| オンラインシミュレーションゲームでのコミュニケーションの手段は,文字チャットが一般的であるため,タイピングが遅いという理由だけでこのようなゲームを十分に楽しめないユーザも多い.かねてから,オンラインゲームにおいて,音声を利用したチャットシステムの機能が望まれている.一方で,音声チャットが実装されたとしても,音声には個人を特定するような情報が含まれているため,不特定多数のユーザを相手にするオンラインゲームでは利用しないユーザがいるという調査結果もある.
このような状況を踏まえ,本プロジェクトでは,音声に含まれる個人を特定するような情報を削除し,匿名性を保ちながらも,音声に含まれる感情情報を損なうことなく,コミュニケーション可能な音声チャットを開発する.システムは特定のゲームソフトに組み込むことはせずに,独立したアプリケーションとする.具体的には,Skypeの拡張機能として,音声認識,感情理解および感情音声合成の機能を実装する.まず,ユーザの発した音声を認識することにより,言語的な情報をテキスト化するとともに,音声を手がかりとしてユーザの感情理解を行う.感情音声合成では,得られた言語的情報と感情情報をもとに自然な感情音声を合成する.ここで,合成時に基本となる音声を複数用意することにより,ユーザはいくつかの特徴をもつ音声の中から,アバターの音声を選択することが可能となり,オンラインゲームをする上での新たな楽しみとなる.なお,本プロジェクトでは,感情の基本的な種別として,喜び−悲しみ,怒り−恐れ,愛好−嫌悪,驚き−期待の4次元8感情を扱うこととする.これらは心理学的に,人間にも動物にも共通する最も基本的な感情とされている.このほか,人間には,これらの組み合わせにより様々な混合感情が作り上げられるが,本プロジェクトではそれらの感情は対象としない.
提案システムは特にオンラインゲームのような不特定多数のユーザとのカジュアルなコミュニケーションを楽しむ場においては,安心して会話を楽しむことができる点で有用であると考えられる.
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