
2006年度下期 未踏ソフトウェア創造事業
(未踏ユース) 成果評価報告(プロジェクト全体について)

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プロジェクトマネジャー:
竹内 郁雄 ( 東京大学大学院教授 )
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1.プロジェクト全体の概要

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今期の未踏ユースの最大のニュースは,PMが慶応義塾大学の安村通晃先生を加えて3人になったことである.これまで筧PMとはうまく協調体制が取れてきたと自負しているが,3人というのは,巷間で言われるように協調が比較的難しい.もっとも,未踏の場合,PMは協調しすぎないほうが「トンガった人材」を発掘できる可能性が高いとも言え,そのあたりは,結果をごろうじろと言うしかない.
3PMの協調体制は2PMのときの協調体制とはそれほど大きく変化していないが,
(1) 応募において申請者がPMを選べない.
(2) オーディションは3PMが全員揃って行なう.
(3) 採択については,分担も含めて,3PMで相談する.
(4) ブースト会議や報告会など,みんなが集まる機会をなるべく共通にする.
(5) 機会をとらえて他のPM担当の開発者にも積極的にコメントする.
(6) 会議等の事務処理をPMサポート組織で相互で分担する.
である.ただし,3PMになったので,応募要領には少しPMの個性を出すようにし,応募者にPMの顔や個性が少し見えるようにしたつもりである.とはいえ,公募開始時期にはまだ安村PMの名前が決まっておらず,公表できなかった.毎度のことだが「走りながら考える未踏」の面目躍如である.
上記の(3)については,PMごとに異なる評価を調和させる新たな方式を3PMの打ち合せで編み出し,それを採用した.なお,下期は,竹内,筧両PMにとっては,当初想定外のプロジェクトとなったため,新任の安村PMがより多くの提案を採択するようにし,次年度以降の2期制の中で徐々にバランスをとることとした.
今期の採択プロジェクトは,当初からある程度予想されたことであったが,安村PMはご自分の専門と興味に近いWeb系の提案を多数採択することとなった.その分,ほかの2PMは自分の (それ以外の) 好みに近いプロジェクトに絞って採択できたと言えよう. |

1.
募集について
例年通り,公募要領には3PMに共通のメッセージと各PM固有のメッセージを掲載した.なお,竹内,筧PMの固有メッセージは上期のものを見るようにとしか書かなかった.メッセージに関する変更点は以下の通りである.
(1) 未踏ユース下期の事業が開始され,安村新PMが入ったことを紹介した.
(2) これまでとは異なる位相ずれのプロジェクトが並行に走ることになるが,その中でも「同期の桜」が生まれるような方策を工夫することを述べた.
様式3の書き方については,2007年度I期からは,「どんな出し方を考えているか」の項目を増やしたが,この項目はもっと早く入れておくべきだったと反省している.オーディション等では結局必ずこれを聞くことになったからである.
2.応募状況
応募は2006年11月30日(木)が締切りであった.
応募総数は下期ということもあり,これまでよりも少ない47件である.上期が70件だから,かなり減ってはいるが,年間通算では,若干の再応募があったものの110件を超えたわけである.未踏ユースの認知度がますます高まったと言えよう.
いつもの通り,同一人の重複申請があるので,純粋な応募者数 (申請代表者数) は43人である (事務局からの表では,代表者だけを入れ変えた準重複申請が1件と読めるが,申請者のオリジナル様式1では,同一代表者だった).下期の採択予定件数は15件だから,件数ベースで3倍を超えるという格式の高さ(?)は維持したことになる.
未踏本チャンとの重複による辞退は今回はなかった.
3.書類審査
今回は採択予定件数がいつもより少なく,また応募総数もそれほど多くないこと,またオーディションがクリスマス周辺 (実際,12月24〜25日) ということで,24件に絞った.書類審査においては,安村新PMの意向を最大限に尊重しつつも,竹内,筧PMの意向も見るという方針をとった.このあたりの経緯は約2週間,IPA事務局を巻き込んで猛烈な量のメールが飛び交ったので,簡単にまとめることはできないが,基本的には安村新PMの順位付けに竹内が内容にかかわるコメントをし,24件程度に収めるという議論が進められた.この中でも,PM間の評価に大きな差があることを実感した.
4.オーディション
オーディションは上記の通り,いつもより少なめの24件について行なった.日程上,ほかに候補がなく,クリスマス (12/24(日)に14件,12/25(月)に10件) に行なった.場所は文京グリーンコートのIPA会議室である.クリスマスにオーディションに来る人 (オーディションをする側の人) はほかに楽しみがないのかなぁという冗談を叩きながら,IPAの方々に多大な迷惑をかけて決行した.思い返せば,オーディションの審査を年末年始に行なったことになる.
5.プロジェクトの採択とPMの分担
オーディションのあとのプロジェクトの採択・不採択の決定は,3PM合議の上,以下のようにして行なった.このところいつもそうであるが,今回も前回と違う新しい方式を採用した.なお,この調和平均方式はその後のオーディションの審査に採用されることになった.
(1) 3PMがそれぞれ独立に審査し,それぞれが全員に1〜24位の順位をつける.軽いコメントもつける.また,順位と無関係に「このプロジェクトは担当できない」という案件には,分野が合わない,直接的関係者であるなどの理由をつけて ▲ という印をつける.ただし,▲ はつけすぎないこと.
(2) それをIPA事務局に他PMに知らせずに送る.全員揃ったところで3PMに公開する
(3) 3PMの順位を参考にして,(この下期に限って,通常の調和平均ではなく) 以下のような変形調和平均をとって総合順位をつける.
順位の調和平均 = 3/(2/安村順位 + 1/筧順位 + 1/竹内順位)
変形調和平均の心は,一人でもいい順位をつけると順位が上がる.今回は安村PMが他PMの2倍の決定権がある.(わかりやすい喩え: 順位は数が低いほど通りやすいという意味で,抵抗値と同じ,4本 (うち2本は安村PM) の抵抗を並列につないだときの合成抵抗値 (の3倍) が上の調和平均になる.)
(4) 総合順位の何位までを採択するかは,相談の上決める.
(5) 担当者の決定法の具体的方法は決めないが,上記▲を考慮しつつ,安村3,筧1,竹内1という比率で上位から決めていくことになる.
この方式でほぼ完全に全員に全順序がつく (まれに同順位はあり得る).そのあとは高い順序をつけたPMから採択者を機械的に決める.同順位があった場合には,下位の採択者を見て,人数バランスを勘案して総合的に決める.実は,これでも変なことは起こり得るのであるが,これまでのところ,見事にバランスが取れている.すなわち,だいたい各PMが取りたいと思った提案を担当できている.
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3.プロジェクト終了時の評価

