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我々は、人の表情を「心の健康を示すバロメータ」という側面で捉え、表情が豊かで笑顔が多いことは、人間関係を円満にするためのコミュニケーション能力を高め、心身共に健康を維持できる重要なカギと位置付けている。
本提案では、顔の静的多様性と動的多様性に着目した個人固有な「表情空間チャート」を生成し、このチャートを利用して人間が創り出す「表情表出リズム」の可視化を目指す。情動の発露として現れる自然な表情は、@人それぞれ固有な空間を形成しており、A表情の動的変化を「表情筋が創り出す顔パターンの位相変化」として捉え、B各表情の覚醒度で空間を組織化・可視化し、C時系列な顔パターンの位相変化を「表情が奏でるリズム」としてモデル化することにより、表情の複雑性や曖昧性を客観的に表現(数値化)するものである。表情空間チャートとは、表情から認知される様々な感情の意味的な対極性に注目して、各表情を空間的に配置した概念である。表情空間チャートは、各表情の覚醒度合いを記憶した6つのFuzzy ARTMAPをラッセルの感情円環モデルを基に快・不快の軸に配列したものと定義する。具体的には、基本6表情毎に覚醒度合いを示す表情空間が形成され、それぞれの表情空間を統合したものを表情空間チャートとして用いる。1枚の顔画像から基本6表情の覚醒度合いを出力し、覚醒度0とは未学習の顔パターンを意味する。また、処理対象画像を顔全体、顔上部、顔下部に分類し、3種類の表情空間チャートを生成する。表情の表出リズムは、時系列顔画像を表情空間チャートに入力した時に分類される表情(6つの覚醒度合い)とその時間的遷移が作り出すパターンとする。
本ツールの最大の特徴は、自分では比較的知ることのない自分の表情を客観的に見ることで、自身の心情的内面(緊張感やストレスの程度)を推し量るという点にある。価値観が多様化し、その基準が定まりにくい現代社会においては「自分自身の存在」を見失い易く、アイデンティティの確立が難しいと言われている。人は他人との関わりや対話を通して「自分自身」を客観的に認識できるが、人との関わりが益々希薄になっている現代では、自分の心を映す鏡を失いつつあると言える。本ツールを利用し、アイデンティティの象徴である日常の表情から自身の心情的内面(緊張感やストレスの程度)を知ることによって、適切な自己表現能力を身に付け、円満な人間関係を構築する柔軟な対処法を獲得できる。
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