| 採択したのは,つぎの3件である。
プロジェクト1 三次元折り紙設計ツールの開発(代表開発者:舘 知宏)
折り紙を三次元的に設計するツールを開発することを目的とする。
「襞分子」を用いた新しい三次元折り紙設計法に基づいて、与えられたポリゴンメッシュから、折線に従って折ると完成形になる「展開図」を設計するまでの支援を行うツールである。簡単な操作で三次元的パーツを設計することが可能であり、また既存の設計法によるパーツを配置して融合させることも可能である。折り紙の全体を設計、構築するための総合的なソフトウェアの開発を目指したプロジェクトである。
折り紙で三次元物体を構成する際の,その設計を支援するソフトウェアを作ろうというもの。この種のプロジェクトは,開発者自身がそれを使って楽しみたい,という強い希望・意欲をもっているものが多い。つまり,「好きこそものの上手なれ」という手合である。館君の三次元折り紙もその代表格となるプロジェクトである。すでにいろいろと下調べもすんでいるので,確実に「楽しい」ソフトウェアができることが期待される。もっとも,そうして設計された折り紙を実際に折るには,1件10時間もかかる(持参した急須の折り紙がそうである)というから,これまた「好きこそ…」の人でないととてもその結果を実際に楽しむことなどは凡人にできないところのものではある。ついでに,せめて1時間程度に折れて「おお!」という出来栄えの折り紙を例として設計してみせてくれるといいかもしれない。
プロジェクト2 データ管理システム (代表開発者:荒川 淳平,共同開発者:淺川 浩紀)
利用者が意識することなくデータ管理をきちんと実行し,その恩恵を受けられるシステムの実現を目指す。
具体的には,データ管理用の仮想ドライブを実現し,そのディスク上で利用者は普段通りの作業を行うと,バックグラウンドで自動的にデータ管理(バックアップ,バージョン管理,暗号化)が行われるようにする。このように,利用者が直接的にデータ管理を行うのではなく,利用者の作業に応じて自動的にデータ管理を実行することで,人為的なミスが入る余地をなくし,データ管理を徹底することが可能になる。
開発者の2人は,ともに未踏ユースの2度目の挑戦である。荒川君は,4人グループのリーダとして携帯をUnix端末として使う仕組みを仕上げた。なかなかのアイディアマンであり,「1人プロジェクトならまちがいなくスーパークリエーター」という評価であった。今回は,各自のための分散ファイルシステムを実現するという「しごく当然な」プロジェクトを立てている。すでに多くの研究成果が既知であり,個別になら使える部材も公開されたものがある。しかし,実際に「各自が意識せずに使える分散ファイルシステム」を作り上げて提供しようという,実用目的の計画である。やろうとすることについてだけみれば,未踏性に乏しいといっていえないこともない。しかし,実際にそうして環境がすでに使える状況に達しているか,といえばそうなってはいない。半年ばかりの期間の中で,どこまできちんとしたものが作り上げられるか,と考えると,これは結構チャレンジングなプロジェクトである。しかし,この2人の開発者コンビならそれをやり遂げられるに違いないと思えてくる。未踏ユースに留まらずにドーンと大きな夢へとつなげるステップにしてくれることを期待している。
プロジェクト3 マルチ計算機・マルチマウスシステムの開発(代表開発者:上田 真史)
マルチマウスシステムは、1台のPCにマウスを多数接続し、低価格ながら多人数での共同作業が可能になるシステムである。しかし、それゆえに、ユーザ数を増やしていくと、すぐに作業スペースが逼迫してしまう。大きなディスプレイをつなげばよいのだが、大きなディスプレイは高価であるので、マルチマウスシステムの安価という特長を損ねてしまう。
そこでPCを複数台接続してそのディスプレイ空間を結合して使えるマルチ計算機・マルチマウスシステムの開発を行う。提案システムは,従来のVNCなどと異なり、マウスの個数やワークスペースの境界など、作業領域に関する世界をアプリケーションが自由にかつダイナミックに設定できる。この特長により、真にフレキシブルなグループワークを実現できる。
PCに何個でもマウスをつなぎ(したがってその個数分だけのユーザが集まって),さらに複数台のCRTをつないで,多人数で共同作業を行う環境が簡単に作れるといい。その予備実験はすでに済ませている開発者が,CRTは高価でもあるので,多数のPCやノートPCをネットワークでつないで同じ効果がえられるようにするミドルウェアを開発して一般に公開しようというプロジェクトである。ミドルウェアの基本的な部分の構想はすでにでき上がっている段階にある。あとは,なんといっても人を引きつけ,マルチ計算機・マルチマウスの有効性を印象づけるアプリケーションを実際に作って見せられるかどうかにかかっている。開発者にそれを見つけてもらえるよう,刺激を与えることができればPM冥利につきるというものであり,邪魔にならない程度にやり取りをしながら,いいものが生まれてくるのを期待したい。 |