HOMEソフトウェア高信頼化報告書・出版物・ツール事業成果(報告書等)横断的アプローチによるソフトウェア開発データの分析
~高信頼性定量化部会 信頼性メトリクスWG検討報告書~

本文を印刷する

ソフトウェア高信頼化

横断的アプローチによるソフトウェア開発データの分析
~高信頼性定量化部会 信頼性メトリクスWG検討報告書~

2015年4月16日公開
独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 ソフトウェア高信頼化センター

概要

  IPA/SEC は、ソフトウェア開発における定量的管理の普及促進を目的に、開発プロセスの標準化や、見える化手法・定量的品質管理手法などの調査・検討を行っています。その一環として、高信頼性定量化部会の「信頼性メトリクスWG」の活動があります。本WGの2014年度の活動では、従来経験的に知られていた次の二つの命題を、「横断的分析アプローチ」という新たな分析手法を用いてデータで実証することを目指しました。

<命題>
  • 信頼性に影響する開発プロセス要因についての分析
    ⇒ 命題1:「開発の早い段階から品質をコントロールすれば信頼性が良くなる」

  • システムリスクと開発工数の関係分析
    ⇒ 命題2:「高度なITシステム(システムリスクの高いソフトウェア)の開発には、それ相応の品質保証(レビュー、テストなど)の工数が必要である。」
  上記の命題は当たり前のようですが、データによって明確に実証されていないのが現状です。そこで、これらの命題の実証を通じてIT利用企業とITベンダーにおけるITシステム品質確保に必要な認識の浸透を図り、IT業界の健全な発展に貢献することを狙い、分析や検討を行いました。その結果を報告書として取りまとめ、分析に使用した集計ツールと併せて公開します。

特徴

「横断的分析アプローチ」という新たな分析手法の採用
より良い分析結果を得るためには、メトリクスと計測手法、データ収集の対象領域(品質マネジメントの成熟度、業種ドメインなど)、外れ値/異常値の除外等の条件が揃ったデータを用いることが望ましいと考えられます。しかし、それらの条件は各組織において必ずしも揃ってはいないため、ひとまとめに分析することは難しいのが実状です。
 そこで、それぞれの組織の中においては開発プロジェクトの背景や特性などの定性的な情報を踏まえながらほぼ均質なデータを揃えられることに着目して、「分析方法を共通化した上で、各組織内で分析した結果を持ち寄り、それらを横通しで分析して集約するアプローチ」を新たに試行しました。

メトリクスの選定方法
分析に用いるメトリクスについては、各組織で用いられているものを、測定状況、有用性及び実証性の観点から調査した結果に基づいて選定しました。


分析の結果

本分析の結果、これらの命題を支持する次のような分析結果を得ることができました。

  <分析結果の概要>

  • 命題1に対しては、稼働時の信頼性が良いという結果をもたらすプロジェクトの方が概ね、上流での不具合摘出比率(設計レビューでの不具合摘出数÷(設計レビューでの不具合摘出数+テストでの不具合摘出数))が高い傾向と、下流での(テスト時の)不具合検出密度(不具合検出数÷開発規模)が低い傾向を確認できました。
  •     
  • 命題2に対しては、システムリスクが高いプロジェクトの方が、規模当りのテスト工数(及び部分的に規模当りの総開発工数)が大きくなる傾向を確認できました。
  また、これにより「横断的分析アプローチ」が命題の実証に有効であることも確認できました。

  これらの分析の結果が、ITシステムの品質確保に必要となる認識や考え方を把握するきっかけとなり、ひいては開発プロセスの見直し・改善につながり、高品質なシステムの開発に寄与することを期待します。