2000年12月7日
情報処理振興事業協会
情報処理振興事業協会(略称IPA・村岡茂生理事長)は、2000年11月のコンピュータウイルスの発見届出状況をまとめた。
●発見届出件数 史上最多の2203件(10月906件、1月〜11月累計8,331件)
['99年11月 219件、'99年一年間3,645件(月平均約304件)、'99年1月〜11月:3,407件]
['90年4月から2000年11月までの届出総数20,173件]
●発見届出状況
W32/MTXウイルスの発見届出が894件(実際に感染した件数356件)とW32/MTXウイルスの被害が激増し深刻な事態となっている。
11月の届出ウイルスは47種類で、新種ウイルスは「W32/Navidad」 「WYX」の2種類であった。
(1)届出件数は過去最多となった先々月(10月)906件から2203件(2.4倍)に!!
発見届出件数は2203件と、先々月の906件から倍増の過去最多の届出件数になった。また感染実害件数も過去最多の546件となった。(今までの過去最多は99年3月339件)
メールの添付ファイルを不用意に実行しないという感染予防対策を確実に守らなければならない。(2)「W32/MTX」ウイルスの感染被害激増。深刻な事態に!!
「W32/MTX」ウイルスの発見届出が激増し、ウイルスごとの月間件数は過去最多の894件(今までの過去最多は今年5月のLOVELETTERウイルス346件)と、深刻な事態に陥っている。このうち356件と約4割にも及ぶ高い比率で感染実害を受けた旨の報告があった。ウイルス110番への問合せも数多く寄せられている。世界的にも感染被害が急増しているウイルスである。
このウイルスは、ユーザが感染パソコンからメールを送信すると、ウイルスが同じ宛先にウイルス自身を添付した2通目のメール(件名も本文もなし)を送信する。知人や友人からのメールとして届く場合が多く、受け取った人は、何の疑問も持たずに2通目の添付ファイルを開けてしまい感染するケースが極めて多くなっている。
ひとたび感染被害に遭うと、確実な修復のためには、ハードディスクを初期化して、Windowsシステムの再インストールをする必要があり、さらにデータの復元には多大な労力を要し、被害は深刻である。(3)新種ウイルス「W32/Navidad」ウイルスに注意!!
メールの添付ファイルとして広がり、感染するとアプリケーションソフトが使用できなくなる新種ウイルス「W32/Navidad」の届出が月間437件と急速に蔓延しつつあるので注意されたい。「Navidad」は、スペイン語で「クリスマス」の意味。
クリスマスの挨拶に見せかけるなど時節柄だまされやすいウイルスの出現にも要注意。
参考:「新種ウイルス「W32/Navidad」に関する情報」
届出件数の感染経路の94%がメール経由で占められている。感染ファイルをクリックしてからでは遅すぎる。添付ファイルを習慣的にそのまま開くユーザが感染被害に遭う。感染被害防止のため、メールの添付ファイルは開いて良いか常に疑うことが重要である。
参考:「メールの添付ファイルの取り扱い5つの心得」

今月、届出のあったウイルスは47種類であった。届出件数の多いウイルスは、W32/MTXが894件、W32/Navidad が437件となっている。初めて届けられたウイルスは、「W32/Navidad」「WYX」の2種類である。(マクロウイルス及びスクリプトウイルス699件、
Windows、DOSウイルス1503件、Macウイルス1件)
| マクロウイルス | 届出件数 | スクリプトウイルス | 届出件数 |
| X97M/Divi | 120 | VBS/LOVELETTER | 314 |
| XM/Laroux | 90 | Wscript/KakWorm | 43 |
| W97M/Marker | 22 | VBS/Netlog | 3 |
| W97M/Ethan | 15 | VBS/Stages | 2 |
| W97M/X97M/P97M/Tristate | 12 | VBS/Freelink | 1 |
| W97M/Class | 10 | VBS/NewLove | 1 |
| W97M/Thus | 10 | Windows、DOSウイルス | 届出件数 |
| W97M/Melissa | 8 | W32/MTX | 894 |
| W97M/Opey | 8 | W32/Navidad(※) | 437 |
| WM/Cap | 6 | W32/QAZ | 69 |
| X97M/Barisada | 6 | W32/Ska(Happy99) | 40 |
| XM/VCX.A | 4 | W32/PrettyPark | 19 |
