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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   並木 美太郎  (東京農工大学大学院 共生科学技術研究部 助教授)


2.採択者氏名

開発代表者

今村 謙之 (フリーランス)

共同開発者

なし


3.プロジェクト管理組織


   有限会社シーカネット


4.委託金支払額


  6,500,000


5.テーマ名


 クライアントサイドモジュール型 SIP-UAミドルウェア「SIProp」の開発

 


6.関連Webサイト


 http://www.siprop.org/


7.テーマ概要


 本提案では、現在世界的に問題となっているVoIP相互接続問題に対する解決案を提示し、さらに、それだけにとどまらず、その先のNGNIMS FMCなどの将来のネットワークを見据えた拡張を行うことにより、長期にわたって使用可能なSIPミドルウェアを提案する。

本提案では、下記の特徴を持ったSIPアプリケーション開発用のミドルウェアを開発する。

● クライアントサイドで動作するB2BUAモジュール
B2BUAの動作をモジュールにて定義可能なモデル
SIPHTTPのように、汎用的に扱うことを可能なモデル
● モバイル端末向けの実装


これらの特徴により、下記の効果を得ることが可能となる。

● 世界的な関心事項となっているVoIP相互接続問題の解決
● 今後、世界的に主流となるNGNIMSFMCへの早期対応
HTTP上のWebアプリのように、SIP上のコミュニケーションアプリの開発が容易となる
Ø     新規開発者増加による、コミュニケーションアプリケーション開発の促進

SIP・・・Session Initiation ProtocolVoIP用プロトコルとして広く採用されている。
B2BUA・・・Back To Back User Agent。様式3の図1を参照。
NGN・・・Next Generation NetworkIPをベースとした次世代基幹ネットワーク網。
IMS・・・IP Multimedia SubsystemNGNで、各サービスを行うためのベースシステム。
FMC・・・Fixed Mobile Convergence。固定網とモバイル網の融合したネットワークやサービスなど。


8.採択理由


 SIPベースのVoIPは、SIPの微妙な差異で相互運用が困難などの問題点がある。従来は、B2BUAという中間サーバでプロトコルやCodecの変換を行ってきたが、アクセスが集中した場合の性能などが問題であった。VoIP相互運用のために、ネットワーク間接続用のB2BUAサーバではなく、端末側にB2BUAの機能を持ったSIP- UAを開発する、という提案は興味深く未踏性もあると判断した。

 





9.開発目標


 
従来、SIPオプションの解釈の問題、また、VoIP事業者ごとに独立したネットワーク構成の問題から、同一ベンダのSIP端末同士、SIPサーバの推奨する特定端末同士であればつながるが、それ以外ではSIP端末同士が正しく接続され、通話できないことが、標準のVoIPプロトコルであるSIPによる相互接続性の課題であった。SIPropでは、この課題をSIPが本来目指していたセッション層を汎用プロトコル化することで解決し、相互接続を実現することが目標とした。

 具体的には、SIPの仕様の曖昧な部分において実装者の解釈の相違による実装の差異を吸収するB2BUA(Back To Back User Agent)SIPメッセージのヘッダ部分の簡単な変換によるシーケンスの違いを吸収するミドルウェアを開発し、通信相手に合わせてこれらの変換処理をモジュール化したUASetを用い、これらのミドルウェアクライアントサイドであるVoIP端末で動作させることにより、相互接続性を実現する。

 


10.進捗概要


 本プロジェクトで開発されるミドルウェアSIPropは、次の3点から構成される。いずれもVoIP端末側で動作する。SIProp によりSIPのプロトコル変換を行い、VoIP端末上のVoIPソフトウェアに固有の形式を、自端末および相手端末ごとに解釈可能なSIPに変換することで相互接続性を確保する。SIPropのレイヤ構成を図1に示す。

 

 

 

(1) B2BUA(Back To Back user Agent)

  B2BUAは、端末におけるSIPの微妙な差異を吸収する。自端末および相手方端末に固有の各種呼出しシーケンス、メッセージ形式などを変換し、VoIPソフトウェアに解釈可能なSIPを提供する。

 

 

 

(2) SIPメッセージヘッダ変換

  UA層に位置し、メッセージヘッダを解釈可能な形式に変換する。端末ごとに個別に実装する必要がある。なお、左の図でStackTransportについては、プラットフォームごとのプロトコルスタックを吸収する層である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 図1. SIPropのレイヤ構成

 

 

(3) UASet

 実装によりSIPの形式やシーケンスなどが微妙に異なると言えども、拡張の仕方はいくつかのグループに分類される。このような「似た形式を持つ端末」群をグループ化したものがUASetである。自端末ごとに適切なグループを使うと同時に、接続する相手方端末ごとにもグループが選択される。

 

 本プロジェクトでは、上記すべてを開発し、SIPropがそれぞれの環境で動作すること、相互接続できることを確認した。

・開発言語:J2ME-PPJ2SE1.3相当、Jain-SIPライブラリ)

・プラットフォーム:Windows, Linux

・電話機

  ソフトフォン:KPhoneZaurus)、X-liteWindows

  ハードフォン:GrandStreamIP電話機、PLANEXIP電話機、

  ICOM製電話機

・サーバ:Asterisk

 


11.成果


 本プロジェクトで開発されたミドルウェアは、特定ゲートウェイを介してSIP仕様の差異の吸収するのではなく、VoIP端末側で差異を吸収することにより、特定業者のネットワークに依存することなく相互接続性を確保できること、集中ではなく分散型で処理することにより高性能サーバが不要であることなどの特徴を有する。階層型かつ適応型のソフトウェアアーキテクチャを採用し、多種のVoIP端末に適用可能な方式を提供しており、実装をJavaで行いオープンかつプラットフォーム独立なミドルウェアとなっている。数社のVoIP端末を対象に端末依存のプロトコル変換処理を実装し、相互接続性を検証した。

 以上により、本プロジェクトで開発されたミドルウェアSIPropを用いて、SIPによるVoIPの相互接続性を向上させる基盤を実現した。この基盤をもとに、海外との相互接続試験を実施し、有効性を示すことができた。

 


12.プロジェクト評価


 本プロジェクトでは、クライアントであるVoIP端末側でSIPの仕様の差異を吸収するアイデアを採用することで、特定業者のネットワークに依存しないこと、特別なサーバを用意する必要がないこと、SIPというオープンなプロトコルを対象としVoIPへの参入が自由であることなどから、実用につながる要素を含んでいる判断して採択した。提案したアイデアを実装し、数社の端末向けに差異を吸収するモジュールを作成し、接続性を検証した点を評価する。また、積極的に本成果を公開し、国際接続試験などで方式の有効性を検証した点も評価したい。

 ただ、検証した端末がまだ多くなく、どれくらい多種のVoIP端末に適用可能かがまだまだ不明確な点が課題である。また、個々の端末に適用する際に、どれくらい容易に対応モジュールを開発できるかが普及のポイントの一つになるが、この点も今後の課題であろう。より多種多様のネットワークと端末に適用し、有効性を検証するとともに、コミュニティを拡大し、実用につなげてほしい。

 


13.今後の課題


 次の点を課題と考える。

(1) 多種多様のネットワークおよびVoIP端末への対応と検証

(2) サーバとの連携による、より柔軟かつ簡便な仕様の差異の吸収

 




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