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最初に、第三項音楽について少し紹介する。第三項音楽は一見(一聴?)するとノイズではないかと感じてしまう音楽である。だが、聴覚のモードを変えると聞こえてくる世界が確かにある。そのことは「日本人が虫の音から心地良い音の心象風景を感じ取れるのに、日本の文化圏の外側で育った人には虫の音がノイズとしてしか捉えられないといわれる」といったことから類推すると、理解しやすくなるかもしれない。実際のところ、周到に準備された空間で渋谷さんの作られた、あるときの演奏を聴くと、私などには、屋久島の森の中のような、コケや羊歯などの繊細な植物が生い茂っている複雑なテクスチャからなる世界が浮遊しているような気分になるのが感じられた。いってみれば非常に情報量の多い音響空間がひろがりを感じることができる。この感覚は、最初に第三項音楽を聞いてから、いくつかの場で第三項音楽を聴くにつれさらに深まっており、さらにだんだんブレのない認識へとかわっている。こういう音楽世界は、池上さんの開発されている人工的な音色作りを作り出すためのソフトウェア群を用いて作られ、加工されるわけである。
このような音楽やインスタレーションを実現するために作られたソフトウェアは以下のとおり。
1.sndchanger(データの変換プログラム)
データファイルとAIFF 形式の変換プログラム
2.音色生成プログラム(個別の原理に従って音色データを生成するプログラム)
セルオートマトンを用いたサウンド生成
Logistic 写像を使ったサウンド生成
テープとマシンの共進化ダイナミクスを用いたサウンドファイル生成

3.Huron 用アプリケーション(複雑な音の発生源の異動を可能にする)
立体音響システムHuron 上で音を移動させるパターン

このほかに、インスタレーションの中で使用されるLED 表示のためのアプリケーションプログラムなども補助的なものとして作成された。
本プロジェクトで開発されたプログラム開発の延長上にある成果としては、上記のプログラム群を利用して作られたものとして、インスタレーション作品「filmachine」、CD 作品「ATAK010 filmachine phonics」、インスタレーション作品「Taylor
Couette Flow」,コンサート「ATAK
NIGHT3」などがある。

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