| 3次元コンピュータグラフィクスを作製する際の工程は、3Dの被写物をデザインするモデリングと、仮想のカメラからの映像を生成するレンダリングの2つに大別される。近年、このレンダリングアルゴリズムは急速な進歩を遂げている。Kajiyaらによって物理ベースCGの基盤となるレンダリング方程式が提唱されてから二十年、物理学的に正確な理論に基づいたレンダリングアルゴリズム(以下物理ベースアルゴリズムと記す)は実用の域に達している。
しかし、実際には現在プロダクションレベルで使われているのは古典的な手法が殆どである。レイトレーシング法やフォトンマッピング法の拡張を施したものも見受けられるが、必ずしも物理学的に正確な演算をしているとは言い難い。しかし、既存の物理ベースのレンダラーは、写実的な画像は正確に計算できても、特殊効果等に使われる複雑で非現実的な材質や、影の強調や間接照明の調整といった誇張表現は難しいといった欠点がある。
そこで本プロジェクトでは、従来型のレンダリングアーキテクチャに代わる新たなシステムを実現する。従来のレンダラーにあったメリットである複雑な材質表現や
表現の柔軟性をそのままに、最新のアルゴリズムを採用した物理学的に正確なレンダリングを可能にする。また、レンダリングに特化した分散計算システムも並行して開発する。
具体的な開発項目は以下である。
1. 物理ベースレンダリング対応シェーダシステムの設計、開発
従来型CGシステムで多種多様な材質を表現するのに使用されていたシェーダシステムを物理ベースCGでも扱えるようにするシステムを開発する。デザイナーの負担をなるべく減らすような直感的なデザイン用GUIも並行して開発する。
2. レンダラー向け分散計算システムの設計、開発
既存のMPI実装等を使わず、一からレンダラーに特化した分散計算システムを設計、開発する。レンダラーの分散計算は他の用途での利用に比べて複雑なので、より高性能な並列化が期待できる。
3. 上記技術を包括したレンダラーアーキテクチャのリファレンス実装の開発
現在開発中のレンダラーであるnytrに上記技術を統合する。提案するアーキテクチャのリファレンス実装とする。
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