デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 情報理工学院 准教授)
近年、農作物の輸出入の自由化の流れの中で、日本の農産業の衰退が懸念されている。海外の安価な農作物に対抗するには、その鮮度で競うことが一つの最良な方法である。輸入品は国産の農作物に比べ消費者の手に届くまでの時間がより多くかかるため、それに伴い鮮度も低下する。栄養価と鮮度は農作物の品質を測る重要な要素である。現在、近赤外線を利用した、農作物の『栄養成分の含有量』を計測する手段は多く存在する。しかし、農作物の『鮮度』を計測する技術の開発は進んでいない。
本プロジェクトでは、音プローブに注目した農作物の鮮度可視化システムを開発する。本システムは小型のマイクロフォンとスピーカーを使用し、機械学習を用いて鮮度の識別を行う。具体的には、スピーカーからスイープ音を出力し、それを野菜や果物に当て、その反射音や透過音を採取する。採取されたデータから特徴量を抽出し、それに対して機械学習を用いることで農作物の鮮度を計測する。本システムは音を用いることで、近赤外線では取得困難な情報を得られる。加えて、安価で手軽なデバイスによる鮮度計測が可能となる。
野菜や果物の鮮度を音を用いて推定しようという提案である。スピーカから発した音を当て、反射音や透過音を分析する。精度のよい分析手法や、測定ハードウェアの開発を目指す。
課題は推定の精度である。特殊な装置なしで、店頭で、家庭で鮮度を見抜ける未来を楽しみにしている。