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2006年度上期 未踏ソフトウェア創造事業 成果評価報告書(プロジェクト全体について)



 プロジェクトマネジャー: 黒川 利明 (株式会社CSKホールディングス 総合企画部 CSKフェロー)

 

 


1.プロジェクト全体の概要


本プロジェクトでは、ソフトウェア開発で最近最も重要な部分という認識が高まってきた上流工程の部分のうち、 

「要求」に対する支援のための各種方法論、ソフトウェアシステム、ソフトウェアツールなどの開発を目的とする。狙いは、特に、わが国において遅れていると言われる要求部分の技術者を育成するとともに、要求部分の品質を高めて、わが国のソフトウェアの品質向上と、わが国の産業の競争力強化にある。残念なことに、要求の重要性は、SEC(ソフトウェア・エンジニアリング・センター)などでも認識されているにもかかわらず、その研究開発が困難なために、応募数も昨年同様7件という、他の分野に比べて少ないものだった。今回は、要求そのものを開発するという「Webベースの医療情報システムの要求開発」と要求場面も含めたソフトウェア開発支援の「要求の分析を支援するシステム」の二つを採択した。

「医療情報システムの要求開発」においては、「ペア要求開発」及び「アナロジー要求開発」という手法を作り出し、Web2.0的な環境下ですぐれた要求の開発に成功した。

「要求の分析を支援するシステム」においては、要求も含めたプロジェクト管理視覚化のツールができた。

 




2.プロジェクト採択時の評価(全体)


受託ソフトウェア開発の現場は、今なお過重な負担にあえいでいる。その理由としては、表面的には人手不足

や技術力不足があげられているが、実際には、ほとんどの場合、要求の管理がうまくおこなわれていないことにある。

この「要求の分析を支援するシステム」は、プロジェクト管理を中心にして、この困難な問題に取り組もうとしている。

開発のための部品においても、いわゆるオープン系ではなく、Windows系のプログラミング言語C#や、データベースシステムUDBなど、業務系に挑戦しようとしている。

一方、「総合医療情報システムの要求開発」は、アプリケーションに特化した形で、実際に要求を開発しようというもので、本プロジェクトで当初予期していた一般的な支援ツールなどの開発とは異なる。

しかし、「医療」という技術そのものは国際的なのに、医療事務などのシステムは、地域的な制約が強く、受益者である患者のことを考慮していないだけでなく、医師をはじめ関係者にとっても有益なシステムになっていないとは、前から聞かされてはいた。したがって、この要求開発は、要求関係の技術成果としてだけでなく、医療システム開発一般に関しても重要な成果となると見込まれる。

これら両者は、評価軸も異なる。要求分析支援システムは、システム開発なので、期間内にどこまで本来目的とした機能を実装できたか、また、現場で実際に使えるシステムとして完成するための目処がどの程度ついたかが評価の対象となる。

一方、「総合医療情報システムの要求開発」は、システムそのものの開発ではなく、要求開発なので、要求がどれだけ開発できたかが評価軸となる。要求開発のために、どのような方法論を作り、どのような学習をしたかの知見も評価の対象となる。システム開発そのものは、評価の対象外である。

 




3.プロジェクト終了時の評価


「要求の分析を支援するシステム」も「総合医療情報システムの要求開発」も期限内に、当初予定していた作業

を終え、成果物を完成することができた。

「要求分析支援システム」では、開発ツールの学習に、開発者が予想していたより手間取って、やきもきしたが、なんとか無事に開発を終えた。

「総合医療情報システムの要求開発」は、順調に要求を開発できただけでなく、「ペア要求開発」及び「アナロジー要求開発」という手法を作り出し、要求開発の環境にもWikiSNSSocial Network System)を多用した革新的な要素を取り入れて、成功した。

 未踏の性格として、これらの成果が直ちに実用化されるとは限らないが、今後に向けて大いに期待できる。



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