1998年6月5日
情報処理振興事業協会
コンピュータウイルス被害の届出状況について
1.はじめに
●IPA(情報処理振興事業協会・石井賢吾理事長)は、'98年5月のコンピュータウイルス被害の届出状況をまとめた。
●コンピュータウイルスの届出制度は、通商産業省のコンピュータウイルス対策基準('90年4月10日付通商産業省告示第139号、'95年7月7日改訂通商産業省告示第429号、'97年9月24日改訂通商産業省告示第535号)
に基づき、'90年4月にスタートした制度であって、コンピュータウイルスを発見したものは被害の拡大と再発を防ぐために必要な情報をIPAに届出ることとされている。
2.届出の概要
(1)今までの届出状況
届出件数は、'90年4月通産省が告示した「コンピュータウイルス対策基準」に基づいて、IPAが被害の届出機関に指定されてから受理した届出の件数である。
今までの届出件数は7007件となる。次に示す表は、 '96年1月から '98年5月までの被害届出件数の月別推移を表したものである。
〔 届 出 件 数 の 月 別 推 移 〕
月 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
| 98年 | 月別件数 | 248 | 145 | 177 | 133 | 142 | |||||||
| 年別累計 | 248 | 393 | 570 | 703 | 845 | ||||||||
| 全累計 | 6410 | 6555 | 6732 | 6865 | 7007 | ||||||||
| 97年 | 月別件数 | 60 | 57 | 100 | 200 | 230 | 299 | 353 | 214 | 273 | 239 | 232 | 134 |
| 年別累計 | 60 | 117 | 217 | 417 | 647 | 946 | 1299 | 1513 | 1786 | 2025 | 2257 | 2391 | |
| 全累計 | 3831 | 3888 | 3988 | 4188 | 4418 | 4717 | 5070 | 5284 | 5557 | 5796 | 6028 | 6162 | |
| 96年 | 月別件数 | 36 | 85 | 91 | 92 | 52 | 66 | 54 | 35 | 43 | 51 | 93 | 57 |
| 年別累計 | 36 | 121 | 212 | 304 | 356 | 422 | 476 | 511 | 554 | 605 | 698 | 755 | |
| 全累計 | 3052 | 3137 | 3228 | 3320 | 3372 | 3438 | 3492 | 3527 | 3570 | 3621 | 3714 | 3771 | |
注記)'90年(4月〜12月)、'91年、'92年、'93年、'94年、'95年の届出件数は それぞれ 14件、57件、253件、897件、1127件、668件である。
(2)'98年5月の届出状況
5月のコンピュータウイルスの被害届出は142件であった。この中で被害台数の多かった届出は、AutoStart9805(Macintoshに感染する新種ウイルス)が、パソコン30台と外部媒体190枚に
感染したケースが1件あった。
(AutoStart9805については、初めて届出があったウイルスの欄を参照のこと。)
5月の被害届出の詳細は次の通りである。
(a)今月、届出のあったウイルスは19種類であった。届出件数の多いウイルスはマクロウイルスの
ExcelMacro/Larouxが78件となっている。初めて届けられたウイルスは、マクロウイルスのEcxelMacro/Extras、
WordMacro/Kompu、従来型のRage.575、AutoStart9805の4種類(*印)である。
(マクロウイルス 98件、従来型47件、1件で複数のウイルス感染の届出がある為、合計は届出件数の
142件に合致しない。)
| 項番 | ウ イ ル ス 名 | 届出件数 |
感 染 し た 機 種 |
|||
'98/5 |
IBM 機 互換機 |
NEC98機 互換機 |
MAC機 | FDのみ | ||
| 1 | ExcelMacro/Laroux | 78 | ● | ● | − | ● |
| 2 | WordMacro/Cap | 16 | ● | ● | ● | ● |
| 3 | WordMacro/Concept | 2 | ● | − | − | ● |
| *4 | ExcelMacro/Extras | 1 | ● | − | − | − |
| *5 | WordMacro/Kompu | 1 | − | − | − | ● |
