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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   河野 恭之 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教授)


2.採択者氏名

開発代表者

角 康之 (京都大学 情報学研究科 助教授)

共同開発者

伊藤 惇 (京都大学 情報学研究科 修士課程 1年)


3.プロジェクト管理組織


  テクノロジーシードインキュベーション株式会社


4.委託金支払額


  5,599,711


5.テーマ名


 互いの視点に「書き込む」ことによる体験共有支援システムの開発

 


6.関連Webサイト


 http://www.ii.ist.i.kyoto-u.ac.jp/~ito/photochat/photochat.html


7.テーマ概要


 複数ユーザ間の体験共有を介したコミュニケーションを支援するシステムを開発する。その手段として、各ユーザの「視点」に対して、互いに「書き込む」メタファを導入する。つまり、各ユーザが興味を持った対象やシーンを撮影した写真データをネットワーク上で共有し、その写真の上に文字や絵を書き込める環境を提供するソフトウェアである。写真撮影機能、及び、書き込みのためのペンインタフェースを持ったポータブルパソコン上で利用することを想定している。
 書き込みデータは写真データと共に、実時間で複数ユーザに共有される。したがって、ユーザ同士は、互いの興味の視点の相違を知ると同時に、互いの存在感や注目対象を緩く知ることができる。そのことは、時空間的に分散した複数ユーザの体験共有を可能にし、そこから発展的なコミュニケーションを促す効果があると考える。
 写真上に書き込まれたデータは、写真(体験データ)の強力なインデクスとなる。また、写真撮影や書き込みがなされたときの状況データ(いつどこで誰が撮影・書き込みを行ったか)も体験データを構造化する強力な手がかりとなるので、位置検出センサ技術の援用も行う。

 


8.採択理由


 提案者らがこれまでに提案してきた体験メディアを限られた手段を用いて「使える」ものにすることが目的.チャレンジとしては,音声メモが使えるモノになるのか,及びどれだけの状況情報を使いこなせるところまで持ってこられるか.基礎はできているので実運用レベルの作り込みがポイントになる.大規模実証実験を行うことを条件に採択する.





9.開発目標


本プロジェクトでは,写真撮影とメモ書きという日常的かつ直感的な手段を融合し,それらの行為を複数ユーザで共有することで,グループの中での各自の興味への「気づき」の共有を加速し,その上での会話を促すソフトウェアPhotoChatを開発する.具体的な開発目標は下記である.

A) 無線ネットワークを介し,撮影した写真と,その上に書き込まれた手書きメモを実時間で共有する機能

B) サムネイルを利用して,複数の写真とメモの整理を支援する機能

C) GPSPHSによる位置検出,Bluetoothなどによるユーザ同士の近接関係といった状況情報を活用し,写真やメモのインデキシングを行う機能

D) ユーザ同士の注目対象,活動状況のアウェアネスを表示する機能,また,そう言った情報を利用したコンテンツ推薦の機能

 


10.進捗概要


前項A, BについてはPhotoChatの基本機能であり予定通り実装された.ただし提案時点ではインフラとして無線LANインフラ(アクセスポイント)を前提としていたが,より気軽に開発成果を利用できるように端末間でP2P接続して写真とアノテーションデータを端末間で共有する方式に変更した.これによりインフラを選ばずに利用できる頑健なシステムが実現できた.

前項Dについてはオンラインでのサービス拡充よりも,記録された体験を事後に俯瞰的に見返したり更に議論を深めたりするためのサービスがより重要であると実使用を繰り返すことで判断し,オンラインでのユーザ補助はサムネイル機能にとどめ,開発目標を簡易blog的なWebサービス環境の開発に変更した.上記の変更及びP2P接続機能の追加開発により,前項Cについては予備検討にとどめた.

 


11.成果


本プロジェクトで開発されたPhotoChatは,表示一体型タブレットとカメラデバイスを持つ小型PCを端末として用い,端末を持った複数のユーザが撮影した写真をオンラインで共有すると共に,写真の上に書き込まれたユーザのペン入力をも共有するというシステムである.PhotoChatのシステム構成を図2.2.1に,書き込み入力時の画面を図2.2.2に示す.

2.2.1 PhotoChatのシステム構成

2.2.2 書き込み入力時の画面例

各端末間は無線LANデバイスを介してP2P接続され,撮影された写真とアノテーション情報は端末間でリアルタイムに共有される.更にオンラインでのコミュニケーションを支援するために下記の機能を有している.

・サムネイル一覧表示

・写真間のハイパーリンク

構築されたシステムは,担当PM主催の未踏ソフト事業合宿,報告会を含む10件近くの中・大規模なイベントにおいて実証実験を行い,コミュニケーション支援効果を実証すると共に貴重な知見が得られた.また,実証実験のフィードバックから,体験時のオンライン支援だけではなく事後の追体験や更なるコミュニケーションの場の構築の必要性が指摘され,「写真blog」をコンセプトとするPhotoChat BBSが追加で開発された(図2.2.4参照).

2.2.4 PhotoChat BBS

 


12.プロジェクト評価


開発成果は「撮影された写真に書き込みをする」という極めてシンプルなインタフェースとして実現されており文章で表現すると陳腐に見えるが,よく考えて本質的な機能に絞り込んで作り込まれた体験記録・知識共有環境であることが使用すればするほど認識させられる.また,機能・インタフェースがシンプルであるだけに,ユーザが勝手に新たな使用法を発見する場面が未踏ソフト報告会の場などでも見られた.

 


13.今後の課題


前項のようによく考えて作り込まれたシステムであり,本開発期間中に頑健性も格段に向上し,一種完成の域にある.使用するといろいろと追加機能のアイディアがわいてくる(その意味では不足点が残っていることになる)が,本来の良さを失わない機能を慎重に取捨選択して継続開発して欲しい.また,普及をめざした対応端末の拡張も是非検討して欲しい.

 




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