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ソフトウェア高信頼化

「障害未然防止のための設計知識の整理手法ガイドブック(組込みシステム編)」を公開

2017年3月21日公開
独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 ソフトウェア高信頼化センター

概要

 本ガイドブックは、いわゆる「過去トラDB(過去トラブルデータベース)」と呼ばれる障害情報データベースのソフトウェア障害情報の記録から、障害発生を未然防止するための設計知識を抽出し、有効活用できる形に整理する方法を提案するものです。障害情報記録から設計知識を抽出するための観点を示し、抽出した設計知識を構造的に整理することが出来れば、「過去トラDB」が障害の再発防止や未然防止のために活用できるようになります。
 提案する手法は、ベテラン技術者の経験を若手技術者が自分のものとして利用できることを目指しています。
 障害の再発防止や未然防止の活動に「過去トラDB」の活用を考えているソフトウェア品質部門の方に、この方法をご自身の部門の障害情報記録で試していただくことを期待します。

背景・目的

 情報処理システムや組込みシステムを開発するベンダー企業の多くでは、過去の障害事例を一定の様式で記録し蓄積した障害情報データベース(一般に「過去トラ」や「過去トラDB」と呼ばれている)を、類似障害の再発防止や未然防止のために活用したいと考えられています。しかしながら、「過去トラDB」は、書かれている内容が整理されていないため当事者以外の人にとっては理解しづらいことが多く、また蓄積した件数が次第に増えて来ると、さらに、有効情報の取り出しに手間がかかるため、次第に活用されなくなってくるという問題があります(図1.1)。

図1.1 活用されない過去トラデータベース
図1.1 活用されない過去トラデータベース

 「過去トラDB」が有効活用されない理由として、障害を防止するためのノウハウが整理されておらず、表面的な障害の事象とどこにどんな対処をしたか程度の情報しか書かれていないことが挙げられます。さらに、障害事例の原因と対処が装置やサービス固有の具体的な表現で記載されているため、記載内容を見る利用者にとっては、自身の扱うシステムと無関係な障害事例に見えることがあります。
 一方で、業界が抱える課題の一つに、ベテラン技術者の豊富な経験やノウハウの伝承の難しさがありますが、「過去トラDB」には、ベテラン技術者の豊富な経験やノウハウの断片が埋蔵されており、これを整備して活用することで経験やノウハウの伝承も実現することができます(図1.2)。
 「過去トラDB」を障害の再発防止や未然防止の活動に活用するためには、障害情報記録から、設計知識を抽出すること必要があり、さらにその設計知識を後の人に伝承できるようにするためには、様々なソフトウェアに共通して使える一般化した設計知識に変換する必要があります。

図1.2 ベテラン技術者の経験やノウハウが埋蔵された過去トラDB
図1.2 ベテラン技術者の経験やノウハウが埋蔵された過去トラDB

設計知識の整理手順

 障害を未然防止するための設計知識の整理手順を図1.3に示します。

  1. 「過去トラDB」の障害情報記録から設計知識を抽出する
  2. 抽出した設計知識を構造化する
  3. さらに設計知識を一般化表現に変換する
  4. 設計知識の再利用を促すための分類タグを抽出する

図1.3 設計知識の整理手順
図1.3 設計知識の整理手順

設計知識の構造と文脈

 障害を未然防止するための設計知識は、図1.4の構造で整理します。構造化して表現された設計知識の知識要素(1)~(4)及び(6)を繋げると下記の設計知識の文脈ができます。知識要素(5)には、(1)~(4)の要素を文章に組み立てたものを入れます。

図1.4 設計知識の構造
図1.4 設計知識の構造

【設計知識の文脈】
「システムやサービス、機器などの設計において(1)の機能や処理を考えるときに、(2)の考慮が漏れていると、(3)が起こった契機で(4)の障害が発生する。その障害の発生を防ぐためには(6)の処理を作り込んでおく。」

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