| ネットワーク WG Request for Comments: 3935 BCP: 95 分類: Best Current Practice |
H. Alvestrand |
IETF の使命についての言明
(A Mission Statement for the IETF)
このメモの位置づけ
この文書は、インターネットの「現時点における最善の実践(ベストカレントプラクティス)」を示すものであり、改善するために議論と示唆を求めるものです。このメモの配布に制限はありません。
著作権表記
Copyright (C) The Internet Society (2004).
要旨
このメモは、IETF の使命について言明し、その「使命についての言明」を理解可能かつ有用にするために、言明において使われる用語を十分に定義することを試み、「なぜ、IETF は、使命についての言明を必要とするか?」を論じ、ここに至った議論のいくつかを捕捉することを試みます。
IETF の目標は、インターネットがより良く機能するようにすることです。
IETF の使命は、人々がインターネットをより良くするようなやり方で、設計・利用・管理する方法に影響を与える高品質な関連する技術的な文書およびエンジニアリング文書を作成することです。これらの文書には、プロトコル標準、現時点における最善の実践(ベストカレントプラクティス)および様々な種類の情報提供文書が含まれます。
IETF は、下記の基本原則を支持して、この使命を追求します。:
オープンなプロセス(Open process)-
あらゆる関心ある人は、作業に参画でき、何が決定されているのかを知ることができ、その論点について彼もしくは彼女の意見を述べることができます。この原則の要素には、我々の文書を作成するための我々のコメント、我々の WG メーリングリスト、我々の参加者リスト、および、インターネット上に開示されている我々の会合議事録があります。
技術的な適性(Technical competence)-
IETF が文書を策定する論点は、IETF がそれについて語るのに要する適性をもつ論点であり、IETF が技術的に適性ある情報入力を、あらゆる源泉から聴くことを望んでいる論点です。技術的な適性は、「我々は、IETF の情報発信が健全なネットワークエンジニアリング原則に則って設計されることを期待すること」も意味します。これは、しばしば、「エンジニアリング品質」とも呼ばれます。
ボランティアによるコア(Volunteer Core)-
我々の参画者と我々の指導者は、「インターネットをより良くする」という IETF の使命を推進する作業をしたいがために IETF にやってきた人々です。
ラフなコンセンサスと動作するコード(Rough consensus and running code)-
我々は、我々の仕様を実装して配備する際に、我々の関係者と、我々の現実世界の経験が組み合わされたエンジニアリング判断に基づいて標準を策定します。
プロトコルの所有権(Protocol ownership)-
IETF がプロトコルもしくは機能の所有権を得るとき、観点によっては、これは、インターネット上ではほとんど(あるいは、まったく)使われない可能性がありますが、そのプロトコルのすべての観点についての責任を受容します。逆に、IETF がプロトコルもしくは機能について責任を負わないとき、しばしば、これは、インターネットに関連(あるいは影響)する可能性がありますが、それについて、コントロールしようとは試みません。
使命(Mission):
組織体の意義を設定するもの。これは、目標(「その使命を満たすことによって何を達成しようと望んでいるか?」)および活動(「その使命を達成するために、どのような具体的な活動を行うか?」)と対照的です。
インターネット(The Internet):
相互接続されたシステムの大きく、異質なものから成る集合体です。これは、インターネットに接続されたあらゆる主体間の多くのさまざまな種類のコミュニケーションに使われる可能性があります。この用語は、「コアインターネット(ISP ネットワーク)」と「エッジインターネット(しばしば、ファイアウォール、NAT ボックス、アプリケーションレイヤーゲートウェイおよび同様なデバイス経由で接続された企業ネットワークおよびプライベートネットワーク。)」の両方を含みます。インターネットは、真にグローバルなネットワークであり、ほとんど世界のすべての国に達します。IETF コミュニティは、インターネットが存続することを望みます。なぜなら、我々は、「インターネットの存在、および、その経済、コミュニケーション、教育への影響力は、より良い人間社会を築くのに役立つ」と信じているからです。
標準(Standard):
ここで使われているように、この用語は、あるプロトコルの仕様、固有な識別子をもつシステムのふるまい、もしくは手順を記述します。そして、ここで、IETF が「あなたが、これを行いたい場合、これは、そのやり方についての記述である」ということを許諾した旨を記述します。これは、IETF による、いかなる「利用の強要」、もしくは、いかなる、その用法を取り締まる試みをも意味するものではありません。「あなたが『この標準に従って行っている』という場合、このやり方で行う」のみです。インターネットについての標準の便益は、相互運用可能性(interoperability)です。これは、「ある標準を実装している複数の製品が、価値ある機能をインターネットのユーザに提供するために協調動作できる」ということです。
関係者(Participants):
IETF のプロセスに参画する個人は、「IETF の組織体」と「IETF の作業」の基礎的な単位です。IETF は、「プロセスは、 団体、企業、政府機関、もしくは利害関係者を単位とするよりも、人々を単位とするとき、最もうまく機能すること」を発見しました。これは、「それらの多の主体は、関係者ではないこと」を意図するのではなく、「彼らは、IETF を構成する単位ではないこと」を意図します。
品質(Quality):
ここでは、「規定内容は、それを検証するためにシステムを構築するすべての人々が、何とか理解可能なものである」というアイディアを十分に明確に表現する能力と、システム設計の重要な結末を理解するために当該システムの属性を十分に記述して、それらの結末がインターネット全体にとって有益であることを確認する能力(および意思)をいいます。これは、「仕様の意図された目的のため利用がインターネット全体にとって、効果的かつ無害となるように、その仕様は、健全なネットワークエンジニアリング原則に則って設計されること」も意味します。
関連する(Relevant):
