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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  (未踏ユース) 成果評価報告(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー:  筧 捷彦 ( 早稲田大学教授 )



1.プロジェクト全体の概要

公募に応募があった70 件の中から,書類審査・オーディションを経て選定した10件の個別プロジェクトを採択した。具体的には竹内PMと共同して審査を行い,上位21件のプロジェクトの採択を決定し,両PMのつけた個別評価および開発者の所属を勘案して竹内PMが11 件を,筧が10 件を担当することとした。
提案書をもとに実施計画書を策定してもらって,開発者それぞれにプロジェクトを進めてもらった。途中,9 月10 日・11 日にブースト会議をもち,それぞれのプロジェクトの立ち上がりを後押しし,1 月にはプログラミングシンポジウムの場を借りて中間発表を行ってもらった。それぞれの開発者には,管理組織を通じて進捗報告を出してもらい,必要に応じて個別に相談にのってプロジェクトが円滑に進行するようにした。
開発者それぞれの個性を最大限活かしてプロジェクトを進めてもらった。その成果は2月に成果発表会を開いて発表してもらった。多くのプロジェクトは,計画した目標を実質的に達成することができた。それぞれの開発者は,互いに知己になり,刺激しあって力を伸ばしていった。その中から2 名のスーパークリエータと2名の準スーパークリエータを選定することができた。

 




2. 応募状況と採択時の評価 (全体)

 採択したのは,つぎの10 件である。


プロジェクト1 スプラインスキャン法による曲線認識とその応用(代表開発者:宇野雄介,共同開発者:吉田憲吾)


画像認識の出発点ともなる「線」の認識に使われているHough 変換を超えるものを作り出そうというプロジェクト。このプロジェクトの先には,今現在のコンピューアへの入力を超える,「紙」入力を夢見ている。その夢への第一歩を踏み出してくれることを期待しての採択であった。


プロジェクト2 FileUtils - URI: ローカルファイルにWeb コンテキストを付加するためのライブラリの開発(代表開発者:越智悠太)


計算機ファイルにそうした「Web コンテキスト」を付加することができる環境を用意しようという提案。環境は,ライブラリの形で提供する。キラーアプリケーションになってくれる可能性も秘めているものの,現時点で構想している実現方法では,ファイルをコピーしたり移動したり改名したりするとURI 付加情報が失われてしまう。 この欠陥を補う工夫を期待しての採択であった。

 

プロジェクト3 思いついた全てのアイディアを集積・管理・公開するWiki 型CMS『Ubiki』の開発(代表開発者:栗川洋平)


つぎつぎに思いついたアイディアを意識することなく集積し管理し公開することのできるWiki 型CMS を作ろうという提案。アイディアも計画もまだまだ荒削りなものであるが,提案者の馬力に期待しての採択であった。


プロジェクト4 統合ディスクレスネットワーク基盤システム(代表開発者:古橋貞之)


開発者は,筑波大学AC 入学の学生の一人。高速ネットワークの整備された環境を活かして,1台の計算機のディスク装置においたOS を,つぎつぎにネットワーク上の計算機にネットワークブーティングしていって,瞬時にディスクレスネットワークを組織する,という提案。すでに,その構想に基づいた試作品はできあがっていて,その改良・刷新を行おうというもの。。プロジェクト終了時に,高いレベルで洗練したシステムが仕上っていているだけでなく,自らの腕を上げていることを期待しての採択であった。


プロジェクト5 Spark project(代表開発者:新藤愛大)


新藤君は,高校3年生。それでもすでに, Flash と,それに搭載されている ActionScriptについては専門家はだしである。提案は,ゲームフレームワーク土台部分を作ろうというもの。一大飛躍してくれることを期待しての採択であった。


プロジェクト6 CPU とGPU を用いる高速数値計算ライブラリ(代表開発者:大島 聡史)


高性能な GPU と CPU とをうまく組み合わせることで,演算性能を引き上げることのできる数値計算ライブラリを開発して提供しよう提案。すでに修士論文として仕上げてあるアイディアを基にライブラリを仕上げ,m CPU + n GPU 環境でその並列計算を行う機能までも組み込んだライブラリを提供する計画である。ライブラリを活かしたキラーアプリケーションを見いだして提供してくれることを期待しての採択であった。


プロジェクト7 ブックマーク連携型検索エンジン「netPlant」の開発(代表開発者:大澤昇平)


キーワード相互の関係や,キーワードとページの関連を,多くの人の履歴から自動的に抽出・蓄積し,関連ネットワークとして保持・活用しようという提案。この種のシステムが,そのアイディアや性能以上に,どれだけの初期ユーザを得てどれだけのデータを蓄積できるかでその勝敗が決まることも心得た計画になっている点も,なかなかのものである。このプロジェクト期間に大きく伸びてくれることを期待しての採択であった。

プロジェクト8 身体イメージを利用した装着型擬人化ディスプレイロボットの開発(代表開発者:大澤博隆)


「人であること (being human) の本質」を探りたいというのが当面の研究課題という大学院生。ディスプレイロボットの開発と,ディスプレイロボット用のAPI の開発,そしてそれらを踏まえたアプリケーションの開発を目指す提案。最終成果が今後に活かせる形に仕上げられることを期待しての採択であった。

プロジェクト9 「旅する漢字 “漢字んカナメ” 漢字学習支援システム」(代表開発者:猪子徹,共同開発者:木村将希)

子供や外国人が漢字を勉強する際に,楽しく学べる場をつくるという提案。それぞれの漢字の成り立ちに基づいて「お話」を作り出しアニメーションとして画面表示するこ とも行う。二人の共同作業で個々人の能力の和以上のものが生まれることを期待しての 採択であった。


