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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業  採択案件評価書


 




1.担当PM

   美馬 義亮  (公立はこだて未来大学 システム情報科学部 助教授)




2.採択者氏名

開発代表者

森田 尚 (所属非公開)

共同開発者

なし




3.プロジェクト管理組織


  株式会社 創夢




4.委託金支払額


  2,500,000




5.テーマ名


 高品質な書籍を簡単に制作するための出版支援ソフトウェアの開発




6.関連Webサイト


 なし




7.テーマ概要


 高品質な書籍を簡単に制作するための出版支援ソフトウェアを開発することを提案する。本システム
は、商業出版レベルの洗練された見栄えを持ち、著者の力が十分に反映された書籍を、短期間に低コス
トで制作し、Webと紙の両方で出版することを可能にする。
 具体的には次のようなことを実現する。

 * 著者が書いた原稿から、人手を介さずに全自動で本を作れる。よって制作期間を短縮できる。
 さらに、執筆の初期から、完成した本に極めて近いものを見ながら編集や校正ができるので、試行錯誤による
 改善がしやすい
 * 同じ原稿から、紙媒体向けのフォーマット(PDF)と、Web向けのフォーマット(HTML)の両方を出力できる

 現在の書籍出版の主流のツールでは、どちらも簡単ではない。
主な機能と特徴は次のとおり。使いやすさと表現力の両立を念頭に置き、広く普及させることにも配慮
している。

 * 非対話的な処理(バッチ処理)が可能
 * 扱いやすいデータ形式
 * プロの使用に耐える表現力を実現
 * HTMLPDFへの出力をサポート
 * オープンソース準拠のライセンスで配布

本システムは、既存のソフトウェアでは満たせないニーズに応えるため、既存の類似ソフトウェアの良
いところを併せ持つものを目指す。

 




8.採択理由


 出版支援というターゲットにはアプリケーションやシステム開発として未開拓な問題が存在することが感じられる。開発者は実際に編集者として数多くの書籍の出版に係ってきた経験をもち、出版の合理化に対する強い動機とビジョンをもっている。成果物は公開されるため、出版界に広く影響を与える可能性も高い。

 




9.開発目標


出版社において商業出版として耐えうる高いフレキシビリティや出力の品質を提供しながらも、ごく普通の編集

者が手軽にあつかえるような書籍作成システムを作成することが本プロジェクトの目標である。さらに、ここで開発

されたシステムは業界で標準的に使われるようになれば、究極の目標を達成したということになる。

 




10.進捗概要

作業スタイルは、編集者としての本業はキープしつつ、週末などの余暇の時間を割いて作業にあたるというものであった。たった、一人での開発だったが着実に進行したと考える。

 

ともかく、プロトタイプを作りそれを改善してゆこうという方針であったが、初期の頃には、XSLT などの調査をしながら設計が行われた。8 月頃には、sourceforgeにコードが置かれていた。ただし、作業環境は作成者の環境への依存性が高く、また配布のためのパッケージングは十分ではなかった。これを補うため、ソフトウェアのインストールなどに必要なドキュメンテーションもなされた。その後、11 月の中間報告の前に多くのパッケージに依存するという性質を補うことのできる、Web でサービスを提供するという形態で利用できるようにすることを決定。このデモは1月の半ばに公開された。

 




11.成果

 本プロジェクトの説明をざっと見たとき、現場の必要や既存ツールの不備への憤りに駆られて、またひとつ新たな出版用ソフトウェアを開発しようというものとして捉える方々もおられると思われるが、目指したことにはもう少し深い戦略性がある。実際のところ、バッチ型のフォーマッタの先達としては、古くはroffscribe などというものもあって歴史は古い。こういう状況では、なによりLaTeXで十分ではないかなんて意見も耳に入ってしまう。前者は、西部開拓のパイオニアたちが現地で調達した資源をもとに町を築いていこうというようなものだし、後者はケルンの町に聳え立つ大聖堂といった感じのものだ。たしかに、パイオニアたちの残したものは、失礼だがクラシックカーみたいなものであるし、ケルンの大聖堂は厳かで立派であるが、失礼ながら生活の場としては息苦しいし、かび

臭いということになるかもしれない。結局、このプロジェクトがおこなったのは、現代の建材をもちいて実施する都市再開発のようなものなのだろうと考える。

 

開発のスタイルは、XML を中心に開発された多くのオープンな周辺技術を巧みに利用しながら目的のシステムを作りあげるという正統的なものである。XHTML で記述された原稿をHTML PDF に変換するためのConverter Converter を利用するためのコマンドラインインターフェースを提供するBuilder、ならびにWeb 上でサービスを提供するためのWeb UI のプロトタイプをRuby 言語で作成した。

 

機能としてはテキストフォーマッタに詳しくない人が作った原稿からでも、品質の高い出力を可能にしたこと、たとえば、既存のHTML 文書からでも簡単に本が作れるような機能を実現している。(HTML から本をつくるなんて、頭でイメージすると簡単そうなことなのだが、実際やってみようとするとさまざまなステップをふまなければならないことに気づかれると思う。)Web 上におけるUI ならびにインターネット上のサービスを提供している。

 

詳細については、公開情報である

https://sourceforge.net/projects/workbook/

をご覧いただければと思う。

 




12.プロジェクト評価

 

XHTML を原稿の記述の枠組みとして採用することにより、XML 標準を理解するプログラマにとって本システムを理解・拡張することが容易な設計である。この基本的な設計を終えて、実際にPDF HTML などのドキュメントをターゲットにしてフォーマッティングが行えるまでのプロトタイプシステムが出来上がっている。実際にサービスを行えるようにするのもすでに技術的な部分はクリアされている。また、ドキュメントを英語でも用意するなど、将来への発展を促進させることについても配慮がなされている。

想定されたプロジェクトのスケールとしては、人数・時間などのファクタでみると非常にコンパクトなものであったが、コンパクトなプロジェクトのよさは無駄が少ないことである。この限られた枠組みの中での成果としては十分高い評価に値するものだと考える。

 

 




13.今後の課題


方向性の確立は十分になされた。しかし、実用性という面ではまだまだ実現すべき要素がある。(逆に、あとは

さらにコーディングをすすめていけばよいだけというレベルまでつめられている部分も多い。)

 

1) 最終的なユーザを増やしていくために、使いやすいシステムにすること。現在のWeb サービスの状態では OS 上での操作とシームレスな操作は実現できておらず、今後の爆発的な普及のためにはさらなる改善が必要である。

2) もっとも大切な機能である「スタイルのカスタマイズ」を簡単に行えるようにすること。プロトタイプではPDF 出力のためのフォーマッタとして暫定的にLaTeX を使用しているが、このフォーマッタを利用しながら、スタイルを自由に変更するようにすること簡単ではない。緊急避難的な方法をとりながら、解決策を見出していく必要があるだろう。

3) インストールを容易にするのは普及させるのに非常に大切なことである。普及のために有効なインストールパッケージを用意していくことが必要になる。

 



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