ここでは、インターネットに影響を与える意思決定をしなければならないある種のグループの人々にとって有用であること。これは、ハードウェアとソフトウェアの実装者、ネットワーク構築者、ネットワーク運用者およびインターネットのユーザを含みますが、これらに限られません。「これは、『正しい(correct)』とか『支持する(positive)』ということを意味するものではないこと」に注意してください。失敗した実験についての報告、もしくは、「なぜ、あなたは、一定の状況において、それを使ってはいけないのか?」を明記している仕様は、「してはならないこと」を判断することと高度に関連している可能性があります。
「関連する」ということの要素には、適時性があります。よくあることですが、核心の意思決定が行われた 1年後に配布される文書は、有用性において、検討時間に意思決定者が利用可能な文書より、はるかに劣ります。
IETF は、意思決定をしなければなりません。そして、場合によっては、IETF を代表してふるまう人々は、先に IETF 全体に相談することなく意思決定しなければなりません。
これには、多くの理由があり、短時間で複雑な課題について、数千人から成るコミュニティから共通認識としての意見を得ることは、ほとんど不可能であることが含まれます。
定義された使命をもつことは、代替案を評価するために採用可能なステップのひとつです。: 「これは、その使命について役立つものか、あるいは、妨げるものか?」あるいは「これは、直交してしまっているのか?」。資源が限られている場合、その使命について、より有用な調査可能な事項は、無いのか ?
(別のステップは、「良い判断を行い、正しいことを行う」と我々が信用するリーダーを選任することです。ただし、我々は、既にそれを行うことを試みています。)
4. IETF の使命の範囲を確定することについての論点 English
「IETF の使命」の検討における非常に困難な論点は、「インターネットについて」という用語の範囲でした。インターネットは、多くのことのために使われており、その多くについては、IETF コミュニティは、標準を策定する関心も適性もありません。インターネットは、価値中立(value-neutral)ではなく、IETF も、そうではありません。我々は、インターネットが「オープンさ」と「公平さ」についての我々の公約を共有するコミュニティにとって有用となることを望みます。我々は、「非集中管理型(decentralized)コントロール」、「エッジユーザに権能を与えること」、「資源の共有」のような技術的な概念を進んで受け入れます。なぜなら、それらの概念は、IETF コミュニティの核となる価値(core value)と共に、響き渡っているからです。これらの概念は、「可能な技術」とは、あまり関係が無く、「我々が開発することを選択した技術」と深く関係しています。
同時に、「IETF が規定した技術の多くは、インターネット用に有用であるのみならず、インターネット自体とは直接は無関係なネットワーク用にも有用であること」は、明らかです。
IETF の範囲の疑問を解く試みとして、おそらく、最も公平なバランスは、この公式によって得られます。: 「インターネット上において広範な配備と相互運用がなされるようにするため、もしくは、インターネットのインフラストラクチャの部分を形成するために、セキュアかつ拡張性ある実装が期待されるプロトコルと実践。」
この制約に加えて、我々は、「適性の原則」によっても制約されています。: 我々が、技術的に健全な標準を策定するのに必要な適性をもたず、集められないとき、我々は、そのリーダーシップをとることを試みてはいけません。
IETF は、伝統的に、完全には解明されていない事項についての実験、何らかの解明がなされたプロトコルの標準化、そして、もともと、IETF 標準化過程の外で規定されたプロトコルの発行(と改良)のためのコミュニティでした。
これらの活動のすべては、「文書を作成すること」に共通性があります。しかし、その文書は、発行時刻がさし迫っているとき、非常に困難なクライテリアによって判断される必要があり、人々が「どの文書が、どの分類に属するか?」について困惑しているのを見かけることは、よくあることです。
「これらの活動は、IETF において行われる必要があるか否か?」を判断する際に、人は、活動の種類ばかりを見てはいけません。インターネットに対する潜在的な便益を考えます。「あるアプローチは実現不能である」ということについての情報を生む実験は、技術的に適性ある標準を発行することよって、インターネットに、より大きな便益をもたらす可能性がありますが、少数の特別な場合においてのみ、有用です。
本質的に際限が無く、成功の確率は未知である研究については、「標準化グループ」ではなく「研究グループ」の憲章を書くことに関連している可能性があります。(より良いプロトコルを標準化するために、実験によって識別できる箇所を指摘するいくつかの代替的なプロトコルを規定することのような)範囲が確定している活動については、IETF の WG メカニズムは、適切なツールである可能性があります。
使命は、「何を IETF は、達成しようとしているか?」を宣言することを意図されています。これらの目標を達成するために選択可能な多くの手法があります。例えば、アピールについての手順は、技術的な適正とオープンなプロセスについての我々の基礎的な原則が侵害されている場合を我々が検出できるように規定されています。これ自体は、基礎的な価値ではありません。
同様に、「IETF の誰が『文書の発行準備ができている』と宣言するか?」という質問は、全く「使命についての言明」の範囲外です。たとえ、その使命を達成する能力に顕著な影響を与える可能性があっても、「IETF の使命は、何であるか?」に何らかの影響を与えること無く、我々は、それを変更することを想像できます。
インターネットは、グローバルな社会現象です。その進展に関心がある人々は、太陽の下のすべての文化圏から来ており、すべての職階から来ています。IETF は、技術的な適性、ラフなコンセンサス、および、個人単位の参画を強調し、あらゆる源泉からの適性ある入力に対してオープンである必要があり ます。IETF が、その作業に英語を使うことは、そのグローバルな文脈で働くための便宜に起因します。
IETF の適性ある領域を決める問題に類する問題ですが、明確に IETF が扱う範囲内にあるプロトコルがインターネット上とインターネット以外の両方に使われているとき、その主要な例は、当然ながら、インターネットプロトコル自体です。
しばしば、IETF は、結局は大部分がグローバルなインターネット以外において利用されると見受けられる標準を規定します。これまで標準を規定してきた IETF は、そのプロトコルの必要不可欠な運用管理を提供し続けます。
