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第8章 マッシュアップ
クライアントサイドマッシュアップ: #4 対策に利用できる技術

Webクライアントにおけるセキュリティ対策対象レイヤ

クライアントサイドマッシュアップにおけるセキュリティ確保については、アプリケーションコードレベル、ライブラリレベル、ブラウザ(JavaScriptエンジン)レベルの各階層に分けて説明する。

特に、ブラウザレベルの対策が充実すると、開発者の負担は軽くなることが期待される。

サーバからブラウザ宛のレスポンスヘッダ内にアクセスを制御するポリシー項目が運ばれるようにする仕様が、複数、策定されている。

(1) セキュリティ対策機能をオンにするためのヘッダ

サーバからロードされるコンテンツに添えられるレスポンスヘッダに、何らかのセキュリティポリシーの執行をブラウザへ要請する用途のものが増えてきた。例えば、次のレスポンスヘッダである。

  • X-Content-Security-Policy
  • スクリプトのロードと実行等に強い制約を設ける
  • X-XSS-Protection
  • XSSフィルタの有効/無効
  • X-Frame-Options
  • コンテンツのフレーム内における表示を許す/許さない
  • X-Content-Type-Options
  • 内容からのコンテントタイプの推測をする/しない

     主要なブラウザとこれらのヘッダのサポート状況は下表の通りである。

    表:主要ブラウザのセキュリティ対策機能ヘッダサポート状況
    ブラウザ Mozilla
    Firefox
    Apple
    Safari
    Google
    Chrome
    Internet
    Explorer
    該当バージョン 4以降 5以降 4以降※ 8以降
    X-Content-Security-Policy × × ×
    X-XSS-Protection ×
    X-Frame-Options
    X-Content-Type-Options × ×

    ◎=サポートあり ×=サポートなし ※=一部のマイナーバージョンを除く
    出典: http://www.browserscope.org/

    Mozilla Firefox の実装

    2012年時点において、Mozilla FirefoxのX-Content-Security-Policy に対応する実装が一番細かく設定できるものとなっている。

    Google Chrome Frame の影響

    Google Chrome Frame(以下 GCF)は、Internet Explorer の上で HTML5 の機能をフルに利用できるようにすることを意図したプラグインである。GCF は、X-UA-Compatiblle: chrome=1等のレスポンスヘッダによって活性化され、Webページのレンダリングそのものを引き受ける。

    Google Chrome Frame は、独立したブラウザGoogle Chrome と近い動きをするが、違いもある。上記の表のセキュリティ対策レスポンスヘッダも有効であるが、動作が必ずしも確実でない場合がある。


    (2)「CSP(Contents Security Policy)」によるスクリプト動作の制限

    Content Security Policyは、Firefox 4以降(厳密には HTMLレンダリングエンジン Gecko 2.0以降を使用するブラウザ)が備えるスクリプト注入(XSS)対策機能である。

    これは、ブラウザがどこからスクリプトをロードするかについて、整然と制約を設けることによって、信頼できないサイトからのスクリプトの混入を防ごうというものである。

    この対策機能は、

    X-Content-Security-Policy: 仕様

    の形のレスポンスヘッダを Firefox が受信すると活性化される。Webコンテンツ内のスクリプトの配置の自由度は減るが、どのスクリプトが実行されどれが禁止されるかを客観的に把握しつつ対策を行えるのが特長である。

    最も単純な例

    この仕様には複雑な指定が可能であるが、最も単純な指定の例は下記のようになる。

    X-Content-Security-Policy: allow 'self '

    これによって、ブラウザにおけるスクリプトの実行が次のように制約されるようになる。:

    <script>スクリプトソースコード</script>    ← これは禁止
    <script src="スクリプトURI"></script>    ← この形式のみ許される

    X-Content-Security-Policy のパラメータ

    X-Content-Security-Policyレスポンスヘッダは、多くのパラメータもっていて、よりきめ細かな指定をすることができる。

    X-Content-Security-Policy: allow ホスト...
       [; options {inline-script | eval-script}...]
       [; img-src ホスト...][; media-src ホスト...]
       [; srcipt-src ホスト...][; object-src ホスト...]
       [; frame-src ホスト...][; font-src ホスト...]
       [; xhr-src ホスト...][; frame-ancesors ホスト...]
       [; style-src ホスト...]
       [; report-uri URI][; policy-uri URI]
    script-src ホスト...
    img-src ホスト...; media-src ホスト...; style-src ホスト...; ...
    allow 'none' [別のホスト...]
    options inline-script eval-script
    report-uri URI

