIH | 34 | ● | ● | − | ● |
| 11 | アンチシーモス | 13 | ● | − | − | ● |
| 12 | フォーム | 4 | ● | − | − | ● |
| 13 | ヤンキードゥードル | 4 | ● | ● | − | ● |
| 14 | カスケード | 3 | − | ● | − | − |
| 15 | ベイジン | 3 | ● | − | − | ● |
| 16 | D3 | 2 | ● | − | − | − |
| 17 | B1 | 1 | ● | − | − | − |
| 18 | DH2 | 1 | − | − | − | ● |
| 19 | J&M | 1 | ● | − | − | − |
| 20 | Pieck | 1 | ● | − | − | − |
| 21 | W32/Marburg | 1 | ● | − | − | − |
| 22 | カンス | 1 | − | − | − | ● |
| 23 | サンポ | 1 | ● | − | − | − |
| 24 | シリーボップ | 1 | − | − | − | ● |
| 25 | ナタス | 1 | − | ● | − | − |
| 26 | パリティenc | 1 | ● | − | − | − |
| 27 | モンキー | 1 | ● | − | − | − |
| 28 | リッパー | 1 | − | − | − | ● |
| 29 | AutoStart9805 | 9 | − | − | ● | − |
注)
1.ウイルス名欄で、XMはExcelMacro、W97MはWord97Macro、WMはWordMacroの略である。
2.W32/は、Windows32ビット実行形式ファイルを感染対象とするウイルスを示す。
3.感染した機種欄の印は、●感染有り、−感染無しである。
4.検査発見及び駆除修復に使われたウイルス対策ソフトを、下記に示す。
※印は、Macintosh機のウイルス対策ソフトを示す。
| 検査発見に使われたソフト名 | 件数 | 駆除修復に使われたソフト名 | 件数 |
| VirusScan | 127 | VirusScan | 97 |
| ウイルスバスター | 122 | ウイルスバスター | 96 |
| InterScan | 46 | Norton AntiVirus | 39 |
| NortonAntiVirus | 41 | InterScan | 13 |
| SWEEP | 10 | SWEEP | 9 |
| F-SECURE(F-PROT) | 9 | F-SECURE(F-PROT) | 6 |
| ScanMail | 6 | ScanMail | 6 |
| WebShield | 6 | GroupShield | 5 |
| GroupShield | 5 | InocuLAN | 3 |
| スキャンワクチン | 3 | XLSCAN.XLA | 3 |
| InocuLAN | 1 | ScanPM | 1 |
| ※NAV for Mac(SAM) | 6 | ※NAV for Mac(SAM) | 9 |
今回、IPAに初めて届出があったウイルスを簡単に説明する。
「W97M/Ethan」(Word97Macro/Ethan)
このウイルスは、マイクロソフト社のWord(以下MSword)を介して感染するウイルスである。
ウイルスに感染した文書を開いて閉じるときに、Cドライブのルートディレクトリに、ethan.___
というファイルを作成し、これにウイルスコードをコピーする。
そして、以降MSWordで作成、更新した文書ファイルを閉じるときに、ethan.___ファイルのウイルスコード
を取り込んで、文書ファイルにウイルスを感染させる。
発病は、文書を閉じるときに、3/10の確率で「文書のプロパティ」の タイトルを"Ethan Frome"に、 作成者を"EW/LN/CB"に、 キーワードを"Ethan"にする。
このマクロウイルスは、MSword97/98の日本語版及び英語版で感染・発病するが、
Macintosh版では感染しない。
(b)届出の感染機種別件数は次のとおりである。一番多い届出は、IBM及びその互換機で、 FDのみの感染及びファイルのみの感染を除く約73%の割合を占めている。
機 種 |
届 出 件 数 |
|||
| '99/3 | '99/1〜3 | '98合計 | ||
| NEC 98機 | 日電 PC-98シリーズ | 35 | 77 | 198 |
| IBM 機 互換機 |
IBM機 | 47 | 72 | 149 |
| 各社 IBM互換機 | 253 | 500 | 1174 | |
| MAC機 | APPLE Macintoshシリーズ | 14 | 30 | 201 |
注)
1.複数機種感染の届出を含む。
2.FDのみの感染及びファイルのみの感染が116件有ったが、表からは除外する。
3.各社IBM互換機には、NEC PC-98NXシリーズを含む。
(c)届出の届出者別件数は次のとおりである。一番多い届出は、一般法人ユーザからのもので、 約73%の割合を占めている。
届 出 者 |
届 出 件 数 |
||
| '99/3 | '99/1〜3 | '98合計 | |
| 一般法人ユーザ | 330 | 646 | 1595 |
| 情 報 産 業 | 41 | 86 | 292 |
| 個 人 ユ ー ザ | 67 | 114 | 75 |
| 教育・研究機関 | 17 | 58 | 73 |
(d)届出の地域別件数は次のとおりである。関東地方が最も多く、続いて近畿地方、中部地方の順となっている。
地 域 |
届 出 件 数 | ||
| '99/3 | '99/1〜3 | '98合計 | |
| 北海道 地 方 | 6 | 12 | 21 |
| 東 北 地 方 | 11 | 40 | 45 |
| 関 東 地 方 | 305 | 575 | 1366 |
| 中 部 地 方 | 37 | 77 | 204 |
| 近 畿 地 方 | 70 | 133 | 200 |
| 中 国 地 方 | 7 | 40 | 95 |
| 四 国 地 方 | 2 | 4 | 33 |
| 九 州 地 方 | 17 | 23 | 71 |
(e)被害届出から感染経路を区分けすると次の表のようになる。メールにより感染したケースが最も多く、 不明を除く約71%の割合を占めている。
感 染 経 路 |
届 出 件 数 | ||
| '99/3 | '99/1〜3 | '98合計 | |
| 外部からの媒体で感染したケース | 54 | 190 | 668 |
| メールにより感染したケース | 277 | 466 | 778 |
| 海外からの媒体で感染したケース | 4 | 10 | 32 |
| 海外からのメールにより感染したケース | 32 | 53 | 48 |
| ネットワークからのダウンロードにより感染したケース | 25 | 44 | 77 |
| 不 明 | 63 | 141 | 432 |
(f)届出のあったウイルスが感染させたパソコンの台数は次のとおりである。感染台数の欄0台は、FDのみの感染またはファイルのみの感染を示し、事前の検査により、パソコンに感染する前にウイルスを発見したものである。
感 染 台 数 |
届 出 件 数 | ||
| '99/3 | '99/1〜3 | '98合計 | |
| 0台 | 116 | 244 | 416 |
| 1台 | 238 | 436 | 1000 |
| 2台以上 5台未満 | 61 | 132 | 373 |
| 5台以上10台未満 | 18 | 42 | 129 |
| 10台以上20台未満 | 13 | 34 | 58 |
| 20台以上50台未満 | 5 | 9 | 39 |
| 50台以上 | 4 | 7 | 20 |
特定日発病ウイルスについて
ウイルスの被害の拡大を防止する意味から、今回は、IPAに届け出されたウイルスの中で、
4月10日〜5月31日に発病する可能性がある主なウイルスを下記に掲げた。
発病してからではデータを破壊される等修復が困難となるので市販のワクチンソフト等を用いて、発病する前に発見・駆除することを望む。(駆除方法についてはIPAまで)
以上