IPA(情報処理振興事業協会、村岡茂生理事長)は、2000年6月のコンピュータ不正アクセス被害の届出状況をまとめた。
コンピュータ不正アクセス被害の届出制度は、通商産業省のコンピュータ不正アクセス対策基準(1996年8月8日付通商産業省告示第362号)に基づき、1996年8月にスタートした制度であり、同基準において、コンピュータ不正アクセスの被害を受けた者は、被害の拡大と再発を防ぐために必要な情報をIPAに届出ることとされている。
2000年6月のコンピュータ不正アクセス被害の届け出が10件あった(別紙参照)。概要を以下に報告する。(1)侵入とシステムファイルの改竄
侵入とシステムファイルの改竄に係わる届出が1件あった。
POP(*1)サービスが動作しなくなり調査して判明した。システムファイルがtelnet(*2)アクセスを許すファイルと置き換えられており、telnetアクセスの形跡もあった。侵入によるものと思われるが、侵入経路等は不明である。ファイルの復旧とroot(*3)パスワードの変更を行って対処した。
- ) POP:Post Office Protocol。電子メール受信用プロトコル。メールサーバが受信し蓄積したメールをクライアントが取り出すときに使われる。いくつかのサーバソフトウェアにはバッファオーバフローの脆弱性がある。
- ) telnet:TELetype NETwork。ネットワーク経由で他のマシンへ接続する際に用いられるプロトコル、またそのためのプログラム。外部ネットワークから利用可能になっている場合、侵入口として狙われることが多い。
- ) root:UNIXでの特権(管理者)ユーザ。
(2)スキャニング、アクセス形跡
ポートスキャン(*4)もしくは類似のツールなどを用いたポート(*5)へのアクセス形跡の届出が3件あった。いずれもシステム管理者のログ調査により、アクセスの形跡が判明したもので、実際の被害にはあっていない。
ケース1:オープンプロキシ(*6)の探索、メール中継(*8)可能サーバの探索、その他のポートのスキャンが行われていた。
ケース2:DMZ(*10)の各サーバのPOPポートへのアクセスが行われていた。
ケース3:ファイアウォールよりNetBus(*11)アクセスの警告が発せられた。ログを確認したところ何件かのNetBusのスキャンの形跡があった。NetBusはインストールされていない。
- ) ポートスキャン:98年6月頃より出回っているポートやアドレスに順次アクセスするツール、またアクセスの行為のこと。
- ) ポート:元来港の意味であり、マシン同志が通信を行なう際に利用される口のこと。ほとんどの場合、種々の通信はそれぞれのサービスに固有のポートを使って行われる。その対応情報は例えば/etc/services(UNIXの場合)といったファイルに記載されている。
- ) オープンプロキシ:外部の第三者から利用可能になっているプロキシ(*7)。
- ) プロキシ(サーバ): proxy(プロキシもしくはプロクシ)は代理という意味。インターネットとの接続の際に、セキュリティ確保やWebアクセスの高速化のために設置される。外部の第三者が利用可能な状態になっていると、身元隠しに利用される危険性がある。
- ) 中継:ここでは特に、あるメールサーバが、自分のサイトとは直接関係ない外部アドレスから外部アドレス宛てのメールの経由地点として指定され、利用されること。spamメール(*9)送信者は、送信元を隠すなどの目的でこの機能を利用することが多い。
- ) spamメール:大量に送られる(ばらまかれる)メールのこと。
- )DMZ:DeMilitarized Zone。非武装地帯。外部向けサーバなどを置く領域。
- )NetBus:Windows NTで動く遠隔管理用として公開されているソフトウェア。トロイの木馬として悪用されると外部からの遠隔操作を許してしまう危険性がある。
(3)DoS(*12)攻撃
DoSと思われる攻撃の届出が1件あった。
システム管理者がログを確認したところ、特定ポートへのアクセスが非常に大量に残っていた。ポートスキャンなどのスキャンの可能性もあるが、非常に大量であるため、DoS攻撃であると推測される。サービス低下が発生した。
- )DoS:Denial of Service。サービス妨害もしくはサービス不能。過負荷をかける等によって本来のサービスを提供できなくなること、またそれを狙った攻撃。
(4)spamメール中継
spamメール中継の届出が2件あった。
いずれも、中継可能サイトリストへの登録が行われていた。対処(設定変更)後リストからの削除手続きを実施している。
ケース1:メールの配信が正常に行われなかったためシステム管理者がメールサーバを調査して判明した。スプールにメールが大量に滞っていた。メールサーバソフトウェアの再インストールと設定変更を行って対処した。
ケース2:中継可能サイトリストへの登録のメッセージにより判明した。メールサーバソフトウェアの設定変更を行って対処した。
(5)メールアドレスの詐称(*13)
メールアドレスの詐称に関しての届出が3件あった。
いずれも、メールの送信元アドレス(ドメイン)を詐称したspamメールを送られたものであり、大量のエラーメールの発生により判明した。いずれも、サーバに重大な障害等は発生していない。
- ) メールアドレスの詐称:メールの送信元の記述に自分のものではないアドレスを使用すること。実存するドメイン名を用いた場合、そのドメインを有する組織からのメールであるかのように見える。
IPAでは皆様方から届け出された不正アクセス被害について原因分析を行い、当協会内に設置したコンピュータ不正アクセス対策委員会の協力のもと対策を策定している。策定した対策はマスメディア等の協力を得て皆様方に広報するとともに今後の国の施策に反映していく。これからもコンピュータ不正アクセス被害の届け出にご協力をお願いしたい。