    (3) 他ドメインJavaScript のサンドボックスを用いたロードと実行

    ブラウザ自体あるいは Add-onツールを加えてサンドボックスが構築されて、それが一定のポリシーを適用する機能を果たすものがある。ブラウザ自体が実装しているのは Mozilla であり、Add-onツールとして提供されているのは、Dojox.secure である。いずれも、eval()関数を止めたり、innerHTMLを抑止したりする機能を備えている。

    dojox.secure といったライブラリを使用すると、必ずしも信頼できるとは限らない他者のドメインからJavaScript をロードして呼び出す場面でも、そのスクリプトをいわゆる「サンドボックス」の中で安全に実行させることができる。

    <div id="attatch_point">
       サンドボックスにロードされるスクリプトからアクセスできるDOMの
       要素は、このdivノードと、ここに作られる子孫のみに制限される
    </div>
    
    ...
    
    <script>
       // sandbox部品の確保
       dojo.require("dojox.secure.sandbox");
    
       // サンドボックスオブジェクトの生成と、そこへのスクリプトのロード
       var sb = dojox.secure.sandbox(dojo.byId("attatch_point"));
       var foreignCode = sb.loadJS("http://others/foreign_code.js");
    
       // ロードしたコードに対するメソッド呼出しや、イベントハンドラの接続
       foreignCode.someMethod(...);
       dojo.connect(foreignCode, "someEvent", function(arg){...});
       ...
    </script>
    ...

    (4) OAuth 2.0 を用いたクライアントサイドマッシュアップ

    OAuth 2.0 を用いてクライアントの権限の委譲を伝えるしくみについては、別途作成している『アイデンティティ管理技術解説』中の「インターネット上の代理アクセス」の内容を踏まえて述べる予定である。

     

    他源泉リクエスト状況におけるリクエスト強要対策

    他源泉におけるリクエスト強要対策は、セッション対策 、XHR 2 の慎重な利用等から成る。

    (1) セッション対策(トークン対策)

    セッションIDをPOSTデータで搬送する対策例
    図8-15: セッションIDをPOSTで搬送
    トークンの照合する対策例
    図8-16: セッションIDのほかにトークンを照合

    (2) XHR 2の利用

    他源泉リクエスト発行手段には XHR 2 を選ぶ。(IE 8専用には XDR を選ぶ。)
    その際にサーバでは Origin: を厳密に検査する。
    また、Access-Control-Allow-Origin: の発行を必要最小限にする。


    (3) 他源泉リクエストを必要最小限に

    そもそも、他源泉リクエストの使用を必要最小限に留める。

     

    クライアントサイドマッシュアップからサーバサイドマッシュアップへ

    クライアントサイドマッシュアップをサーバサイドマッシュアップに移行すると、#2節および #3節において説明した各種の脅威を低減することができる。移行のし易さや課題を #2節で取り上げた 3種類のAPI呼出しの実装形態別に示す。

    表:サーバサイドマッシュアップへの移行し易さ (実装形態別)
    実装形態 移行し易さ 移行方法
    (1) サービス呼出し型実装 サイト主催者のサーバでWebサービスを中継する仕組みをもつことができれば、サーバサイドマッシュアップへの切り替えが可能である。
    なお、その場合、HTTPリクエストがひとつ余分にサーバを経由することになるため、サーバの応答時間が長くなることがユーザの操作性を著しく損なうことがないか考慮する必要がある。
    (2) スクリプト取り込み型実装 ロードするスクリプトモジュールのコピーを(権利者の許諾を得た上で)サイト主催者のサーバに配置することによって、サーバサイドマッシュアップへの切り替えが可能である。
    ただし、スクリプトモジュールはその内部で第三者のサーバと通信したり、第三者のサーバからさらなるスクリプトモジュールをロードしたりすることがあり得る。
    多くの場合(小規模なものでないかぎり)、第三者のAPIとその中で使用されるリソースすべてを自分のサイトへ配置することは、現実的でない。
    (3) ウィジェット型実装 (2) とほぼ同様