IPA(情報処理振興事業協会、石井賢吾理事長)は、2000年5月のコンピュータ不正アクセス被害の届出状況をまとめた。
コンピュータ不正アクセス被害の届出制度は、通商産業省のコンピュータ不正アクセス対策基準(1996年8月8日付通商産業省告示第362号)に基づき、1996年8月にスタートした制度であり、同基準において、コンピュータ不正アクセスの被害を受けた者は、被害の拡大と再発を防ぐために必要な情報をIPAに届出ることとされている。
2000年5月のコンピュータ不正アクセス被害の届け出が9件あった(別紙参照)。概要を以下に報告する。(1)侵入
侵入に係わる届出が4件あった。
ケース1:侵入とWeb改竄。Webサーバのテスト運用の際にリモートアクセス等が可能な状況であったため侵入を受け、Webファイルを改竄されたものである。現在はファイアウォールの設定、リモートアクセスの制限を実施している。
ケース2:侵入とWeb改竄。Webのトップページが改竄されていた。侵入によるものと思われるが、侵入経路等は不明である。セキュリティ強化のためWebサーバのバージョンアップなどを実施した。
ケース3:侵入とシステムの改竄。システム管理者がログを確認の際に判明した。POP(*1)のセキュリティホールを利用してシステムファイルを改竄し、リモートアクセスの設定を変更して侵入した模様である。
ケース4:侵入とシステムの改竄。システムが正常に動作していないため調査して判明した。telnet(*2)で接続し、ユーザID root(*3)によりシステムファイルの置き換え(インストール)など不正な操作を行った形跡があった。最初の侵入経路などは不明である。システムの再インストール、バージョンアップ、パスワードの変更などにより対処した。
- ) POP:Post Office Protocol。電子メール受信用プロトコル。メールサーバが受信し蓄積したメールをクライアントが取り出すときに使われる。いくつかのサーバソフトウェアにはバッファオーバフローの脆弱性がある。
- ) telnet:TELetype NETwork。ネットワーク経由で他のマシンへ接続する際に用いられるプロトコル、またそのためのプログラム。外部ネットワークから利用可能になっている場合、侵入口として狙われることが多い。
- ) root:UNIXでの特権(管理者)ユーザ。
(2)スキャニング、アクセス形跡
ポートスキャン(*4)もしくは類似のツールなどを用いたポート(*5)へのアクセス形跡の届出が 1件あった。システム管理者のログ調査により、アクセスの形跡が判明したもので、実際の被害にはあっていない。
オープンプロキシ(*6)の探索、IMAP(*8)のセキュリティホールの探索、メール中継可能(*9)サーバの探索、その他のポートのスキャンが行われていた。
- ) ポートスキャン:98年6月頃より出回っているポートやアドレスに順次アクセスするツール、またアクセスの行為のこと。
- ) ポート:元来港の意味であり、マシン同志が通信を行なう際に利用される口のこと。ほとんどの場合、種々の通信はそれぞれのサービスに固有のポートを使って行われる。その対応情報は例えば/etc/services (UNIXの場合)といったファイルに記載されている。
- ) オープンプロキシ:外部の第三者から利用可能になっているプロキシ(*7)。
- ) プロキシ(サーバ): proxy(プロキシもしくはプロクシ)は代理という意味。インターネットとの接続の際に、セキュリティ確保やWebアクセスの高速化のために設置される。外部の第三者が利用可能な状態になっていると、身元隠しに利用される危険性がある。
- ) IMAP:Internet Message Access Protocol。電子メール送受信用プロトコル。メールサーバ上のメールもしくは掲示板のメッセージをクライアントから読み書きするのに使われる。
- ) 中継:ここでは特に、あるメールサーバが、自分のサイトとは直接関係ない外部アドレスから外部アドレス宛てのメールの経由地点として指定され、利用されること。spamメール(*10)送信者は、送信元を隠すなどの目的でこの機能を利用することが多い。
- ) spamメール:大量に送られる(ばらまかれる)メールのこと。
(3)spamメール及びspamメール中継
spamメール及びspamメール中継の届出が3件あった。
ケース1:spamメール中継。spamメールの受け取り先よりの苦情により判明した。詳細は調査中である。
ケース2:spamメール受け取り。システム管理者宛てに大量のエラーメールが届き判明した。設定変更にて対処した。
ケース3:spamメール中継。システム管理者宛てのエラーメールと中継可能サイトリストへの登録のメッセージにより判明した。システム管理者は、メールサーバソフトウェアのバージョンアップと設定により対処した。
(4)メールアドレスの詐称(*11)
メールアドレスの詐称に関しての届出が1件あった。
メールの送信元アドレス(ドメイン)を詐称したspamメールを送られたものである。
- ) メールアドレスの詐称:メールの送信元の記述に自分のものではないアドレスを使用すること。実存するドメイン名を用いた場合、そのドメインを有する組織からのメールであるかのように見える。
IPAでは皆様方から届け出された不正アクセス被害について原因分析を行い、当協会内に設置したコンピュータ不正アクセス対策委員会の協力のもと対策を策定している。策定した対策はマスメディア等の協力を得て皆様方に広報するとともに今後の国の施策に反映していく。これからもコンピュータ不正アクセス被害の届け出にご協力をお願いしたい。