| 6 | アンチシーモス | 6 | ● | − | − | − |
| 7 | サンポ | 3 | ● | − | − | − |
| 8 | リッパー | 3 | ● | − | − | ● |
| 9 | モンキー | 2 | ● | − | − | − |
| 10 | カスケード | 2 | − | ● | − | − |
| 11 | フォーム | 2 | ● | − | − | ● |
| *12 | レイジ | 2 | ● | − | − | − |
| 13 | B1 | 1 | − | − | − | ● |
| 14 | ヤンキードゥードル | 1 | − | − | − | ● |
| 15 | D3 | 1 | ● | − | − | − |
| 16 | ベイジン | 1 | ● | − | − | − |
| 17 | 3783 | 1 | ● | − | − | − |
| *18 | AutoStart9805 | 19 | − | − | ● | − |
| 19 | MBDF | 3 | − | − | ● | − |
注)
1.感染した機種欄の印は、●感染有り、−感染無しである。
2.検査発見及び駆除修復に使われたウイルス対策ソフトを、下記に示す。
| 検査発見に使われたソフト名 | 件数 | 駆除修復に使われたソフト名 | 件数 |
| InterScan | 28 | VirusScan | 21 |
| VirusScan | 28 | ウイルスバスター | 19 |
| ウイルスバスター | 22 | Inter Scan | 13 |
| Norton AntiVirus | 10 | XLSCAN.XLA | 11 |
| F-PROT | 9 | Norton AntiVirus | 10 |
| スキャンワクチン | 6 | F-PROT | 8 |
| InocuLAN | 2 | クリーンワクチン | 2 |
| XLSCAN.XLA | 2 | InocuLAN | 2 |
| IBM AntiVirus | 1 | IBM AntiVirus | 1 |
| LANDesk | 1 | ViruSafe | 1 |
| ViruSafe | 1 | Vshield | 1 |
| Vshield | 1 | ||
| SAM | 17 | SAM | 17 |
| Disinfectant | 2 | Disinfectant | 1 |
今回、IPAに初めて届出があったウイルスを簡単に説明する。
「AutoStart9805」(AutoStart9805)
このウイルスは、PowerPC搭載のMac機で動作するウイルスである。HFS(*)または、
HFS Plus形式のディスクボリュームに侵入し、そこから感染を広げる。
ウイルスに 感染しているボリュームをマウントすると、 QuickTimeの自動再生機能により、ル
ートディレクトリィにある、"DB"という名前のウイルスプログラムを実行する。
ウ イルスは機能拡張フォルダに "Desktop Print Spooler"という名前で自分自身の複
製を作成し、コンピュータを再起動する。再起動後、30分毎にマウントされている
全てのボリュームを検索し感染を試みる。また、「.dat」,「.cod」,「.csa」,「.data」
で終わるファイルのデータを破壊しようとする。
(* HFS:Hierarcy File System)
「レイジ」(Rage)
このウイルスは、ファイル感染型でメモリーには常駐しないタイプのウイルスで、
COMMAND.COMを含むCOMファイルに感染する。
システムの日付が13日の時、感染フ
ァイルを実行するとシステムをハングアップさせる。
「XM/Extras」(ExcelMacro/Extras)
このウイルスは、マイクロソフト社のExcel(以下、MSexcel)を介して感染するマ
クロウイルスである。このウイルスに感染したデータファイルを読み込むとそのMSexcelに
感染する。
ウイルスは、XLStartフォルダー内にWindows Extras.xlsファイ
ルを作成し、(マック機にも感染し、システムフォルダー、プレファレンス、Excel
Startupフォルダーに、Macintosh Extrasファイルを作成する。)その後、オープン、
新規作成されたデータファイルに感染する。SAVEやPRINTのツールバーを使えなくす
ることがある。
「WM/Kompu」(WordMacro/Kompu)
このウイルスは、マイクロソフト社のWord(以下、MSword)を介して感染するマク
ロウイルスで、MSword Version 6、7、97(Windows版、Macintosh版)で作動する。