プロジェクト10 アニメ表現におけるアーティスティックな陰影コントロール法(代表 開発者:藤堂英樹)

トゥーンレンダリングの陰影をセルアニメのように制御する仕組みを提供するとい
う提案。すでに特定のクリエータとは意見交換を行いながらアイディアのブラシアップを行ってきている。何より,本人がアニメ描画に深い興味をもっているのできちんとし た成果が出るに違いない。ただし,成果を享受して くれるユーザが著しく限定されて いるのが難点といえば難点である。より多くのユーザが得られる展開も見い出す努力も期待しての採択であった。

 


3.プロジェクト終了時の評価

 採択時に想定した通りに近い結果となったといってよい。言い換えれば,PMの指導不足で,伸ばして行きたいと思ったように伸ばすことができず仕舞いになってしまったものが多かった。その中で,良い結果を期待してその通りになってくれた開発者もいた。こうした開発者は,高く評価してしすぎることはない。スーパークリエーター2 名と,準スーパークリエーター2 名を選定した。
個別プロジェクトの評価をつぎに概説する。


プロジェクト1 スプラインスキャン法による曲線認識とその応用(代表開発者:宇野雄介,共同開発者:吉田憲吾)


計画したことがらについて,十二分に目標を果たすものが仕上がったといっていい。 “夢”に向かって,手書きグラフの自動認識を行うことを目指すアプリケーションも仕上 がった。残念であったのは,宇野君が曲線認識ライブラリのアルゴリズム構築と実装段階ではがんばっていたのに,体調不良もあってか,手書きグラフへの曲線当てはめという“夢”に直接結びつく試みについては,アルバイトで支援に当たった荻野健君に譲った形になってしまったことである。体調を整えて,今度は宇野君自らが夢に向かって大きく羽ばたいてくれることを期待したい。なお,成果となるアルゴリズムそのものについては,特許取得を計画しているとのこと。ビジネスにつながっていくことが期待される。


プロジェクト2 FileUtils - URI: ローカルファイルにWeb コンテキストを付加するための ライブラリの開発(代表開発者:越智悠太)


最終的には,このプロジェクトの予定していたすべての項目の開発が終わった。ただ し,懸案であったメタデータにリンク切れが発生する問題に対しての適切な対処方式は見つかっていないのが残念である。

 

プロジェクト3 思いついた全てのアイディアを集積・管理・公開するWiki 型CMS『Ubiki』 の開発(代表開発者:栗川洋平)

アイディアも計画もまだまだ荒削りなものであるもののその馬力に期待しての採択であったが,今回は期待どおりには頑張ってもらえなかったのが残念である。

プロジェクト4 統合ディスクレスネットワーク基盤システム(代表開発者:古橋貞之)


期待通りの成果を得た。OS レベルの技術内容についてこの成果を出したその実力は高く評価できる。スーパークリエーターに選定した。


プロジェクト5 Spark project(代表開発者:新藤愛大)


Flash でのActionScript を活かす形でXelf というフレームワークを設計し,そのフレームワークに従ったライブラリを作り上げた。高校生がここまでほぼ独学でやれるのは素晴らしい。さらに力を伸ばしてくれることも期待して,準スーパークリエーターに選 定した。


プロジェクト6 CPU とGPU を用いる高速数値計算ライブラリ(代表開発者:大島 聡史)


身の回りに存在する多数のCPU とGPU の性能を引き出せる環境を提供したい,とい う開発者の思いの出発点となる成果を出せたといってよい。しかしながら,一般の利用 者に便宜を提供するという点からいえば,その目指すところへ至るにはやるべきことが多数残されている。今回の成果を洗練して,公開するとともに,さらに一層の技術向上 を期待したい。


プロジェクト7 ブックマーク連携型検索エンジン「netPlant」の開発(代表開発者:大澤昇平)


具体的なGUI デザインや,検索サービスの実現方式にも素晴らしい能力を発揮したが,なにより,ユーザ獲得のモデルを作り,プレスレリースもうまく使って,ユーザと,ユーザのブックマーク情報を得ることに成功したその力を高く評価すべきものである。開発者は,すでにこのNetplant の事業化構想を立てている。その実行力認め,スーパーク リエーターに選定する。


プロジェクト8 身体イメージを利用した装着型擬人化ディスプレイロボットの開発(代 表開発者大澤博隆)


計画どおりにプロジェクトは進んだ。論文も発表し公表している。このプロジェクトの成果が,いずれ,情報技術に活かされることを期待しつつ,開発者の今後の活躍を見守りたい。


プロジェクト9 「旅する漢字 “漢字んカナメ” 漢字学習支援システム」(代表開発者:猪子徹,共同開発者:木村将希)


ストーリー生成も十分に興味を引くものを生成するようになっているし,ユーザインタフェースの面でもよく仕上がっていて,完成度が高い。着想を具体的に実現していく開発能力を評価して準スーパークリエーターに選定した。なお,開発者は,このストーリー作成アルゴリズムについて特許申請中である。


プロジェクト10 アニメ表現におけるアーティスティックな陰影コントロール法(代表開発者:藤堂英樹)


従来手法と比べて,手早く少ない手間で簡単に滑らかに変化する陰影を追加でき,ライトの微調整も可能なシステムに仕上がっている。開発したソフトウェアは,すでにプロに使ってもらっているという。プロジェクトとして成功したといっていいし,その腕前はなかなかのものである。さらに完成度を上げ,商品化を目指して欲しい。




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