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| 上期に下期が加わり,2007年度はI期,II期が3ヵ月しか間が開かないという変則的なことになり,なんと,3ヵ月の位相ずれで3期の未踏ユースを進行している (いた).2007年7月始めから8月始めの1ヵ月の間に,2007年度I期のブースト会議,2007年度II期のオーディション,2006年度下期の成果報告会を隔週でこなしたというのは,季節感を失わせるどころか,ユース全体がわちゃわちゃになってしまいそうになった.それでも,なんとか下期を終えることができてほっとしている.事務局も大変だったと思う.それにしても,この下期は少なくとも竹内には中身がすごかった.
今年度の未踏ユースの諸君は全体にレベルが上がった,ということは上期の報告書に書いた.しかし,下期でさらに驚かされた.少なくとも竹内の採択した3名は,とうとう空前の,(3名とはいえ) 採択者全員スーパークリエータ指名候補ということになってしまった.理由は,各論で書いた通りだが,絶対評価ではそうなってしまうのである.決して,採点が甘くなったというわけではない.本来, スーパークリエータが絶対評価でどんどん出てくるということは,日本のITの将来にとってとても喜ばしいことであるが, 外部要因として相対評価を取り入れるべきというプレッシャもあり, 本当に断腸の思いで, 2名を準スーペークリエータの認定に留めることとなった.
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絶対評価において,これまでの未踏ユーススーパークリエータに比べてまったく劣ることのない3名全員をスーパークリエータとしたかったが,さすがに採択者全員がスーパークリエータというのは異常であるという意見もあり,今期はやむなく1名のみをスーパークリエータとして,残り2名を準スーパークリエータとした.それにしても今期の竹内担当の採択者たちは素晴らしかった.こんなことは今後そうはないだろう.
なお,惜しくも準スーパークリエータになった村脇君と竹村君にはあえて「2006年下期未踏ユース準スーパークリエータ」という称号を送りたい.妙な喩えで申し訳ないが,ワインの当たり年と同じで,「2006年下期未踏ユース準スーパークリエータ」はほかの年 (平年) のスーパークリエータと同等の価値をもっていると広言してはばかることはない.ノーベル賞,チューリング賞,京都賞などの賞の価値と同じく,未踏の価値がスーパークリエータになった人達によって形成されていく以上,これはしっかり主張しておかなければならない.
◆ スーパークリエータ
上野 康平 (17歳)
◆ 準スーパークリエータ
竹村 伸太郎 (27歳)
村脇 有吾 (22歳) |

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