このウイルスに感染したデータファイルを読み込むとそのMSwordに感染する。
毎月、6日又は8日に感染したファイルを開くと、 "Mul on paha
tuju!Tahan kommi!"というメッセージを表示する。
(b)届出の感染機種別件数は次のとおりである。一番多い届出は、IBM及びその 互換機で、FDのみの感染を除く約70%の割合を占めている。
機 種 |
届 出 件 数 |
|||
| '98/5 | '98/1〜5 | '97合計 | ||
| NEC 98機 | 日電 PC-98シリーズ | 14 | 93 | 380 |
| IBM 機 互換機 |
IBM機 | 12 | 68 | 259 |
| 各社 IBM互換機 | 80 | 563 | 1680 | |
| MAC機 | APPLE Macintoshシリーズ | 24 | 44 | 44 |
注)複数機種感染の届出を含む。 FDのみの感染は16件。
(c)届出の届出者別件数は次のとおりである。一番多い届出は、 一般法人ユーザからのもので、約69%の割合を占めている。
届 出 者 |
届 出 件 数 |
||
| '98/5 | '98/1〜5 | '97合計 | |
| 一般法人ユーザ | 98 | 637 | 1338 |
| 情 報 産 業 | 31 | 157 | 687 |
| 個 人 ユ ー ザ | 11 | 34 | 247 |
| 教育・研究機関 | 2 | 17 | 119 |
(d)届出の地域別件数は次のとおりである。関東地方が最も多く、続いて近畿 地方、中部地方の順となっている。
地 域 |
届 出 件 数 | ||
| '98/5 | '98/1〜5 | '97合計 | |
| 北海道 地 方 | 1 | 12 | 55 |
| 東 北 地 方 | 2 | 17 | 108 |
| 関 東 地 方 | 103 | 614 | 1491 |
| 中 部 地 方 | 12 | 79 | 305 |
| 近 畿 地 方 | 18 | 85 | 239 |
| 中 国 地 方 | 3 | 12 | 62 |
| 四 国 地 方 | 1 | 5 | 52 |
| 九 州 地 方 | 2 | 21 | 79 |
(e)被害届出から感染経路を区分けすると次の表のようになる。外部からの媒体で感染 したケースが最も多く不明を除く約51%の割合を占めている。
感 染 経 路 |
届 出 件 数 | ||
| '98/5 | '98/1〜5 | '97合計 | |
| 外部からの媒体で感染したケース | 53 | 241 | 722 |
| メールにより感染したケース | 33 | 345 | 632 |
| 海外からの媒体で感染したケース | 5 | 13 | 61 |
| 海外からのメールにより感染したケース | 4 | 12 | 157 |
| ネットワークからのダウンロードにより感染したケース | 8 | 28 | 37 |
| 不 明 | 39 | 206 | 782 |
(f)届出のあったウイルスが感染させたパソコンの台数は次のとおりである。FD のみの感染は、FDを使用前に検査し、ウイルスを発見したものである。
感 染 台 数 |
届 出 件 数 | ||
| '98/5 | '98/1〜5 | '97合計 | |
| FDのみ感染 | 16 | 129 | 240 |
| 1台 | 86 | 469 | 1050 |
| 2台以上 5台未満 | 22 | 145 | 460 |
| 5台以上10台未満 | 10 | 46 | 200 |
| 10台以上20台未満 | 7 | 29 | 209 |
| 20台以上50台未満 | 1 | 15 | 156 |
| 50台以上 | 0 | 12 | 76 |
特定日発病ウイルスについて
ウイルスの被害の拡大を防止する意味から、今回は、IPAに届出されたウイルスの中で、
6月6日〜7月31日に発病する可能性がある主なウイルスを下記に掲げた。
発病してからではデータを破壊される等修復が困難となるので市販のワクチンソフト等を用いて、発病する前に発見・駆除することを望む。(駆除方法についてはIPAまで)
| アルゼンティーナ | 6月20日、7月9日 |
| DH2 | 3日、11日、15日、28日の火曜日 (※7月28日火曜日が該当日) |
| WordMacro/MDMA | 毎月1日 |
| フリップ(2153) | 毎月2日 |
| WordMacro/Helper | 毎月10日 |
| WordMacro/Bandung | 毎月20日以降 |
| フォーム | 毎月24日 |
| サンデー | 毎週日曜日 |
以上