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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書

 


1.担当PM

   千葉 滋 (東京工業大学大学院 情報理工学研究科 助教授)


2.採択者氏名

開発代表者

川島 英之 (慶應義塾大学 理工学部 情報工学科 助手)

共同開発者

なし


3.プロジェクト管理組織


   未定


4.委託金支払額


  5,472,900


5.テーマ名


 センサデータ集約システムに応える高性能DBMSの開発

 


6.関連Webサイト


 なし


7.テーマ概要


 本プロジェクトではセンサネットワークから生じる膨大なデータの管理に耐えうるDBMSを開発する。提案機構の特徴は、高速データアップロード、類似シーケンス検索、そしてコンティニュアルクエリである。これは平成14年度未踏ユースの結果を引き継ぐものだが、大幅な機能増強および性能改善がすでに施されており、その結果は論文としてまとめられている。残る部分は安定化および使い心地の向上にあり、本プロジェクトを通してその実現をおこなう。


8.採択理由


 センサーから得られる大量のデータを保存、検索するための専用の高速データベースを開発しようという提案である。提案者は大量のセンサーデータを扱う情報システムの研究室に属しており、そのようなデータベースに必要とされる機能を熟知している。その知見にもとづいて、これまでプロトタイプを開発してきが、本事業の支援によって完成度を高めることにより、当該分野の研究開発で標準的なデータベースの地位を獲得する可能性を秘めている。よって採録にふさわしいと判断した。

 





9.開発目標


ユビキタスセンサネットワークを利用したアプリケーション開発では、センサーから送られてくる大量のデータを高速に記録でき、かつ記録したデータを時系列解析し、その結果にもとづいて問い合わせができるデータベースシステムが必要である。また刻々と記録されるデータを監視して、与えられた条件にデータが一致した場合は、指定された処理を起動する機能も、そのようなデータベースシステムには必要である。

 

そこで本プロジェクトでは、そのような要求を満たすデータベースKRAFTを開発する。特に、無停電電源 (UPS) により電源供給されているメモリをある種の永続的記憶装置とみなし、これをディスクドライブに対するキャッシュとすることでデータの挿入の際の実行性能を改善する。また同様の技術を汎用のデータベースシステムに適用し、汎用のデータベースも十分な高速化が可能であることを実証する。

 


10.進捗概要


開発者はデータベース分野の本職の研究者であり、これまでもKRAFTのプロトタイプを開発してきており実績があったため、本プロジェクトの開発は当初より順調に進んだ。11月の中間報告会のころまでにはKRAFTは十分に高い完成度と高速な実行速度をもっていた。そこで、この技術をセンサーネットワーク用のデータベースにとどめておくのはもったいないという中間報告会でのフィードバックにこたえ、汎用データベースSigresの開発もプロジェクト後半でおこなった。Sigresとは、汎用データベースであるPostgreSQLに、本プロジェクトでKRAFT用に開発された技術を適用したものである。Sigresの開発も順調に進み、最終的には Sigersの完成度も KRAFT 同様、非常に高いものとなった。

 


11.成果


高速データベース KRAFT Sigres を開発し、下記の web サイトから一般に公開した。

 

http://sourceforge.jp/projects/kraft/

http://sourceforge.jp/projects/sigres/

 

開発成果の詳細は以下のようになる。

 

・高性能ストレージマネージャの開発

 

PostgreSQLに比べて最大183倍の高速挿入処理を実現するストレージマネージャを開発し、それをセンサネットワーク用のデータベースであるKRAFTに組み込んだ。また、周期的に問合せ結果をクライアントに転送できる機構も実現した。

 

・時系列データマイニング機能の開発

 

まず、センサデータを直観的に操作可能な時系列型を考案し、そしてその時系列型データに対する、統計関数、類似シーケンス検索関数、そして信号処理関数の適用を実現した。これらの関数はシーケンス全体と部分シーケンスのいずれに対しても適用可能にした。

 

SQLベースのクエリプロセッサの開発

 

SQLのように記述されている選択・射影・結合・上記関数を処理してエグゼキュータに渡せるクエリプロセッサをKRAFT用に実現した。

 

C言語によるアプリケーションインタフェースの提供

 

センサネットワークからのデータを実際に処理するアプリケーションから、KRAFTをバックエンドのデータベースとして利用できるように、そのためのC言語ライブラリを開発した。

 

Sigres の開発

 

KRAFTと同様に技術を用い、汎用データベースであるPostgreSQLを改良した。改良版のPostgreSQLSigresと名づけられ、データベースへの挿入処理速度を最大で44倍高速化した。Sigresの安定版は一般にリリースされた。

 

 

 


12.プロジェクト評価


センサネットワークは、今後のユビキタスコンピューティング社会の実現にあたって重要な構成要素と考えられており、さまざまな応用が現在研究されている。その中で、KRAFT のようなセンサデータ用の高速データベースの需要は高まっており、それに答えるシステムを開発できたことは高く評価したい。さらに中間報告会でのフィードバックに素早く対応し、汎用のデータベースであるPostgreSQLの高速版 Sigres KRAFTの技術を応用して開発して見せたことは、開発者の高い能力を示しているといえる。

 


13.今後の課題


本プロジェクトの主要な目的であったKRAFTの完成度の改善については、今後も長く続けてほしい。とくにGUIの整備、マニュアルやチュートリアルの執筆が強く望まれる。また第三者の研究グループにもKRAFTを使ってもらい、機能改善と普及の足がかりとしてほしい。

 




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