デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2015年度採択プロジェクト概要(大津PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

後藤 真孝(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)

2.採択者氏名

  • 大津 久平(東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • 大域照明計算手法開発のためのレンダリングフレームワーク

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

写実的な画像生成のための大域照明計算手法の研究開発は、コンピュータグラフィックスにおいて重要な要素のひとつである。一般に大域照明計算手法の研究開発において、新たに実装した手法は既存手法との正確な比較・検証が求められ、研究開発のプロセスにおいて正しく・素早く手法を実装し、多数の手法に対して検証できる環境を用意することが肝要となる。
しかしながら、高度化、複雑化する近年の大域照明計算手法に対して、それらを実装・検証するための方法は限られている。多くの場合では、独自のレンダラを実装する、既存のレンダラに機能を組み込むなどして、新たな手法の実装・検証を行うが、これらの方法は必ずしも研究開発のプロセスに最適化されているとは言えない。複雑なレンダラとの整合性を保ちつつ拡張する場合や、フルスクラッチで実装する場合、実装や検証の時間が大きなウェイトを占めてしまい、研究開発として本質的な試行錯誤を十分に行えない可能性がある。また映像制作で用いられるレンダラと比較して、研究開発用途のレンダラではその要求が異なり、実行の最適化よりも正確性と拡張可能性、検証可能性に重きを置く必要がある。
本プロジェクトではこれらの課題に対処するためのレンダリングフレームワークを開発する。具体的には、本クリエータが実装し、実際に研究で用いてきたオープンソースレンダラLightmetrica を改良・発展させる。本プロジェクト開始までの段階で、拡張性の高いクリーンな設計のもと、様々な大域照明手法の実装を行い、マルチプラットフォーム化、クラスタ対応などの大規模化、実用に耐えうる実装を行ってきた。本プロジェクトではこれをさらに発展させ、設計の改良や最新手法の実装を加え、より使い勝手の良いフレームワークを実現する。

7.採択理由

コンピュータグラフィックスによる写実的な画像生成が可能な大域照明計算手法のための、拡張性、正確性、検証可能性を備えたリファレンスレンダラを開発する提案である。間接光を考慮してレンダリングを行う大域照明計算手法において、既に提案されている様々な手法の比較を可能にしたり、新たな手法の実装・検証を可能にしたりすることを目指している。
大津君は、既に1年以上、大域照明計算手法のためのレンダリングフレームワークが持つべき基礎機能の実装に取り組み、オープンソースとして公開しながら発展させるなど、情熱を持って本気で取り組んでいる実績を高く評価した。映像制作現場で通常用いられる実行速度や操作性を重視したレンダラと異なり、研究用レンダラとしても使用可能な拡張性、正確性、検証可能性を備えている点が特長であり、レンダラを構成するあらゆる要素が拡張可能に設計されているのも優れている。一般の人々が興味を持ち、有用だと思ってもらえる方向にも発展できると、成果のインパクトが大きくなりさらに飛躍していくはずである。大津君の情熱を活かして提案内容だけで満足せずに、広い視野で様々な挑戦をしてくれることを期待したい。