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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 




1.担当PM

   黒川 利明 (株式会社CSKホールディングス 総合企画部 CSKフェロー)




2.採択者氏名

開発代表者

野村 直之 (メタデータ株式会社)  

共同開発者

大場 寧子 (メタデータ株式会社)




3.プロジェクト管理組織


   日本エンジェルズ・インベストメント株式会社




4.委託金支払額


  9,600,000




5.テーマ名


 Webベースの医療情報システムの要求開発




6.関連Webサイト


 http://www.metadata.co.jp/  




7.テーマ概要


1.プロジェクト概要
・診療報酬請求用のコンピュータおよびソフト、いわゆるレセコンでは初めてのWeb
ベース版を中心に、電子カルテ他とWeb[2.0]ベースで連携した総合医療情報システム
について、一部プロトタイピングとその評価結果をフィードバックしつつ、要求開発
を実施する。
[背景・現状] 既存の様々な医療情報システムでは全体を通した最適化のデザイン
がなされていないために、紙・FD出力と再入力がなくならず、業界全体の情報化によ
るサービス改善の足を引っ張る元凶となっている。
[解決の手法] 上記の問題点を解決するため、ステークホルダー分析等の標準的な
要求開発手法に加えて、現場の業務知識活用プロセスの分析と抽出を行い、医療情報
インフラが、情報の共通性、均一性、流通性、分析機能の提供、医療品質の評価の観
点で進歩したことを示す評価指標(KPI=Key Performance Indicator)を考案し、要求
開発の結果を評価する。
[成功の秘訣] 医療事務の専門資格と長年の経験を備えた人物と毎日議論できる環
境を作り、ユーザの立場、視点にたった要求分析を徹底。さらに、実際の医療現場で
の試用評価を最終フェーズで予定。
2.要求を扱うどの作業を対象にしているか
・患者情報、診療情報の入力に始まる医療情報処理の業務プロセス、制約の自動解
決、集計・統計分析、医事会計部門から外部への情報出力。
・医療事務の現場における物理的な「動線」や、ワークフローのモデルを作り、IT
を含むトータルの業務効率の改善効果を測定する。
・「論理的な」動線として、GUIのウィンドウ間の遷移回数、「距離」なども評価
する。
3.誰を対象にするか
・実際にWebレセコンを操作する医療事務従事者を主な対象に、要求のモデル化を行
う。病院、診療所の種類に応じた機能仕様の細分化も行う。
4.効果、評価
・ 診療報酬請求業務全体としての「はやい」「安い」「旨い」(数字の高精度化・
信頼性向上)を達成し、その達成度を評価する。




8.採択理由


 総合医療情報システムの要求開発というこのプロジェクトは、アプリケーションに特化した形で、実際に要求を開発しようというもので、黒川が当初テーマで予期していた一般的な支援ツールなどと異なり、新鮮な驚きだった。
「医療」という技術そのものは国際的なのに、医療事務などのシステムは、地域的な制約が強く、受益者である患者のことを考慮していないだけでなく、医師をはじめ関係者にとっても有益なシステムになっていないとは、前から聞かされてはいた。
このプロジェクトで、要求開発が行われ、モデルが公開評価されることは、要求関係の技術成果としてだけでなく、医療関係のシステム開発に関しても重要な成果となると見込まれるので、ぜひ採用したい。

 




9.開発目標


現在、国内の医療機関で用いられている診療報酬請求用のいわゆる「レセコン」に比較して、優れたシステムとするための要求を開発する。項目としては、操作性、効率、結果の正確さ、納期、情報共有・流用などがある。

 




10.進捗概要


この要求開発では、ソフトウェア開発におけるアジャイル方式を取り入れたので、要求を開発しては、この要求

の一部を取り入れたプロトタイプシステムを作成し、要求を評価しては、さらに開発するという方式であった。

そのために、段階的な進捗ではなく、全体要求の個々の要素がそれぞれ完成度が高まっていくという様子であった。

7月から、2月まで、毎月一度進捗状況を含めた打ち合わせを行い、本システムだけでなく、医療体制全般あるいはソフトウェア開発全体についての議論も行った。

開発した要求の評価を医療関係者にしてもらうという部分は、7月の打ち合わせから検討していたのだが、残念ながら期間内に実施することができなかった。

 




11.成果


 成果には、要求開発のための手法(「ペア要求開発」及び「アナロジー要求開発」)と、Webレセコンの要求項目とがある。

ペア要求開発では、アジャイル開発での、ペアプログラミングと同様の手法をとる。すなわち、実務経験豊富なユーザと要求開発者とでペアを組み、短いサイクルで、抽象要求(U)→仮説形成(U&I)→制約適用&機能設計(U&I)→プロトタイピング(I)→評価(U)→具体要求(U)→要求のクロス評価(I)→・・を高速に回して要求を出す。

アナロジー(駆動)要求開発では、他分野で開発された要求を積極的に取り入れる。このプロジェクトでは具体的に情報サービスで開発されたITILJIS Q 30000)を取り入れて医療サービスに適用した。

Webレセコンの要求は、次のような項目について開発された。

1. リビジョン管理

2. 診療行為入力

3. 磁気レセ 

4. 自動計算

5. 診療履歴表示         

6. 計算ルール            

7. 各画面別要求仕様   

8. 内科(単科)対応における必要機能

9. 眼科(単科)対応における必要機能

10.総合テストへの要求)

11.キーボード対応

12.帳票出力

13.マスタ管理

14.リファクタリング時に対応予定の項目

15.電子カルテ等他システム連携

16.保険外項目

17.患者

18.施設基準マスタと医院情報

19.予約/受付管理

20.コメント(摘要欄の記載内容)

21.UIモジュール

22.テスト

23.リリース前に整頓する(削除する)機能

24.製品プロテクト戦略

25.ドキュメンテーション方針

26.マニュアル 

 




12.プロジェクト評価


国内の医療機関で用いられている診療報酬請求用レセコンに対する要求を開発できた。ウェブベースという従

来の医療情報システムにない環境での要求を開発した点は大きい。

さらに、この要求開発の副産物として、「ペア要求開発」及び「アナロジー要求開発」という要求の開発手法が生み出されたのは、期待以上の成果であった。

 




13.今後の課題


 今回、間に合わなかった「医療関係者による要求評価」が最大の課題である。これを行うには、具体的なシステム開発も必要になるかもしれないが、その場合、具体的に実現されたシステムが今回開発した要求をどれだけ実現したかの評価が別途必要となるだろう。そういう要求評価の方法論もこれから開発する必要がある。

 今回開発された、要求開発のための手法が、他の要求開発でも有効かどうかの評価も期待したい。一般的に有効なことが評価できれば、要求分野において、これまで貢献の少なかった日本発の技術として期待が持てる。

 



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