| W97M/JulyKiller | 3 | W32/CIH | 13 |
| W97M/Myna | 3 | W32/Funlove | 13 |
| W97M/Smac | 3 | W32/Kriz | 7 |
| W97M/Bablas | 2 | Anti-CMOS | 3 |
| W97M/Prilissa | 2 | Form | 3 |
| W97M/Walker | 2 | Cascade | 1 |
| XF/Sic | 2 | StealthBoot | 1 |
| XM/Extras | 2 | WYX(※) | 1 |
| W97M/Locale | 1 | W32/Fix2001 | 1 |
| W97M/Nsi | 1 | W32/Marburg | 1 |
| W97M/Story | 1 | ||
| W97M/Titch | 1 | Macintoshウイルス | 届出件数 |
| WM/Niceday | 1 | MBDF | 1 |
注) ウイルス名欄で、各記号はそれぞれの下記ウイルスを示す。
| 記号 | 対象ウイルス |
| WM | MSword95(WordMacroの略) |
| W97M | MSword97(Word97Macroの略) |
| XM、XF | MSexcel95、97(ExcelMacro、ExcelFormulaの略) |
| X97M | MSexcel97(Excel97Macro) |
| W97M/X97M/P97M | MSword97、MSexcel97、MSpowerpoint97(Word97Macro、Excel97Macro、PowerPoint97Macroの略) |
| W32 | Windows32ビット環境下で動作 |
| VBS | VisualBasicScriptで記述 |
| Wscript | WindowsScriptingHost環境下で動作(VBSを除く) |
11月の届出の中で、検査発見・駆除修復に使われたウイルス対策ソフト及びベンダーを参考に示す。
| 検査発見・駆除修復に使われたウイルス対策ソフト | |
| ソフト名(届出受付順) | ベンダー名 |
| Inter Scan | トレンドマイクロ(株) |
| ウイルスバスター | トレンドマイクロ(株) |
| Virus Scan | 日本ネットワークアソシエイツ(株) |
| NortonAntiVirus | (株)シマンテック |
| F-SECURE(F-PROT) | (株)山田洋行 |
| ServerProtect | トレンドマイクロ(株) |
| Sophos AntiVirus | (株)シー・エス・イー |
| Net(Group) Shield | 日本ネットワークアソシエイツ(株) |
| Inoculan(Cheyenne) | コンピュータ・アソシエイツ(株) |
(1)11月にIPAに初めて届け出のあったウイルスの概要を記述する。
W32/Navidad
このウイルスは、メールの添付ファイルとして拡がるワームである。このウイルスは受信トレイにある古いメール(添付ファイルが1つ付いたメール)を再利用して、当該メールのTOに書かれているアドレス宛に、元の添付ファイルをウイルス自身のファイル(Navidad.exe)に添付し直してメールを送信することにより、感染を広げる。
このため、通常、知り合いからのメールとして届き、内容も意味のある(かつて来たものと同じ)ものであるため、ウイルスメールと気づかずに、うっかり添付ファイルをクリックしてしまうというトリックに引っかかることで感染する。
感染すると、アプリケーションソフトが使用できなくなる。
WYX
常駐型でディスクのブートセクタに感染するウイルスである。
感染したディスクで起動するとウイルスはメモリに常駐する。ウイルスが常駐した状態でアクセスされたフロッピーディスクに感染する。
IBM機及びIBM互換機のみ感染する。発病はない。
(2)届出の届出者別件数は次のとおりである。一番多い届出は、一般法人ユーザからのもので、約84%を占めている。
届 出 者 |
届 出 件 数 |
|||||
| 2000/11 | 2000/1〜11 | '99合計 | ||||
| 一般法人ユーザ | 1853 | 84.1% | 7551 | 90.6% | 2859 | 78.4% |
| 情 報 産 業 | 9 | 0.4% | 94 | 1.1% | 203 | 5.6% |
| 教育・研究機関 | 48 | 2.2% | 117 | 1.4% | 227 | 6.2% |
| 個 人 ユ ー ザ | 293 | 13.3% | 569 | 6.8% | 356 | 9.8% |
