1.経緯と無権限アクセス法制の必要性
今日、我が国の無権限アクセス法制の必要性の議論のきっかけは、サミットの採択事項にある。
各国は、国際組織犯罪対策の位置づけで、ハイテク犯罪について、取り組むことになった。
無権限アクセス法制は、国家間で国際的な捜査の共助を行えるようにする際の前提条件を築くものである。
下記の URL を参照のこと。http://www.state.gov/www/issues/economic/summit/communique97.html
デンヴァー サミットのコミュニケから該当の部分を抜粋する。
国際組織犯罪( Transnational Organized Crime ) |
8 カ国 司法・内務閣僚級会合 コミュニケ
国際捜査共助の必要性が記述されている。http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/economy/summit/birmin98/hitech.html
法制の必要性に関する部分を赤字で強調して示す。
8 カ国 司法・内務閣僚級会合 コミュニケ 8カ国デンヴァー・サミットにおいて、各国政府の首脳は、我々の市民の個別的及び
総体的な安全を一段と脅かしつつある国際組織犯罪と闘うため、リヨン・サミットの
第40の勧告の実施に向け、それまでの努力をさらに強化するよう我々に指示した。 一つは、ハイテク犯罪を捜査・訴追する能力を高めることであり、 もう一つは、世界のいかなる場所にも犯人にとって安全な避難先が 存在しないことを確保すべく、犯人引渡し及び捜査共助に関する国際的な法体制を強化することである。 ハイテク犯罪について、我々は、コンピュータ及び電気通信の新技術により、
地球規模での通信がかつてないほどに可能となっていることをまず認識しなければならない。 第一に、技術に習熟した犯罪者が、コンピュータ及び電気通信システムを標的として 貴重な情報を権限なく入手または改ざんし、更には重要な商業及び公共システムを 混乱させようと試み得ることである。 第二に、組織的な犯罪グループの構成員やテロリストを含む犯罪者が、旧来の犯罪の実行を 容易にするために、このような新たな技術を利用することである。 このような情報システムの濫用が、公共の安全に深刻な脅威を与えることは明らかである。 効果的な解決方法を見出すためには、これまで以上に政府と産業界との協力が必要である。
地球規模のネットワークを設計、展開及び維持するのは産業界であり、また、
技術基準の発展に第一義的に責任を負うのも産業界である。 このシステムは、コンピュータの濫用の察知、電子データの証拠保全、
犯人及びその所在の特定にも資するようにも設計されるべきである。 我々は、また、特にハイテク犯罪及び重要性が増している他の分野において、
引渡し及び捜査共助における一層の協力の必要性が喫緊であると認識する。 我々は、また、自国の刑事手続における使用のため、外国に所在する証人の証言を
得る能力を一層高めなければならないと確信する。 我々は、今後の作業を次の分野に集中させるよう、我々の専門家に指示する。 ビデオ・リンク技術の使用及び犯罪活動を通じて得られた資産の没収と分割についての検討の継続。 最後に、我々は、これらの分野における迅速な進展に対する切迫した必要性を認識し、 国際組織犯罪による物理的及び金融上の強奪からの保護を確保するために必要な措置をとる。 我々の課題は膨大なものであるが、この努力についての実質的進展を 1998年 5月のバーミンガム・サミットに報告するつもりである。 |
コミュニケ別添
ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画 原則声明 我々は、全ての国により支持されるべき次の原則を承認する。 I.情報技術を濫用する者にとっての安全な避難先は存在してはならない。 II.国際ハイテク犯罪の捜査及び訴追は、被害の発生地に関わりなく、 全ての関係国の間で調整されなくてはならない。 III.法執行機関の職員は、ハイテク犯罪に対処できるよう訓練され、装備を備えなければならない。 IV. 法制度は、データ及びシステムの機密性、完全性、可用性を 不当な損傷から保護するとともに、重大な濫用が処罰されることを確保しなければならない。 V.法制度は、犯罪捜査の成功のためにしばしば決定的となる電子データの保存、 及び、それに対する迅速なアクセスを許すべきである。 VI.捜査共助制度は、国際ハイテク犯罪を含む事件において時宜を得た証拠の収集と 交換を確保しなければならない。 VII.法執行機関による公に入手可能な(公開情報源)情報に対する国境を跨ぐ電子的アクセスは、 当該データが所在する国からの許可を必要としない。 VIII. 犯罪捜査及び訴追に使用される電子データの 検索・回収と認証のための法的基準が開発され使用されなければならない。 IX.実行可能な範囲で、情報・電気通信システムは、ネットワークの濫用の防止及び探知を助け、 また、犯罪者の追跡と証拠の収集を容易にするべきである。 X.この分野での作業は、努力の重複を避けるために、他の関連する国際的なフォーラムの作業と 調整されるべきである。 |
