デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(ユース):2010年度採択プロジェクト概要(重田PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

増井 俊之(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    重田 桂誓(筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科)

  • コクリエータ
    なし

3.採択金額

  • 1,776,000円

4.テーマ名

  • Webキュレーションシステムの開発:表紙が彩る新しい情報空間

5.関連Webサイト

  • http://hyoushi.jp/

6.申請テーマ概要

本提案では、あるテーマに関する情報を、受け手にとって分かりやすく、魅力的に見せるための、Webキュレーションシステムを開発する。

Web上では、多くの人間によって価値ある情報が日々発信・蓄積されている。しかしながら、その内容や魅力が十分受け手に伝わらないまま、埋もれている。この問題を、美術館や博物館では「キュレーション」によって解決している。キュレーションとは、作品や資料の作り手と受け手の間に、第三者(キュレータ)が入り、あるテーマが持つ広範で奥深い世界を、分かりやすく、魅力的な形に編集して見せることである。

このキュレーションこそ、今のWebに必要ではないだろうか。だが、BlogやSBM(ソーシャルブックマーク)など既存のシステムでユーザができることは情報の発信や蓄積にとどまっており、編集はできない。また、芸術作品と違って、Webページの多くはテキストで構成されているため、その内容を一目で直観的に伝えることはできない。

そこで本提案では、Webページの表紙を自動生成するエンジンとWebキュレーションシステムの2つを開発する。これにより、多くの人が発信・蓄積した情報で溢れる空間を、第三者が分かりやすく魅力的な形に編集して、見せることができる。そうしてつくられる空間は、表紙に彩られた新しい情報空間である。表紙があることで視認性が向上し、受け手は情報の内容を直観的に把握できる。同時に、空間全体を俯瞰でき、情報を多面的に捉えられる。その結果、意外な情報や自分に合った情報を得やすくなる。それは、まるでギャラリーを見るかのように楽しく情報にふれあえる体験である。

7.採択理由

提案者の重田君は本や書店が好きで、特に専門家によって「キュレーション」された書店が好きだということである。キュレーションとは、「第三者であるキュレータの視点で、あるテーマが持つ情報の世界を分かりやすく魅力的に表現すること」で、様々な本をキュレータの力によって集めて分類して魅力的に仕上げた書店が最近各地で話題になっている。重田君は実際に学園祭でこのような書店を企画して人気を呼んだということである。

本にはその内容をうまく表現する「表紙」があるためキュレーションがやりやすくなっている。私も「本棚.org」という書籍情報サイトを運営しているが、表紙を並べることによって様々なテーマの「本棚」を作ることができるのが面白いところである。一方、Webサイトをうまくキュレーションするシステムは現存しないようだが、重田君の考えによればこれはWebサイトには「表紙」が存在しないことが大きな理由であり、キュレーションをやりやすくなるような表紙をWebサイトに用意して解決することを提案している。

Webページの内容が一目でわかるような表紙があれば、確かにWebサイトの整理やキュレーションがやりやすくなり、新しい楽しみ方が出てくる可能性があるであろう。重田君は、格好良い表紙を自動生成する方法を考え、またWebキュレータを育成する方法についても考えるという提案をしている。前者はなかなか難しいかもしれないが、「Webキュレーション」という考え方を普及させるようなサービスの開発を頑張ってほしいと思っている。

この提案がうまくいけば、Webサイトを集合的に扱うという新しい利用法が普及することであろう。