デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業:2014年度採択プロジェクト概要(本多PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    本多 達也 (公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学研究科)

3.採択金額

  • 2,304,000円

4.テーマ名

  • 髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェースの開発

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

聴覚障がい者、特に手話を第一言語とするろう者は、健聴者が普段耳にしているような車のエンジン音や動物の鳴き声といった、音の大きさやパターンなどの特徴を理解することが困難である。現在市販されている音フィードバック装置は腕時計型のものが多く、電話や玄関のインターフォンが鳴ると振動と文字で音源の位置と種類を伝える。しかし、これらの装置の場合、どの場所から音が鳴ったのかがわかっても、それがどのような音の大きさで、どのようなパターンなのかを知ることはできない。また、家事をする際に汚れてしまったり、夏場であれば蒸れてしまったりすることに加えて、手話をする際に邪魔という理由から、十分に使用されてはいない。
本プロジェクトでは、髪の毛を振動させて音をフィードバックする、新しい音知覚装置を開発する。まるで、ねこのヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛が音を感じるための新しいユーザインタフェースにする。デバイスは、髪の毛にヘアピンのように装着し、音が発生すると髪の毛を揺らして、ユーザに音の特徴をフィードバックする。髪の毛を揺らす振動は、音の振幅によりリアルタイムに強弱を変化させる。さらに、光の強弱でも音をフィードバックすることで、周りのろう者にも音情報を共有することが可能になる。

7.採択理由

音による空気の動きを振動や光に変換する小型デバイスを開発し、頭部等に容易に装着できるようにすることで、外界の音を髪の毛で感じることを可能にする提案である。例えば、聴覚障がい者が提案デバイスを装着することで、人間の音声や外界の音を、その音によって変わる振動として感じることができるメリットがある。また振動するだけでなくデバイスが光ることで、周囲の人たちにも音が振動として伝わっていることが共有され、コミュニケーション手段として活用しやすくなる点が優れている。
本多君は、手話サークルを主催していて日常的に聴覚障がい者と接しており、提案するデバイスのプロトタイプをテストするところまで進めてきた上で、それを未踏でより洗練させて完成させ、聴覚障がい者の方々に広めて役に立とうと真剣に考えている点が素晴らしい。日常生活で使えるようにデバイスのデザインやサイズを検討し、装着箇所も髪の毛に限定せずに様々な可能性を模索していくと、大きく飛躍していくはずである。
本多君の情熱を活かして提案内容だけで満足せずに、複数デバイスを装着して方向もわかるようにする可能性や、健聴者も活用できる可能性など、広い視野で様々な挑戦をしてくれることを期待したい。