(3)届出の地域別件数は次のとおりである。関東地方が最も多く、続いて中部地方、近畿地方の順となっている。
地 域 |
届 出 件 数 | |||||
| 2000/11 | 2000/1〜11 | '99合計 | ||||
| 北海道 地 方 | 25 | 1.1% | 58 | 0.7% | 34 | 0.9% |
| 東 北 地 方 | 28 | 1.3% | 80 | 1.0% | 89 | 2.4% |
| 関 東 地 方 | 1788 | 81.2% | 7041 | 84.5% | 2476 | 67.9% |
| 中 部 地 方 | 166 | 7.5% | 495 | 5.9% | 293 | 8.0% |
| 近 畿 地 方 | 132 | 6.0% | 489 | 5.9% | 547 | 15.0% |
| 中 国 地 方 | 21 | 1.0% | 55 | 0.7% | 107 | 2.9% |
| 四 国 地 方 | 6 | 0.3% | 24 | 0.3% | 25 | 0.7% |
| 九 州 地 方 | 37 | 1.7% | 89 | 1.1% | 74 | 2.0% |
(4)届出から感染経路を区分けすると次の表のようになる。海外からのメールも含めたメールにより感染したケースが最も多く、届出件数の約94%を占めている。
感 染 経 路 |
届 出 件 数 | |||||
| 2000/11 | 2000/1〜11 | '99合計 | ||||
| メール | 1268 | 57.6% | 4508 | 54.1% | 2175 | 59.7% |
| 海外からのメール | 803 | 36.5% | 2912 | 35.0% | 268 | 7.4% |
| ダウンロード | 11 | 0.5% | 73 | 0.9% | 195 | 5.3% |
| 外部からの媒体 | 20 | 0.9% | 342 | 4.1% | 589 | 16.2% |
| 海外からの媒体 | 2 | 0.1% | 3 | 0% | 22 | 0.6% |
| 不 明 | 99 | 4.5% | 493 | 5.9% | 396 | 10.9% |
(5)届出のあったウイルスが感染させたパソコンの台数は次のとおりである。感染台数の欄0台は、FDのみの感染またはファイルのみの感染を示し、事前の検査により、パソコンに感染する前にウイルスを発見したものである。
感 染 台 数 |
届 出 件 数 | |||||
| 2000/11 | 2000/1〜11 | '99合計 | ||||
| 0台 | 1657 | 75.2% | 6677 | 80.1% | 1692 | 46.4% |
| 1台 | 451 | 20.5% | 1203 | 14.4% | 1316 | 36.1% |
| 2台以上 5台未満 | 67 | 3.0% | 315 | 3.8% | 401 | 11.0% |
| 5台以上10台未満 | 19 | 0.9% | 82 | 1.0% | 122 | 3.3% |
| 10台以上20台未満 | 5 | 0.2% | 26 | 0.3% | 64 | 1.8% |
| 20台以上50台未満 | 1 | 0% | 13 | 0.2% | 33 | 0.9% |
| 50台以上 | 3 | 0.1% | 15 | 0.2% | 17 | 0.5% |
特定日発病ウイルスについて
ウイルスの被害の拡大を防止する意味から、今回は、IPAに届出されたウイルスの中で、12月7日〜1月31日に発病する可能性がある主なウイルスを下記に掲げた。(参考:特定日発病ウイルス[ウイルスカレンダー]
)
発病してからではデータを破壊される等修復が困難となるので市販のワクチンソフト等を用いて、発病する前に発見・駆除することを望む。(駆除方法についてはIPAまで)
| W97M/Prilissa | 12月25日 |
| W32/Kriz | 12月25日 |
コンピュータウイルスに関する届出制度は、通商産業省のコンピュータウイルス対策基準に基づき、'90年4月にスタートした制度であって、コンピュータウイルスを発見したものは被害の拡大と再発を防ぐために必要な情報をIPAに届け出ることとされている。
IPAでは、個別に届出者への対応を行っているが、同時に受理した届出等を基に、コンピュータウイルス対策を検討している。また受理した届出は、届出者のプライバシーを侵害することがないように配慮した上で、被害等の状況を分析し、検討結果を定期的に公表している。
○コンピュータウイルス対策基準
・通商産業省告示第139号 平成2年4月10日制定
・通商産業省告示第429号 平成7年7月 7日改訂
・通商産業省告示第535号 平成9年9月24日改訂