4.無権限アクセス法制を検討する際の視点
これまで、日本のコンピュータ犯罪関連の法律を紹介してきた。
この中で、無権限アクセス規制の現状を理解していただけるものと思う。
次に、今日、求められている法制についてその要件と視点を整理したい。あらゆる法律に求められる基本的なこととして、正当な保護法益・趣旨をもつものである必要がある。
サミットの要請であるからといって、いたずらに、法執行機関の捜査の都合が優先し、 罰するがための法律を求めてはならないと考える。また、今日的要請として、国際捜査共助が可能となる法律が求められている。
国際捜査共助が動くこと
そのためには、どのような法律が必要となるかを明らかにするためには、先進諸外国がもつ法律を調査する必要がある。
先進諸外国は、「のぞき見」に相当する行為に対しても、刑事罰が課されるようになっている。
刑法典以外の行政法規で罰則規定を設けても、外交ルートの捜査共助が動くかは疑問である。
実際に問題となる典型事例を想定してみる。
インターネットを利用して、日本から、あるいは日本にあるサイトを踏み台にして、 日本以外のサミット参加国にあるサイトに無権限アクセスがなされ、極めて重要な情報が盗まれたとする。
この際、何らの改ざん行為、破壊行為はなかったとしたら、双罰性の原則から、 日本には同様の法律が存在しないことから正規の捜査共助は行えない。
たとえ行政法規により何らかの可罰化がはかられたとしても、今日の捜査共助法のもとで 捜査共助を行える根拠となる法律となるかどうかは明らかでない。一方、公式な外交ルート以外にも、法執行機関(警察)当局同士が捜査協力を行う、ICPO ルートもある。
こちらの方も合わせて、国際的な捜査の連携や犯人の引き渡しなどが動く根拠となる法律が整備される必要がある。実際に、捜査共助がこのような場合において動くようにするためには、 他のサミット参加国と同等にネットワーク経由の電磁的な情報の窃盗を刑法典で可罰化できるようにするとともに、 国際捜査共助法も見直す必要があると思われる。
残念ながら我が国において刑事訴訟法は研究者が少ない分野である。調査作業の第一歩としてUSA、UK、ドイツで適用される法律について調査した。
基本的に、国民が合意できる正統な保護法益がある規定が求められるが、 何を守るのかについては、複数のアプローチが考えられる。
最終的に、情報窃盗が可罰となる結果を得るのにも、諸外国の規定方法を 3カ国調べただけでも、それらの保護法益には大きな差異があった。
アクセスされる対象となるサイトにも 国民生活に重大な影響を及ぼす可能性がある重要インフラストラクチャを構成する情報システムもあれば、 個人で運用管理されているサイトもある。