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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   河野 恭之 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教授)


2.採択者氏名

開発代表者

渡邊 恵太 (慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 後期博士課程 1年 )

共同開発者

なし


3.プロジェクト管理組織


  テクノロジーシードインキュベーション株式会社


4.委託金支払額


  7,830,426


5.テーマ名


 生涯利用できる「記録-再生」循環による情報発見環境の開発

 


6.関連Webサイト


 なし


7.テーマ概要


 人間の『思い出し行為』を Googleなどのキーワード検索によって情報を探し出す仕組みは使わずに、情報を「記録-再生」の循環をさせながら永続的に情報提示することでユーザが情報を「発見する」という感覚で情報獲得できる環境:ReflectiveVisionの開発を行う。 ReflectiveVisionとは『過去を振り返ることで、未来を見通すことが容易に可能となる情報環境』である。人間の生活には「朝昼晩,1 日,1 週間,春夏秋冬,1 年」といったパターンがあり、本プロジェクトではこういった人間の周期的な生活に着目し,連続的に記録したアーカイブを周期的なタイミングで継続的に情報提示し続けることで、人間が『これまで何をしてきたのか、そしてこれから何をするべきなのか』を、時計を見るような感覚で利用できるようになる。この仕組みに基づき, ReflectiveClock, ReflectiveCalendar, ReflectiveDesktop, ReflectiveMemo4つソフトウェアの開発を行う。開発の方針として、時計を買ってきて電池を入れれば動き出すような手軽さで、かつ一生使えるシステムを目指す。


8.採択理由

常に生活の中にあって人の活動を支えるために時間軸のデザインを取り込んだ情報発見環境の開発が目的である.生活の中で自ら被験者となり実証実験をすることを採択の条件とする.その中から集中すべき対象を自ら見つけ出し,「平均的なのがいろいろ」よりも「完成度が高く尖ったもの」を創り出して欲しい.また,実験の場に他のPjとのコラボレーションも積極的に入れて欲しい.それがまたアイディアを刺激するだろう.





9.開発目標


本プロジェクトは,人間の『思い出し行為』をキーワードによる「検索」の仕組みは使わずに情報機器から特に個人が蓄積した情報に接してゆける枠組の試作とその実証実験による検証を目的とする.検索を伴わない気付き・思い出しを促進するために人間の周期的な生活に着目し,連続的に記録したアーカイブを周期的なタイミングで継続的に情報提示し続けることで,人間が『これまで何をしてきたのか,そしてこれから何をするべきなのか』を,時計を見るような感覚で利用できる情報環境であるReflective Visionの具体化を行い,開発者自身が被験者となってコンセプト自体,及びその実現形態の検証を行う.

 


10.進捗概要


本プロジェクトは期間前半でコンセプトを具体化した機材Reflective Clock, Reflective Calendar, Reflective Desktopを構築し,後半では複数(最終的には3箇所)の生活空間で常時運用して知見を得るという経過をとった.


11.成果

IMG_4932 IMG_4920

2.5.1 Reflective ClockReflective Calendar

本プロジェクトでは,1)本体にカメラを内蔵し常時生活空間の映像を記録すると共に,据え置き時計の機能を果たしながら1日前や1週間前に記録された映像を常時表示し続けるデバイスであるReflective Clockと,2)Reflective Clockにより記録された映像を付き表示カレンダー形式の表示で1ヶ月間の同一時間帯の記録映像を提示できるReflective Calendar3)日常使用するPCの画面全体を一定間隔で画像としてキャプチャし,蓄積された画像を翌日の同時刻に壁紙として情報提示するReflective Desktopを構築した(図2.5.1参照).これらの試作機は開発者自身の生活空間において約7ヶ月常時運用が行われた.Reflective Clockに関しては追加試作し,更に2箇所の生活空間で約3ヶ月常時運用を行った(3箇所とも運用を継続中である).その結果として映像の常時記録・提示環境に関して下記の知見が得られると共に,従来の検索や分析とは異なるアプローチで情報活用のあり方を示唆できた.

Reflective Clockは日常生活映像の手軽な記録と再生により日常的な人間の思い出し・振り返り行為の支援を「置くだけ」で実現した.

・過去の記録を時刻同期して再生することがユーザの行動に影響を与えることが示された.


12.プロジェクト評価


Lifelog
系の研究・開発成果に対して,映像をそのまま記録することに対する漠然とした抵抗感が問題提起されることが多いが,常時提示と組み合わせた環境では抵抗感が急速に低減する結果が得られた意味は大きい.ただし周期性を利用する(しかも受動的に)という本プロジェクトの性質上,現時点での成否評価は適切ではなく,今後の運用を継続して見たい.

 


13.今後の課題


短期間の運用では成果を評価しにくい性質のプロジェクトではあり,限られた期間内では被験者の主観的な評価を集めるという手法をとった.その結果いくつかは興味深い知見が得られたが,客観的な評価に昇華させることにチャレンジして欲しい.採択時のコメントに「実証実験の中から集中すべき対象を自ら見つけ出し,『平均的なのがいろいろ』よりも『完成度が高く尖ったもの』を創り出して欲しい.」と書いたが,開発期間終了時点においても似た感想である.基本的に手が動いて(実装能力が高い)かつやりたいことが多いというタイプなので,プロトタイプができた時点である程度満足してしまって興味が他のトピックに移ってしまったのかもしれないが新しくてかつ有用なソフトウェアの開発はそう甘いものではない.自分の創り出したものが真に便利なものであるという(理論武装だけでなく)証拠立てをするよう心がけて欲しい.

 




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