5.4 リモートアクセス業務標準の設定
 リモートアクセス環境においても、業務に使用される情報資産は組織内の情報資産の一部になります。これらの情報資産へのアクセスの権限を明確にして業務標準として文書化しておくことにより、責任と権限が明確になり、セキュリティ事件や事故の発生を抑えることができます。
 
5.4.1 情報資産の分類とアクセス権の設定
1) 情報資産の分類

 組織内には保護すべきいろいろな情報や資産があります。例えば、サーバー内に格納されている各種のデータ類や書棚に保管されている紙の文書類などが考えられます。特にリモートアクセスという観点からは、保存用CD-ROMやDVD等の媒体、顧客への説明に使うデータを保存したUSBメモリなどもあります。これらを洗い出して、その特徴や保管責任者、保管形態、保管期間、廃棄方法などについて分類して整理すると、持ち出しに関してどう対応するか、それぞれをどのように管理するか、どのように保護すべきかがわかります。
 
分類の方法としては以下の分類が考えられます。特徴はリモートアクセス環境という観点から述べています。

分類

内容

特徴

実例

電子データ

サーバーなどに電子的に保存されている情報

 

ネットワークからアクセス可能であり、不正アクセス、情報漏えい、情報改ざんのターゲットになりやすい

個人情報、経理データ、営業データ、設計データなど各種電子データ

媒体情報

容易に持ち運びができる媒体(装置)に格納されている情報

持ち出しが容易であり、盗難や紛失の可能性が高い

携帯電話、USBメモリ、CD-ROM、ノートパソコンなど

文書情報

紙などに印刷された情報

持ち出しが容易であり、一目でその内容が見える

印刷された名簿、決算報告書などの印刷物

情報機器

情報を格納した機器類

機器そのものの価値でなく、それに格納されている情報の価値で重要度が異なる

デスクトップパソコン、サーバー、など

 

また、管理されるべき属性には以下が考えられます。

・ 重要度(機密性、完全性、可用性の観点から)
・ 使用部門、使用場所、管理部門
・ 保管者(あるいは管理者)
・ 保管方法(電子データか文書データか)
・ 保管場所(サーバーやパソコン、鍵付き書棚など)
・ 保管期間
・ 廃棄方法(電磁的な破壊、物理的な破壊、焼却など)

情報と管理項目の例

 

顧客名簿

社員名簿

就業規則

重要度

関係者外秘

社外秘

社外秘

使用部門

営業部

全部門

全部門

使用場所

オフィス内

オフィス内、オフィス外

オフィス内、オフィス外

管理部門

営業部

総務部

総務部

保管者(管理責任者)

営業課長

総務部長

総務部長

保管方法

電子データ

CD−R媒体

保管場所

サーバー内

書庫A

書棚B

保管期間

顧客期間中

更新後1年間

更新後1年間

廃棄方法

上書き

物理的破壊

シュレッダー

 

2) アクセス権の設定

分類された情報資産はその重要度に応じたアクセス権の設定が必要です。アクセス権は電子データの場合はサーバー内のデータへのアクセス、更には更新または変更の権利であり、文書情報の場合は閲覧する権利などになります。分類された情報資産に対してアクセス権を設定し、その取り扱い手順を明確にし、そのとおり実行することが重要です。
 例えばアクセス権と取り扱い手順の例は以下のようになります。
 

資産分類

重要度

(機密性)

アクセス権

取り扱い手順

電子データ

極秘

経営陣のみアクセス可

暗号化して保存
サーバー外へのコピー禁止
許可された人以外変更は禁止

部外秘

部門内のメンバーのみアクセス可
変更は管理職のみ可

サーバー外へのコピーは許可制
社外への持ち出しは禁止

社外秘

正社員のみアクセス可

社外への公開は禁止
社外への持ち出しは許可制で内容は暗号化する

文書類

極秘

経営陣のみ閲覧可

鍵付き書庫に保存しカギは社長が持つ
閲覧は許可制で記録する
コピー禁止

部外秘

部門内メンバーのみ閲覧可

鍵付き書庫に保存し、カギは部門長が保管
コピーは許可制で用済み後シュレッダー処理
社外持ち出し禁止

社外秘

正社員のみ閲覧可

カギなし書庫に保管
社外への持ち出しは許可制
コピー可だが用済み後シュレッダー処理


 

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5.4.2 リモートアクセス業務標準の設定

リモートアクセス業務内容や情報セキュリティに関する行動について標準化を行い、それらを規定として文書化することにより、リモートアクセス環境でのセキュリティインシデントの発生を抑えることができます。また、標準が規定として文書化されていることにより、事件・事故などの検知が早くなるとともに、違反の事実が明確になり、適切な対処が可能となります。
 リモートアクセス環境において標準化・規定化すべき代表的な項目として以下のものがあります。
@ 標準化すべき手順

・ リモートアクセス機器のログイン手順
・ 機器の障害時の再立ち上げ手順
・ バックアップ手順
・ 日常の点検項目
など
A 規定しておくべき行動基準
・ リモートアクセス業務に関する責任と権限
・ セキュリティに関する責任と権限
・ リモートアクセスによるアクセス権限
・ セキュリティインシデント時の報告ルート
など
B 文書化しておくべき情報
・ リモートアクセスで利用可能な情報資産一覧表
など
 

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