デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2015年度採択プロジェクト概要(佐藤邦彦PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

藤井 彰人(KDDI株式会社 ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部長)

2.採択者氏名

  • 佐藤 邦彦(筑波大学 情報学群 情報メディア創成学類)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • 野球のピッチング動作を定量的に解析するアプリケーション

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

現在の野球界では、野球動作の仕組みを表現するにあたり、感覚的・抽象的な用語が根付いてしまっており、野球動作が正しく理解されているとは言い難い状況が出来上がっている。例えば、「開きを抑える」や「タメをつくる」といった感覚的な表現で野球動作が説明される場面が多々ある。感覚やイメージは人それぞれ違うものであり、それら表現の解釈は人によって異なるため、誤解を生じさせやすい。誤解は間違った知識を生み、それが野球技術の向上を妨げることにも繋がるため、多くの選手やコーチを悩ませている。
そこで本プロジェクトではまず、感覚的表現が多く使われ、動作のバリエーションも多く解析が難しいピッチングに着目し、安価な深度センサー付きカメラを用いてユーザのピッチング動作を撮影し、撮影したデータを使った定量的な動作判定、及び動作の悪い箇所・良い箇所を示すシステムを開発する。さらに、悪い動作になってしまう原因を突きとめ、それを改善するための定量的・具体的な解説も提供する。
本システムがもたらす効果は、大きく分けて二つある。一つ目は、安価な機器のみで動作解析ができるシステムを提供することによって、より多くの人々の技術向上の手助けとなることである。スポーツ科学の研究などで使用されているモーションキャプチャ装置は、高価なもので数千万円もするが、本システムではそれよりも百分の一以下の価格の機器のみで動作を測定し、動作を解析できるようにすることで、より多くの人々が動作解析を享受できるようにする。二つ目は、悪い動作の原因をより定量的・具体的に分析、説明することで、動作の仕組みの正しい理解が促進、普及されることである。正しい動作の仕組みの理解が広まることは、野球界に根付いてしまった間違った知識や勘違いを解消するきっかけになるだろう。また、本システムは野球のみならず多くのスポーツへも応用可能なものであり、それらに対しても同様の効果を生むものと期待される。

7.採択理由

スポーツにおけるフォームの定量的な分析提案は、多くのスポーツ指導現場での課題であるにもかかわらず、最新テクノロジーを活用した安価な手法が存在していないのが現状である。本プロジェクトは、誰にでも手に入れられる機器を活用して野球のピッチング動作を解析、定量的にその改善を提案する、身近なアプリケーションの提案である。クリエーター自身が投手として活躍し指導を受けた経験が本提案の動機になっており、多くの発展性も有するため、採択すべき提案であると判断した。
実際の指導の現場で活用してもらえるサービスにまで仕上げることは、技術面だけでなく指導ポイントも含めて様々な課題が存在する。未踏プロジェクトとして多くの人々に笑顔を届けられるサービスを具現化して欲しい。