しばしば、IETF は、 他の組織体によって規定されて維持管理されている標準をテコとします。我々は、それらの標準について、それらの組織体と共に、働き続け、それらを得ることを試みたりしません。
セキュリティを考慮することは、インターネットについての健全なネットワークエンジニアリングの核となる原則のひとつです。 とはいえ、それは、このメモとは無関係です。
本書は、長時間にわたる議論、継続的なレビュー、際限のない電子メールの成果です。それゆえ、どのように謝辞の章を書いても、不完全なものとなってしまいます。
情報入力してくれた多くの人々というのは、IESG の現在のメンバー(Alex Zinin, Allison Mankin, Bert Wijnen, Bill Fenner, David Kessens, Jon Peterson, Margaret Wasserman, Russ Housley, Scott Hollenbeck, Steve Bellovin, Ted Hardie, Thomas Narten)と、最近の IESG メンバー(Ned Freed, Randy Bush, Erik Nordmark)と共に、複数の IAB メンバー、および、コミュニティからの多くのメンバー(James Polk, John Klensin, Pekka Savola, Paul Hoffman, Eliot Lear, Jonne Soininen, Fred Baker, Dean Anderson, John Leslie, Susan Harris, and many others)でした。 特に、IAB チェアである Leslie Daigle には、感謝しています。
Harald Tveit Alvestrand
Cisco Systems
Weidemanns vei 27
Trondheim 7043
NOEMail: harald@alvestrand.no
翻訳者のアドレス
宮川 寧夫
独立行政法人 情報処理推進機構
セキュリティセンター
EMail:miyakawa@ipa.go.jp
Copyright (C) The Internet Society (2004).
This document is subject to the rights, licenses and restrictions contained in BCP 78, and except as set forth therein, the authors retain all their rights.
This document and the information contained herein are provided on an "AS IS" basis and THE CONTRIBUTOR, THE ORGANIZATION HE/SHE REPRESENTS OR IS SPONSORED BY (IF ANY), THE INTERNET SOCIETY AND THE INTERNET ENGINEERING TASK FORCE DISCLAIM ALL WARRANTIES, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING BUT NOT LIMITED TO ANY WARRANTY THAT THE USE OF THE INFORMATION HEREIN WILL NOT INFRINGE ANY RIGHTS OR ANY IMPLIED WARRANTIES OF MERCHANTABILITY OR FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE.
The IETF takes no position regarding the validity or scope of any Intellectual Property Rights or other rights that might be claimed to pertain to the implementation or use of the technology described in this document or the extent to which any license under such rights might or might not be available; nor does it represent that it has made any independent effort to identify any such rights. Information on the IETF's procedures with respect to rights in IETF Documents can be found in BCP 78 and BCP 79.
Copies of IPR disclosures made to the IETF Secretariat and any assurances of licenses to be made available, or the result of an attempt made to obtain a general license or permission for the use of such proprietary rights by implementers or users of this specification can be obtained from the IETF on-line IPR repository at http://www.ietf.org/ipr.
The IETF invites any interested party to bring to its attention any copyrights, patents or patent applications, or other proprietary rights that may cover technology that may be required to implement this standard. Please address the information to the IETF at ietf-ipr@ietf.org.
謝辞
Funding for the RFC Editor function is currently provided by the Internet Society.