本節では故障利用解析の実現可能性と対策についてまとめる.
以上説明してきたように故障利用解析は,攻撃者が望む一過性の故障を ICカードに的確に与える必要がある.
故障利用解析では,鍵などの情報を保持しているメモリの物理的な位置の把握と 改竄が必要となる.耐タンパーデバイスに対してこのような高度な改竄が可能で あるならば,同様にプローブ解析なども不可能ではないと思われる. また,故障利用解析ではICカードを利用できる状態に保ったまま攻撃を行わなけ ればならないため,いくつか技術的課題をクリアしなければならない. たとえば,レーザ照射などはカードにチップが搭載された状態のまま行えなけれ ばならない.また,その他の技術的課題をいくつか挙げると
対策としては,プローブ解析への対策と同様の対策が有効である. 外界からの影響を取り除くため, 周波数検知回路,電圧検知回路,温度検知回路などを搭載し, 誤動作を引き起こす異常な環境での使用を許さないなどの対策 が必要である. また,レーザによる任意の回路形成や破壊などを防ぐには 多層配線など耐タンパー技術が有効である.
内蔵プログラムに関しては,故障利用解析は 内部状態や中間データを保持するメモリへの攻撃を行うため, その処理固有のワーク領域の使用を避けることも有効であ る.ワーク領域を共有することにより,特定の処理以外に も改竄の影響を波及させ,正常なICカードとしては利用で きなくする効果もある.
共通鍵暗号に関しては,鍵スケジュール部の処理を 事前に行い拡大鍵を保持する方法よりも,旧来のRAM領域の少ない ICカード等で用いられていたon-the-fly鍵生成の方が解析が困難となる. 拡大鍵をROMに保持することは避ける方が望ましい.
また,実装についてICカード設計者は,RAMの若いアドレス に重要な情報を配置する傾向があるとの指摘がある [And96].後方のアドレスはスタック領域として用いられ るため,自ずと前方に変数などが配置されることが多いと 思われるが,安全性を高めるために対応が望まれる.