行動計画 これらの原則を支持し、我々は我々の当局者に対して次のとおり指示する。 1.国際ハイテク犯罪に対する適時・効果的な対応を確保するため、この分野に精通した 人員からなる設立済みのネットワークを活用し、24時間体制のコンタクト・ポイントとなる者を指定する。 2.ハイテク犯罪と闘い、他国の法執行機関を支援するため、訓練され装備された十分な人数の 法執行機関の人員が配置されることを確保するための適切な措置をとる。 3. 電気通信及びコンピュータ・システムの濫用を適切に犯罪化し ハイテク犯罪の捜査を促進することを確保するため、我々の法制度を見直す。 4.捜査共助に関する協定または取決めの交渉に際し、必要な場合には、 ハイテク犯罪により提起される問題を考慮する。 5.共助要請の実行に先立つ証拠保全、国境を跨ぐ捜索、及び、データ所在地が不明な際の コンピュータによる当該データの捜索に関し、実行可能な解決策の検討・開発を継続する。 6.一つの通信が複数の通信事業者を経由する場合、全ての通信事業者から交信データを入手する 迅速な手続を開発し、当該データの国際的伝達を迅速にする方法を研究する。 7.重要な証拠の保全・収集によりハイテク犯罪と闘おうとする 我々の努力を新技術が促進するように確保するため、産業界と共同で作業を行う。 8.ハイテク犯罪に関わる捜査共助要請については、緊急かつ適当な場合、必要に応じ書面による確認が 追って行われるものとして、音声、ファックス、または電子メールを含む迅速ながらも信頼できる 通信手段による要請を受理し、応答できるように確保する。 9.電気通信並びに情報技術の分野で国際的に認知された標準策定機関が、公的・民間部門に対し、 信頼できる安全な電気通信並びにデータ処理技術の基準を引き続き提供するよう奨励する。 10. 犯罪捜査、訴追に使用される電子データの検索・回収と認証のための 整合性のある法的基準を開発し使用する。 |
1998年 5月15日から17日まで、バーミンガム・サミットが開催され、サミットとしては初めて国際犯罪対策が 主要議題として取り上げられた。
特に、ハイテク犯罪については、国境を越えて瞬時に犯罪が行われ、金融、通信、国防システムといった 枢要な社会基盤を攻撃しやすいことなどの理由から、デンバー サミットに引き続き、国際犯罪対策の最重要テーマの一つとして扱われた。
上記の「ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画」が採択された。
国際捜査共助が動かない行為に対して、動くようにする法制が求められている。
つまり、「双罰性」すなわち、犯罪の行為が行われた国と、被害者の住む国の双方の国で刑罰が適用される 犯罪行為についてのみ、捜査共助が行えるので、相手国と同等の刑罰を規定する法制 が求められるのである。
法制度は、データ及びシステムの機密性、完全性、可用性を不当な損傷から保護するとともに、 重大な濫用が処罰されることを確保しなければならない。
また、これに基づく犯人の引き渡しが可能となる法制が求められている。 このためには、行政罰ではなく刑事罰、すなわち刑法による規定が必要である。
インターネットのような国際的なネットワークを利用した「ハイテク犯罪」の脅威がある。
この「ハイテク犯罪」においては、犯罪行為の行なわれた場所と、被害者の場所が異なる可能性がある。
国際的な犯罪捜査を行う際には、前提して、犯罪の行為が行われた国と、被害者の住む国の双方の国で 刑罰が適用される犯罪行為についてのみ、捜査共助が行える「双罰主義」が求められる。日本に、コンピュータ犯罪を規制する刑罰規定がまったくないわけではない。
しかし残念ながら、諸外国では刑事罰となる行為で、現在の日本の刑法にはないものがある。
その部分の法制化が必要とされているのである。次章で、日本の刑法で刑事罰が規定されている行為と規定されていない行為を明らかにする。