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作曲家の創作活動は,音楽が演奏される空間,および音楽がメディアを通じて再生されるシステムに強い制約を受けてきた.その結果,従来の音楽作品の空間表現は,1次元(ステレオ),もしくは2次元(サラウンド),つまり水平面内に留まっていた.本テーマの目的は,聴覚の空間知覚メカニズムに遡った研究成果をソフトウェア群に落とし込むことにより,3次元立体音楽という未踏の音楽領域を拓くことである.
本テーマでは,2つのソフトウェア群(以降,S/Wと書く)を開発する.まず1つめは,3DオーサリングS/Wである.従来,楽曲の表記は,スコアにおいても音楽編集ソフトにおいても,縦に構成(声部,チャンネル)が並び,横に時間軸(音符,波形データ)が流れているが,そこに空間の概念はなかった.3DオーサリングS/Wでは,コンピュータ内に仮想演奏空間を構築し,任意の3次元方向に楽器やスピーカを自由に配置し,それらに任意の声部やチャンネルを張付け,時間軸上で音符や波形データを展開する.また,空間配置は楽曲の時間進行に応じて自由に変化できる.
もう1つのソフトウェア群は,3DプロセッシングS/Wである.これは,3次元音楽のマルチchによる空間表現をヘッドホン,または2つのスピーカで実現するS/Wである.ここでは,飯田(空間音響研究)が解明した,前後・上下の方向知覚メカニズムを一般化して,任意の3次元方向感を表現するプログラムとして記述することにより,開発を進める.
なお,本S/W群は,既存のほぼ全ての音楽編集システムで動作するVST規格に準拠したプラグインソフトとして完成させ,全世界の作曲家,音楽家への普及を図る.
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